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魔王討伐その後で  作者: 小田 ヒロ
第四章
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46

「青炎改良したから纏わせても、もうヤケドしないからな。」

「ミスリル着てるから心配ない。この期に及んで変な手加減しないで!」

「あの………バケモノ以上の熱で焼き尽くす!」


二人はありったけの回復薬や増強剤を飲み干した。出し惜しみなどしない。これが最後だ。


ルークは背中からレーネを抱き込み二人を炎で包みこんだ。かなり熱いがルークの炎が火龍の炎のクッションの役割を果たす。何よりルークの炎がレーネを傷つけるわけがない。


炎の竜巻の上に二人は立ち、グングンとそれを伸ばし、火龍の遥か上空のポジションを取る。


火龍は火の球をボンボンと吐き、周りを燃やし尽くしている。

気のせいか苦しそうに見える。


(少しはさっきの〈氷剣〉効果あった?)


しかしドシンドシンと、山を降りようとしているのも事実。火龍は止まっていない。考えている時間はない。

「ワンパターンでは()れないぞ!」

「落下のスピードを使うわ!」

「レーネ、この高さが限界だ!行くぞ!」


ルークの両手から、真っ青な炎が燃え上がる。レーネは〈アカツキ〉を構えた。一気に〈アカツキ〉が燃え上がる。


(前より重い!)

炎に質量はないはずだから、恐らく魔力を載せているのだ。


(さすが、ルーク。)


剣の刀身が炎で二倍に伸びる。青くクリスタルのように輝く。


「レーネ!」

レーネはコクンと頷いて、両手に自分のパワー、魔力、全てのエネルギーを注ぐ。


ドクン!

〈炎剣アカツキ〉が合図する。


いまだ!


「いっけーーーーーーーぇ!」


レーネは炎の竜巻を蹴って真っ逆さまに飛び出した。ルークも前回のように青炎のあと倒れることはなく、レーネの後ろから飛び出し、両手で陣を構築し物理魔法で火龍を縛る。そこまですると、ルークの魔力は一気に枯渇し、ただレーネに向かって落ちていく。


火龍は上空からの威圧に気づくが、拘束されて手足は動かない。頭をあげて火球をボンボンとレーネに向かって吐きつける。


レーネは息ができないが、

(ルークの炎のほうが熱いっつうの!)

火球のど真ん中を突っ切って堕ちる。


レーネはゼンクウを思い出す。ネル老師を思い出す。サイラスを思い出す。ウダイを思い出す。ユアンを思い出す。


(私は、やれる!)


自分の大事な人を守るため、自分の大事な人の想いに報いるため。人類の平和を守るためなんて大そうなことではない。今日のレーネは極めてシンプルだ。


(火龍、悪いわね。)


また新しい火球が生み出そうとして大口を開けた火龍の喉に、レーネは再び〈炎剣アカツキ〉をぶちさした!


ブサアッ!!!


「はあっ!!!!」


ゼンクウの魔力を〈炎剣アカツキ〉を通して流し込む。火龍が悶え、暴れ出すがレーネは手を〈アカツキ〉から離さずグリグリと押し込んだ。より深く、より奥に!

ガツっと硬いものに剣先が当たった。


ネル老師の氷だ!氷鬼の魔法は健在だった!


史上最低温度の氷に、史上最高温度の青炎がぶつかった。


バキーーーーン!


火龍の喉奥の何かが割れた!


「ギャアアア!」


火龍が中から壊れていく。重たい身体が一気に傾き、既に抜け殻のレーネは巻き添えをくらいバランスを崩す。

レーネは先程の二の舞になるまいと剣から手を離さず必死にぶら下がる。


「レーネ!」

暴れる火龍に体当たりされるレーネを、ルークが〈アカツキ〉を握りこむレーネの指を無理矢理離し、頭から落下しつつ抱き寄せる。この高度から地面に叩きつけられる、二人とも受け身を取れる余力はない。少しでもレーネが生き残る確率が増えるように、ルークはレーネの頭を抱えこむ。レーネもルークにしがみつく。



二人が死を覚悟した時…………二人の手首のブレスレットから、キューンと四色の発光体が力強く飛び出し二人を包み込み、空間が歪む。



ドサっとルークがレーネをかばい下になって、地面に落ちた。火龍を見渡せる、先程までサイラスの定位置であったルークとサイラスの集合場所の岩棚。まだほんのりサイラスの青い守りが漂っている。

サイラスの仕込んだ移動魔法が発動したのだ。


一度目はゼンクウ、二度目はサイラス、そしてネル老師、ここにいない仲間が今もってレーネを守り続ける。



レーネはルークの腕の中からずりずりと顔を出し、ルークと共に火龍を見た。


火龍は喉から全身に向かってパリパリと音をたてて割れていった。胸の内部から表面まで凍って、そして青炎で焼かれた瞬間に


「ギイーーー!」

と一声吼えて、息絶えた。


骸は不気味な音をたてながら壊れ続け、やがて青炎で焼けた。





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