表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王討伐その後で  作者: 小田 ヒロ
第二章
15/51

14

ゼーブの王城の最も小さな謁見部屋に、一握りの人間が招集されていた。魔法省のトップであるユニス師、軍のトップ、バーク大将。行政を取り仕切る宰相ジョージ。先王の師で国の知恵袋であるネル老師。英雄二人サイラスとルーク、そして召集したのはケリック王アルキンである。


この不穏なメンバーにルークは不安にならずにいられない。また大規模な魔獣の襲来でもあったのか?それともゼンクウに何かあったのか?

サイラスはサイラスでここに呼ばれる理由を色々と探ったが、全く掴めなかった。いざ座ってみると、レーネが呼ばれていないのを不審に感じた。当然出席だと思っていたのだが。


皆揃ったのを確認して宰相が話しだす。

「皆様お忙しい身の上、時間が惜しいので端的に話します。昨日宝物庫より、聖剣〈アカツキ〉が消えているのが確認されました。警備の兵と入出記録によると、五日前に宝物庫を開けたときには間違いなく陳列されており、それが目撃された最後。五日前より昨日まで、不審な人間の目撃、捕縛等の連絡は上がっていません。」


あまりに予想外の問題に皆、息を飲む。


「ユニス師、この数日、結界のゆらぎや莫大な魔力の感知はありましたかな?」

「いえ、そのような情報は上がっていませんし、私も察知しておりませんわ。」


「〈アカツキ〉は勇者様しか扱えない剣、剣から出る覇気でチンピラでは握ることもままならん。売ろうにもまともな武器屋が買うわけもない。そもそも勇者の剣盗むバカいるのか?」

バークが肩をすくめる。


「……まあ、そういうことじゃな。 〈アカツキ〉は勇者様のもの。国の宝物ではない。王は単に勇者様からの信頼により預からせてもらっていただけじゃ。」

老師ははぁと溜息をついて続ける。

「〈アカツキ〉が消えたのならそれは〈アカツキ〉の意思だろうよ……」


「つまり?」

と宰相が促すと、王が言葉を繋いだ。


「つまり、勇者が死んだか、勇者が我が国を見限ったかどちらかだ。」


(ウソ言うな!)

ルークは慌ててレーネに念話を送るが繋がらない。何度送っても自分の問いかけが闇に吸い込まれていく。レーネはいつも、どんな緊急時であっても一言は返してくれていたのに。


サイラスも同様だった。

(レーネ!どこにいる!)

少女は自分のまわりで、手の届く範囲で泣いたり笑ったりしているはずだった。


「早急に事態を把握せねばならん。死んで〈アカツキ〉が消滅したのであればまだしも、剣とともに勇者が国を捨てたとなれば我が国にとって由々しき問題。」


宰相の言葉にルークはカッとなった。

「止めろ!レーネは死んでも裏切ってもいない!」


「では、何処にいる?」


ルークは答えられない。


「討伐に出ていたのでは?」


サイラスは先週自分にも討伐の打診があったのを思い出した。


「討伐は速やかに完了し、部隊はすでに帰隊しているそうだ。部隊長に勇者様の様子に変わりはなかったか、聞いてみますか。」


「私が聞こう。あまり話が広がらないほうがよかろう。」

バークが宰相に答えた。



王が再び口を開いた。

「〈英雄〉サイラス、〈英雄〉ルークよ、〈勇者〉に何があった?」

「……………」

答えを持たない二人は押し黙る。


「その方達にわからんのなら、我らには到底わからんな。四年か?共にいたのは。」

「……………」

「思い出せ、そして事実を持ち帰れ。」

「……………」


〈勇者〉レーネはこの世で最強の力を持つ一人。命を狙われたとしても、レーネの命は簡単には取れない。だとすると、レーネは何らかの事情で国を離れ、〈アカツキ〉は勇者の元へ飛んだと考えるのが妥当だろう。


「我々は、レーネ様にどんな失望を与えてしまったのかしら…………。」


ユニス師のつぶやきに一同黙り込んだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ