朝倉祭2 2
「···よし!」
何時までもここに座っては居られない。
俺は気合いを入れ直して立ち上がる。
さっき奴らが自分で言っていた"今回の私達はただのオマケ"という言葉、あれは雰囲気から察するにおそらく事実だ。
今回奴らは、この計画に少し手を貸しただけで、神具使いを操っている主犯は別にいる。
その主犯の目的がベッキー達と同じ様に返納機等の開発を推し進めている者達を始末する事なのかどうなのかは分からない。
だが、分かることは1つある。それはベッキー達が帰った今も尚、この事件は終わっていないということだ。
「じゃあ百騎一閃を置いておくから、お前はそれ持ってどっかに隠れててくれ」
「···ああ、助かる」
俺はそう提案すると騎士は少し間を開けたものの割かし聞き分けよくそれを受け入れる。
「ふっ、じゃあな」
それから最後に1度笑いかけて俺はその場を後にした。
「ひでぇな···」
何人もの操られた人を気絶させながら、やっと先程まで試合が行われていた辺りまでたどり着いた俺は、恐らくはベッキー達によってやられたと思われる男性達が大部分を占める亡骸を見てつぶやく。
「くっ···」
目の前の惨状に唖然としてしまっていた俺だが、すぐに事件がまだ解決して居ない事を思い出し、気持ちを切り替える。
そして、それとほぼ同時に神社の本殿の裏手の林の様になっている辺りで爆発音が響く。
「あっちか···」
そう呟き俺は音のした方向へと走り出す。
がしかし、その時だった。
俺は素早い速度で距離を詰めてくる気配を感じ、刀を構える。
「ぐっ!!?またかよ」
「···」
俺が敵の攻撃を受け止めた事で、カンン!!と言う煩いくらいの金属音が、その場に響き渡る。
「···」
「あんたは確か倉持さん?へぇ、そんなに動けたんだ」
西洋の剣を巧みに操り、俺と同等に立ち合う彼女へと問いかけるがもちろん返事は無い。
「あんたも操られてるって事か」
「···」
「はあ、めんどくぇな!!」
ため息をもらし、再び刀を峰打ちになる様に構え直した俺は倉持さんの方を睨む。
「いくぞ!」
と自身に気合いを入れ、刀を数回ぶつけ合い、少し距離を取ってはまた刀を交える。
俺は神具を展開している奴の姿を見ればある程度はその実力を推し量ることが出来ると思っていた。
だがそれは間違っていたのかもしれない。
操られた事で元の実力以上の力を引き出されているのか、それとも操られて普段出すのを躊躇っている本気を出せているのかは分からない。
だが理由はどうにせよ、目の前の少女が強敵である事は事実だった。
「ちっ、それなら」
と、俺は忘レ刀により、敵と鍔迫り合いをしている状態の斬像を生み出し、自身は一歩後方へと下がる。
そして、今度は鞘に収まっている状態の刀を突きを放つ体勢を取っている自分の手元に召喚して、間髪入れること無く斬像諸共倉持さんに突きを放つ。
だが、しかし。
「···」
倉持さんは無言のままに、俺の放った突きをバックステップで避ける。
「やるな。だが···」
ニヤリと笑みを浮かべた俺は体を翻しながら、先程まで斬像が持っていて今は空中を回転しながら地面に落ちようとしている刀の頭の部分に向けて自身の持っている刀を思い切り打ち付ける。
すると刀はバックステップで後方へと後退している倉持さんに向かって真っ直ぐに飛んで行った。
そして、それが彼女の元に到達する瞬間、俺は刀を持って構えている状態の斬像を召喚し、刀は倉持さんの喉元スレスレの所で止まる。
「行け!!」
「っ!!!」
それから斬像は素早く峰打ちに構えを変え、倉持さんの鳩尾の辺りに斬像を加え、そのまま力任せに投げ飛ばして、数m離れた所にある木に激突させる。
そして。
「かはっ!!!」
と、苦しそうな声を上げ、倉持さんは口から小さい管状の生き物のようなモノを吐き出す。
「!!!」
あれは···。
俺は吐き出されたモノを見て、瞬間的にそれがなんなのかを理解する。
そして、一瞬でそれとの距離を詰めて、地面を蠢くそいつに対して刀の先端を向けてそのまま突き刺した。




