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「蓮くん、今日からうちでゆっくりしてね。大変だったでしょう?ゆっくり休んでね」
おばさんが優しい笑顔で言う。
「はい。有難うございます」
靴を脱ぎ、おばさんの家、つまり母さんの妹の家に入る。
あれから、どれくらいだったのだろう。
うまく思い出せない。
「柚月たち〜!蓮くん来たわよー!蓮くん、ちょっと待ってね。子どもたちが今くるから」
「はい」
荷物を置く。
「こんにちは」
一人の少年が立っていた。
作り物の人形のように美しかった。
その少年が艶美な笑顔を作る。
「柚月です。よろしく」
思わず息を呑む。
「りゅー、4さい〜」
碧紀と手を繋いでいた小さな男の子が手のひらを広げて、こちらに向ける。
「龍、久しぶり。それは5だろ」
思わず、苦笑する。
そして、柚月と呼ばれた少年の方をしっかりと見る。
「えっと、俺、蓮です。よろしく」
こんな子、いただろうか。
半年前の、じいちゃんの三回忌にはいなかった。
龍がこちらにかけよってくる。
「れんにぃ、みなこちゃんは?」
伯母が息を呑むのが聞こえる。
「こら、龍!」
その言葉を遮るように僕は答えた。
「遠くに行っちゃったんだよね。だから今日はいないんだ。」
明日も、明後日も、明々後日も、その後もずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…
「れんにぃ?」
ハッとして、ごめんな、と言いながら龍の頭をなでる。
「ざんねんだねぇ」
龍がため息をつく。
「部屋に連れてくよ。上だから」
そう言って柚月が僕の荷物を持つ。
それを見て、僕は慌てて柚月の腕へ手を伸ばした。
「いいよ!自分で持つから!」
柚月の腕は白くて細く、教科書まで入った僕の荷物を持てば、折れてしまいそうに思えたのだ。
柚月が鼻でふん、と笑う。
「こう見えても、力はそこそこあるんだ」
バカにするなよ、と柚月はまた笑い、階段を上がる。
僕は慌ててその背中を追った。




