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朝倉祭 10

 「映画、映画見に行こうぜ、な?いいだろ?俺丁度見たいのあるんだよ」


 喫茶店を後にして適当に道を歩きながら、俺は徐に母さんと遼に提案する。


 だが勿論、これは本当に映画を見たい訳では無い。

 

 映画ならば試合で呼ばれた時にトイレだとか適当な理由を言って退出しやすく、また俺が退出し遼と母さんを2人きりにしてしまっても気まずくなりにくい。


 一石二鳥の作戦というわけだ。

 

 そして俺は同時に遼に俺の考えに同意する様にウィンクで合図を送る。


 「うわっ気持ち悪っ······こ、こほん。わ、私は暁良と一緒なら何処でもた、たの、しいから、い、いいよ」


 「お、おう、さ、サンキュー、あ、愛してるぜ」


 そんな感じにぎこち無い感じのやり取りをしてしまった俺と遼だったが、母さんには奇跡的に怪しまれる事はなく、同時に同意を得ることも出来た。


 それから俺たちは更に数分ほど歩き、1番近くの映画館へと入っていった。


 「で、暁良くんは何が見たいのかな?」


 「え、えーっと、あー、この映画館ではやってるかな〜」


 俺はそんな感じにはぐらかしながら、携帯にてこの映画館で現在公開中の作品を調べる。


 望む物はなるべく上映時間が長いもので尚且つデートで行ったとしてもセンスを疑われない物だ、でなければ母さんにダメ出しを食らってしまい面倒臭い事になってしまうかもしれない。


 アニメはデートにはちょっと向かないか、うーん、ただこっちのホラーもなぁ、俺が女の子の怯えている表情に興奮する様な人種だと思われる可能性がある。


 「ん、これいいじゃん、最近話題だよなこのホラー、俺もちょっと見たいと思っていたんだよ」


 悩んでいる俺の近くに来て、携帯を覗き込んだ遼は母さんに聞こえない位の声で言う。


 「っておいバカお前。俺が恐怖で怯えた女の子の表情に興奮する性癖だって母さんに疑われたらどうすんだ」


 「ああ···、そうかそれは悪ぃな。だがよ、いい事教えてやるけど普通の性癖の人間はそもそもそんなこと危惧しねーんだよな」


 「な、なに!?···」


 く、くそ、盲点だった。


 「こ、こほん、ま、まあとにかくだ。やはり無難なのでいいだろう。この恋愛映画でいいな」


 「ああ、まあいいんじゃね」


 俺達はそんな感じで会話を終えると、その旨を母さんにも話し、その後直ぐにチケットを買ってスクリーンへと入って行った。


 



 そして、上映開始から30分。


 「ぐっ、お、面白い···面白いのに···」


 適当に選んだ映画と言うのもあり、そんなに集中もせずにボケっと見ていたはずであったが気が付くと俺はその映画に釘付けになってしまっていた。


 がしかし、同時に神社でスタンバってもらっていた騎士から呼び出しがかかっていた。


 くそぉ、早く行かないと行けないが続きが気になる。


 「ぐ、くそ、···ちょっと行ってくる。帰ってきたら内容を教えてくれよ」


 「ああ、呼ばれたのな。分かったから早く行け」


 「おう行ってくる」


 俺は約束すると遼に母さんの事を任せてトイレへと急ぐ。


 そして個室に入り、持ってきていた九條学園の制服に着替えるとその場に斬像を生成して、俺自身は騎士の元へと瞬間移動した。


 



 「う、うわっ!?」


 俺が騎士の元に移動する数秒前、騎士の身体は青色のオーラに包まれると、その人型のオーラの右手が騎士の右手から離れて自立的に動き、そのまま騎士の胸の辺りから体内に入っていく。


 その後、それは直ぐに胸から手を引き抜くと、その手には刀が握られていて、そのまま人型のオーラは騎士の体から幽体離脱の如く離れ斬像に姿を変える。


 そして。


 「懐刀」


 「って、怖ぇって」


 そうして生み出された斬像へと生キ写シして来た俺に対して騎士がツッコミを入れる。


 「まあまあ、お前の身が危険にさらされた時はこれで直ぐに助けに来てやっからさ」


 「ああ、そりゃどうも···でもよ···」


 「よいしょっと」


 俺は騎士がなにか言おうとするのを無視し、時間短縮の為、手に持っている刀をすぐ様、騎士の胸の辺りに突き立てそのまま差し込んでしまう。


 「うぐっ、ってそれをやめろって言おうとした所に!!」


 「いや、来るって思って身構える方が怖いかなって思ってさ、ほら子供が注射される時みたいに気が紛れている所をチクッみたいな」


 「レベルがちげぇよ。だいたいそれ失敗したらそのまま胸を一突きされてあの世行きだよな。大丈夫なのかよ!?」


 「あー、まあ、うん、大丈夫大丈夫。約半年で神具をマスターした俺に任せておけ」


 「いや凄いは凄いんだけど心配になる言い回しだな。刀一筋80年の大ベテラン的な怖さが」


 「ははは、確かに···!?、って、おっと、そんな事話している場合じゃねぇ。早い所試合を終わらせて隼人と恵美の恋の行方を見届けなければ、映像化不可能と言われた難解なストーリーが俺を待っている」


 俺はそう言い、会話を中断すると騎士に背を向けて試合会場へと歩き出した。

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