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神具能力テスト+α 4

 それから本物の触診を先程失敗した方法で見事に切り抜け、その後のレントゲンも作戦通り滞りなく終了して、現在は昼食の時間となり、俺と遼は二条院さん、東雲さんと合流し食堂にて昼食をとっていた。


 「あんた達一体どこにいたのよ?探してたのよ···まったく」


 「申し訳ありませんわ。まだ学園に慣れていなく迷ってしまいました」


 「あんたって意外に見た目とギャップあるわよね···。それにあんまりそういうの食べそうに無いのに食べてるし」


 そう言うと二条院さんは俺の食べているカツ丼を指差す。


 「あ、え、ええ、これはですね、我が家は(いわ)れやジンクスなどを大事にする方で(げん)を担げるなら出来るだけ担ぐという方針なのです。ほら午後からは神具の能力テストでしたでしょう?···ああ、よかったら二条院さんも食べますか?」

 

 二条院さんは別に俺を疑っているという感じではなかったが、疑いの芽は早めに摘むという事で念の為、適当に理由を付けて誤魔化した。


 そして俺は目の前のカツ丼の丼を持ち上げて見せる。


 「えっ、い、いいの?じゃ、じゃあ」


 机を隔てて俺の真正面に座っていた二条院さんは少し戸惑いつつも半分立ち上がってこちらに向けて口を開ける。


 い、いいんだよなこれ?ま、まあ女の子同士だもんね。普通だよね?


 俺は恐る恐る箸でカツ丼を掬ってゆっくりと二条院さんの口に持っていく。


 がその時。


 「痛たっ!」


 足に激しい痛みを感じた俺は思わず箸を手放してしまい、机の上にカツ丼が散らばってしまう。


 「も、申し訳ありませんわ」


 俺は汚れてしまった机をティッシュで拭きながら二条院さんに謝罪し、続いて俺の脚にダメージを与えたであろう隣にいる人物を横目に見る。


 がしかし、当の本人の遼は何事も無かった様にうどんを啜り、俺の方を一切見ることは無かった。


 ちっ、条約違反は許さないということか···。


 そう、俺と遼はこの学園生活を円滑に、またリスクを極力減らして過ごすためにいくつかの決まり事を設けていた。


 そして、今回の件はその条約の中の"こちらから女の子に対して過度な接触行為をしてはならない"というものに違反してしまったわけだ。

 

 だがしかしだ。


 もしここで二条院さんにあーんをしなかったら逆に不自然じゃないか?


 それに、このままでは俺が痛がったふりをしてあえてカツ丼をばら撒き、二条院さんに食べさせるのを拒否したと思われかねない。


 俺はそう思い再び遼の方を見る。


 「こほん、あ、あら遼さん。そんなに食べたかったら、蹴ったりなどせずに素直に言ってく出されば順番に食べさせて上げますのに。······ああなるほど、皆さんの前では、恥ずかしいんですわね。でしたら今度、部屋で2人の時にでも」

 

 「···別に(あきら)の虫歯が二条院さんに移ったら大変だからね。私がして欲しいわけじゃないよ」


 「あら(わたくし)、虫歯は生まれてこのかた1度も出来たことがありませんわよ。なんならご覧になります?」


 「いいよ、人の口内を見る趣味はないから。やめて、汚いからこっちに顔近づけないで」


 俺と遼は額に怒りマークを浮かび上がらせながらも口調と笑顔は保ちつつ比較的小声で言い合う。


 「ちょっと2人で何じゃれ合ってるのよ」


 おそらく小声であったので喧嘩の詳しい内容までは二条院さん達には聞こえていなかっただろうが、そんな感じに言い合っていた俺たちの様子を見て、話について行けない事から少し不機嫌になってしまった二条院さんが俺達の会話に割って入ってくる。


 とちょうどその時。



 「おやおや楽しそうに食事をしているね」

 

 

 俺が二条院さんの御機嫌をどう取ろうかと迷っていると、助け舟を出すかのようにだいたい平均くらいの身長を持つ少女が歩いて俺達の机の前まで来る。


 「貴女は···えーっと」


 見覚えのない少女に話しかけられた俺が言葉に詰まっていると。


 「会長、勝手に居なくならないでください。って貴方達は」


 そこに見覚えのある凛とした雰囲気の眼鏡を掛けた少女、来島咲枝先輩が歩いてくる。

 

 「ど、どうもですわ」

 

 「ご無沙汰してます」


 俺と遼はかしこまりながら小さくお辞儀をする。


 とそこで東雲さんが何かに気づいたようにポンと軽く手を打ち鳴らす。


 「ああ、そう言えばお二人はあの入学式の時、飛び出してしまったので、会長と会うのは初めてなんですね」


 「確かにそうね。···ああ、あの後ちょっとしてから会長が出てきてあれが訓練だって事とかを話されたのよ」


 東雲さんに同調し補足の説明を入れてくれる二条院さん。


 「ふむふむふむふむ」


 すると生徒会長は俺と遼の顔や体を至近距離で隅々まで観察し何度も首を傾げる。


 「会長、失礼ですよ」


 「あ、ああ、ごめんねー。こほん、私はこの学園の生徒会長、3年の三廻部(みくるべ)桜だよ。よろしくね」


 来島先輩に諭され、生徒会長の三廻部先輩は人懐っこそうな屈託の無い笑顔で自己紹介をする。


 「生徒会長副会長の来島咲枝です。よろしく」


 続いて来島先輩は俺と遼の方をギョロっと睨みつつも丁寧に挨拶してみせる。


 「よし挨拶したしOKだね。それでは···ふむふむ」


 「ちょっと会長、彼女達が困ってしまっていますよ」


 再び俺達を食い入るように観察し始めた三廻部会長を来島先輩が咎めるがそれでも止めることは無く、今度はさらに至近距離にまで迫って来る。


 「あ、あの三廻部会長?なんでしょうか?」


 俺は恐る恐る尋ねてみる。


 「ふむ、やっぱり君たちからは何か普通の子達とは違うものを感じるんだよねー。うーん、私、感は鋭いんだけどなー、でも分からなぁ。···逆になんだと思う?信念を貫く硬い何か?」


 「い、いやー、そんなこと聞かれても私は至って普通ですわよ。と言うかそこ"意思"以外入るんですの?ははは」


 三廻部会長の言葉に少しだけドキッとしながらも俺は先輩に無茶ぶりされて困っている後輩を装いながら作り笑いを浮かべる。

 

 しかし驚いた。まさか本当に何かに感ずいているんじゃないだろうな?普通の子達と違う所なんて、そんなのなんも貫いた事の無い硬いナニがあるくらいだぞ。


 すると次の瞬間。


 ゴチン。と硬いものと硬いものがぶつかり合う音が聞こえ気付くと目の前で三廻部会長が蹲っていて、隣には拳を強く握っている来島先輩の姿があった。


 「痛った!?もー、何するの咲枝ー」


 「はあ、後輩を困らせるんじゃないわよ。ほらもう行くわよ」


 「ちょっと引っ張らないでってー」


 そんなやり取りをしながら三廻部先輩は来島先輩に服の後ろ側の襟を引っ張られて引きずられて行く。


 「じゃあね皆、楽しみにしてるからね〜」


 そして俺達の視界から消える直前、よく分からない言葉を残しそのまま見えなくなってしまった。


 「なんだったんだ」


 俺と遼はそう呟いて何か答えを求めるようにお互いの顔を見た。

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