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禍津解錠 13

 「なっ···マジかよ。おい、もしもし、もしもし!」

 

 目の前の敵の放つ雰囲気から本能的に自分よりも強い存在である事を察した暁良は無線で応援を呼ぼうとするが、結局どことも繋がることは無かった。


 「懸命な判断だな。だが···」


 ゆっくりと漆黒の剣を振り上げたリカルドは小さく笑った後、剣をゆっくりと剣を振り下ろす。


 すると、一瞬にして今まで居たビルが真っ二つに裂ける。


 「は?···」


 何が起こったか理解出来なかった暁良達は固まってしまっていたが、2つに裂けたビルが崩壊を始めると同時にくらいにようやく敵の桁外れの強さを理解する。


 「う、うわ!」


 とそして、暁良達がいた場所の地面にもひびが入り、その後、崩壊して2人は地面に向かって真っ逆さまに落ち始める。


 がしかし。

 

 「くっ、百騎一閃!···おら!!」

 

 「喰らえ!」


 と、2人は落下し始めているにも関わらず、自分の事は後回しにし、暁良は刀を投げ、遼は散弾銃を放つ事でリカルドへと攻撃を仕掛ける。


 これはリカルドが自分達よりも強いという事が理解出来てしまった暁良達の苦肉の策とも言える行為であった。


 普通は自分達のいた足場が崩れたら、まず自分達の身を守ろうとするだろうし、暁良達も普段ならそうしただろう。

 

 しかし今回ばかりは不意打ち等を仕掛けないとこの敵には歯が立たない、と暁良達の中で瞬時に判断がなされていた。


 そして、その判断は概ね正解であった。


 だが。


 「おっと、今のは驚いたな」


 2人の放った攻撃に対してのリカルドの反応は完全に遅れていた。


 がしかし結果としては反応するしない以前の問題であり、暁良達の攻撃はリカルドの鎧によって余りにもあっさりと弾かれてしまう。


 「くそっ」


 「って、おい遼そろそろ下がヤバいぞ」


 リカルドの方に意識がいってしまっている遼に対して暁良が忠告を入れ、自分達が危ない状態である事を思い出させる。

  

 そして、2人は崩れ落ちる瓦礫の上を飛び移りながら、落下速度を落としていき、何とか無傷で地面にたどり着く。


 「「はあはあ」」


 「随分と疲れている様だな」

 

 膝を付き疲れた様子を見せる暁良達に対して余裕の様子で地面に降り立ったリカルドが言い、笑う。


 「言ってろ!斬雨」


 暁良は空中に十数本の刀を召喚しすぐ様、敵に向かって時間差をつけながら射出する。


 更に遼もそれに合わせて散弾銃を放った。


 「学ばないな」


 しかし、リカルドは今度は明らかに避ける様子なくそんな事を呟くと暁良達の攻撃全てを受ける。


 そして案の定、最初に放たれたいくつかの刀と遼の銃弾は鎧によって完全に阻まれる。


 だが。


 「斬像!針穴透シ」


 暁良は時間差を付け放っていたいくつかの刀に斬像を生み出し、敵の鎧のほんの少し継ぎ目を狙って突きを放つ。


 がしかし弱点だと思っていたその部分に刀はクリーンヒットしたもののびくともしない。


 「なに!?」

 

 「なるほどな、だが···」


 少しだけ感心した様子のリカルドだが、ゆっくりと剣を構え、撫でるように自身の周りの斬像に斬撃を加えると一瞬にして刀は全て折れて、斬像も一掃されてしまう。


 「我が最強の剣と鎧に死角は無い」


 「ちっ···」


 「さあ、次はどうする?」


 小馬鹿にしたように挑発してくるリカルド。


 「···」


 それに対して、暁良は自身の周りに数体斬像を召喚する。


 そして。



 「作戦ターイム!!!」



 「···は?」


 暁良の言葉に流石に困惑した様子のリカルドだったが、暁良はそんな事は気にせず、遼の前に立ち、リカルドに背を向けた状態になる。


 「おい暁良!」


 「静かに、そういう作戦だ」


 焦る遼に対して暁良は冷静にそう言うと、身振り手振りを踏まえながら遼と作戦会議しているフリをしながら斬像との視覚共有により常に警戒は怠らなかった。


 「はあ···」


 少々呆れながらも、なし崩し的に作戦タイムを認めざるを得なくなった様子のリカルド。


 しかし暁良には、こんなふざけた提案が通るだろうと思える根拠があった。

 

 それはリカルドが明らかに暁良達を、というか人間という存在を下に見ていると思えた為であった。


 この場面は、例えるなら大人が子供と将棋をしている様なもので、子供の"待った"を受け入れない大人はそれこそ大人気ない、そんな心理がリカルドにも働くと考えたのであった。


 また、リカルドの返事を聞く前に彼に背を向ける事により、このまま攻撃したら不意打ちに近しくなるという状況にして、より一層、プライドの高そうなリカルドが攻撃出来ない空気を作り出したのである。 


 

 そして暁良と遼は時に言い争いなどを交えつつ、作戦を練り続け、10分近くが経過する。


 

 「···おい、まだか?」


 痺れを切らして訊ねるリカルド、それに対して、ニヤリと笑った暁良が振り返る。


 「ふっ、ああ、ありがとう、あんたを倒すいい作戦が立てれたよ。ところでひとつ聞いてもいいか?」


 「···なんだ?」


 「あんたみたいな奴、あー、禍津ノ王···だっけ?は他にも居るのか?」


 「ああ」


 「へー、じゃあ、その全員があんたみたいに婚活の為にこの場を使ってるって事かい?」


 「···はあ。···一概にそういう訳では無い。中には普通に戦いたいだけの奴も居るし、お前らを只の苗床としか思ってない奴もいる。···だが最もそんな奴らと俺を一緒にして欲しくはないがな。俺の寵愛を受ける事が出来る者はこの世でただ1人、そして俺の伴侶となる者には相応の地位が約束される」


 「おお!···ん?」


 「どうかしたか?」


 「いやー、なんと言うか、その···」


 「なんだ言ってみろ」


 「ええ、という事は、あなた"童貞"って事ですか?だってただ1人愛する人をまだ決めてないって事っすもんね?ともすれば童貞の癖によくあんな尊大な口調で喋れますよねって、いくらクールを装っても、これからは"あっ、でもこいつ童貞なんだよな"って心の中副音声が流れちゃいますよ」


 ···········。


 暁良の言葉により、一瞬、その場を恐ろしい程の静寂が包んだ。

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