禍津解錠 15
「はあはあ···」
暁良は体力の消耗を感じつつも、周りの景色の変化から、禍津解錠があと数分ほどで終わるであろう事を確信し、自身の周りに刀を召喚する。
そして自分が逃げていく方向に射出し、生キ写シでの逃げ場を常に確保しながら逃走を続ける。
「ちっ、くそ」
本気で逃げる事に専念した暁良は圧倒的な力の差を持っているであろう禍津ノ王リカルドの力を持ってしても捉えることは難しく、リカルドは更にイライラと焦りを募らせていく。
そうして更に逃げる事1分。
「よし」
もはや禍津解錠の空間は半径数百m程に狭まっていて、それを見た暁良は小さく呟く。
そして、暁良とリカルドは追いかけっこを続けながら建物の中を通り過ぎて、少し開けた場所へ出た。
だがその瞬間。
ゴツンッ、と何かにぶつかり暁良はそのぶつかったものと一緒に前方へと転げ落ちる。
「痛ってぇ」
「つぅー」
「って、なんでお前が···って、やばい早く立て逃げるぞ」
「お、おう」
暁良は遼へと手を差し伸べ、起き上がらせると今度は2人で同じ方向へと逃げる。
「ふっ、最後の最後に天に見放されたか···。2人揃って死ね!!」
そう言うとリカルドは空中に浮いた状態で大きく剣を振り上げ、大技を放とうとしているのか力を貯めていく。
だがその時。
「ふふ」
と自分から逃げている筈の暁良達の方からそんな笑い声が聞こえ来た様にリカルドは感じた。
そして、同時にリカルドはある不可解な事に気がつく、それは"どんどんと収束していっているこの禍津解錠において、この女が俺の攻撃を避けながら禍津解錠外へと退避することは不可能だったのか?"という疑問であった。
「ん?何だ?考え事か?」
そんな呼び掛けによりハッとしてリカルドは再び暁良達の方を見る。
すると。
「はぁー、ふぅーーー」
と暁良はリカルドの方を振り返り、呼吸を整えながら自身の目の前に5本の青色のオーラを纏った刀を浮かばせ、集中していた。
「1回しか出来ねーからな!しっかり仕留めろよ!!」
と暁良はそう叫び、1番端の刀に手を触れ、そのまま5本を重ねる様に横にスライドさせて、1本の刀に纏めるとその流れで刀を居合の様なフォームで構えた。
すると暁良の身体自体が斬像よりも青色の濃い半透明の存在へと変わる。
「百騎一閃、五十ノ集」
そして、その刹那。
暁良は青い光にしか見えないほどのスピードでリカルドとの距離を詰める。
「馬鹿め、俺の最強の鎧にそんなものは効かん」
と、暁良の事は気にせず剣を振るおうとするリカルド。
しかし。
「それはどうかな···」
そんな言葉がリカルドの身体を通り抜ける。
そして次の瞬間、リカルドの魔装は強制的に解除させられてしまう。
「なっ···!!?」
「俺の百騎一閃の能力の本質は生霊を作り出す事だ。霊なんだから呪いだって憑依だって全てお手の物さ。···遼!!」
少し離れた場所で姿を表した暁良はドヤ顔でそう言い、遼に合図を送る。
「おう!!神具展開、|参重参丁参段散弾銃《トリニティ・ケルベロスXⅢ》」
暁良の呼び掛けに答え、改めて自身の手に一丁の散弾銃を召喚する。
更に続けざまに、自身の周りに20近くの銃の形をした光を召喚して、それを手元の銃と合体させ、3m程はありそうな巨大なレーザー銃へと変化を遂げさせる。
それから遼はその巨大で重そうなレーザー銃を腰の位置で構え、エネルギーをチャージしながら斜め上の方向にいるリカルドへと銃口を向ける。
そして。
「いくぞ、狼王咆哮砲·絶!!!」
エネルギーが限界までチャージされると、遼は持てる力の全てを込めた一撃を放つ。
それにより放たれたレーザーは半径数m程にもなり、リカルドの身体が丸々飲み込まれると、そのままどんどん伸びて行って空を覆った雲にも風穴を開けた。
「はあはあ」
そして時間とともに徐々にレーザーは細くなっていき、全てを出し切ると、ボロボロのリカルドが地面へと落ちて、力を出し切った遼は、足をふらつかせながらその場に座り込み息を荒げた。
ちなみにトリニティ・ケルベロス・エックススリーと読みます。サーティーンではないです。
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