番外編・スーパーメイド
スーパーメイドサーヤのその後の話。
サーヤ視点の一人称です。
私はサーヤ、リーデン国の城で第二王女専属として働いているメイドだ。
私の主人であるレイア姫は、とにかく面倒くさがりだった。
姫は、面倒くさがりだが、やるときはちゃんとやる、やれば出来る子なのだ。
普段やらないだけで・・・・
そんな姫は、先日結婚された。
相手は隣国スカーレットの宰相の子息であるライナー様だ。
あの二人は、運命の人とお互いを認め合うほど仲が良い。
毎朝姫様・・・・いや、奥様を起こした後、即座にベッドを片付けることになるくらい仲が良い。
きっと、子供もそう遠くないうちに授かるだろう。
子供ができた時、奥様はどうなるか・・・・面倒くさがりながらもやることはやると思うが。
まぁ、いまから考えても仕方ない。
さて、私は奥様とは五つ離れている。
つまり、私は二十であり、行き遅れと言われる年齢だが、それはどうでもいい。
孤児院出身で身寄りの無い私は結婚に興味はないし、恋愛するなら奥様の面倒もといお世話をしないといけない。
そう、私は結婚にも異性にも興味はないのだ。
奥様は、それを分かっているから私にお見合い等そういう話はしない。
面倒くさいというのもあるだろうが。
とにかく私は、強がりでも自棄でもなく、ほんとうに興味がないのだ。
「俺と付き合って下さい」
そして、奥様に忠誠を誓った私は奥様の専属メイドとして生涯を過ごそうと思っているのに、なぜ告白されているのか。
「申し訳ありませんが、お断りします」
「なぜだサーヤ。結婚しても専属としての仕事は続けられるだろう」
「そういう問題ではなく、結婚とか興味がないので」
「そこまで仕事熱心とは・・・ますます惚れた!」
「はぁ?」
この人は何を言い出すのだろうか。
さっさと、諦めてください。
「年齢なんぞ関係ない、俺はサーヤが好きだからな」
「年齢がどうとかも関係ないのですが」
「つまりは、まだ心変わりする可能性もあるということだな」
あぁ、意味が分からない。
話が通じない。
奥様の言っていることなら、なんでも分かるのだが。
なんだろう、確かに振ったはずなのに、余計に気合が入って、さらに上機嫌だ。
「必ず口説き落としてみせる! 覚悟しておけ!」
そんな宣言いらない。
あぁほら、スキップなんてするから怒られている。
というかなぜスキップ・・・・ほんと、意味が分からない。
それから、彼、使用人の一人であるトムは、しつこく私につきまとってきた。
私の仕事が一段落着いたときに必ず。
私の行動が把握されているのだろう。
凄まじい執念というかなんというか・・・・なんとからないだろうか?
使用人達に相談してみても、返ってくる答えは一緒で
「トムは、一度人を好きになるとしつこいから頑張れ」
と、いう無情な答えだった。
私は、この屋敷に来たとき、あいさつをしたくらいしかトムと関わりは無かったはずだ。
この前、数回目となる告白を、聞いた後、なぜなのか聞いてみたら
「淡々と仕事をこなす姿に惚れた! あと顔も好みだ!」
と、返ってきた。
このことは、奥様には言っていない。
私は、ずっと奥様に仕えてきた専属とはいえただのメイド。
それに、奥様に言ったら、トムは辞めさせられる可能性がある。
彼は、仕事はちゃんとしてるし、周りとの関係も良好なので、さすがに辞めさせるわけにはいかない。
「サーヤ、この前のクッキーおいしかったぞ、やっぱり俺と結婚」
「あれは、皆さんにも配ってます。あなたのためだけに作ったわけではないので」
あぁ、ほんと。
しつこい。
なぜ、諦めないのか、探せば他の人がみつかるだろうに
「よう、サーヤ、今日も素晴らしい手際だな。良い嫁さんになれるな、と、いうわけで俺と結婚・・・・」
「しません」
最近は仕事中でも、声をかけてきている。
仕事の邪魔です。
「なあサーヤ、次の休み、俺も休みなんだよ、一緒にどこか行かないか?」
「その日は、奥様のために新作タルトを買う予定なので」
「ほんと、レイア様大好きだな。なら荷物持ちで一緒にいくよ」
「お構いなく」
「いやいや、遠慮するなって」
「・・・・はぁ、じゃあ、お願いします」
でも、なぜかそのやりとりが楽しいと、思えてきたのだ。
これは、別に恋ではない。
人生の、私が奥様のために生きていくための日常の、スパイスだ。
「サーヤ、今度こそ俺と結婚してくれ!」
「一昨日来やがれ。です」
「それは無理だっ! く、ほんと手強い。が、俺はあきらめんぞ!!」
でも、そうだな。
気が向いたら結婚してあげてもいいかもしれない。
気がむいたら。
「ん、」
「はい? 最近楽しそう。ですか? そうみえます?」
奥様は、ゆっくりと頷く。
「ん」
「隠しているわけではないのですが、そうですね。一生懸命な人がいまして、その人とのやりとりが少し楽しいのかもしれません」
奥様は、ベッドからゆっくりと体を起こされた。
天使のようだと言われていた奥様は、今や女神のような美しさだ。
「恋、してる」
「え」
奥様が私に言葉を出す時は、大事な事を言うとき。
その、奥様の言葉に私は困惑した。
恋ではないと、私は思っていたが、奥様にとってみれば私が恋しているようにら見えたらしい。
「それ、きっと恋。そのうち自覚すると思うわ」
「奥様・・・・もしそうだとしても、私は」
「ん」
奥様は、好きなようにすればいい。と言ってベッドに倒れ込んだ。
言葉でないといつことは、ほんとうに大事な事というわけではないのか。
けど、それは私を気遣ってもそうした。と、いうようにもとれる。
奥様。あなたはほんとうにお優しい方です。
「奥様、お茶をお入れしましょう」
「ん」
「はい。本日はハーブティーにしようかと」
私はレイア様の専属メイド。
十歳の時、孤児院に城で働かないかという知らせがやってきた。
私がいた孤児院は、国が経営しており、院長は王族の親戚と聞いている。
そして、その知らせが来たとき、早く自立したかった私は名乗りを上げた。
立候補したのは、私だけ。
そして、私はとても可愛らしい天使のような、当時五歳の第二王女と顔合わせをした。
レイア姫は、常識を越えためんどくさがりだったが、私は楽しかった。
そして私は、一生仕えようと心に決めたのだ。
とても可愛らしく賢く優しい天使のような姫の虜となっていたのだ。
それは今でも言える。
だから私は、一生仕えることを辞めない。
そう、例え・・・・
「結婚してくれ、サーヤ」
「ほんとしつこいですね、あなたは。何年も諦めずに」
「サーヤがいいと言ってくれるまで、それこそ死ぬまで俺はプロポーズを続けるぞ」
「はぁ、もう。わかりました」
「そう、俺は諦めない! なんせお前しか目に入らないのだから。って、今なんと?」
「だがら、わかりました。と言ったんです。けど、私は奥様の専属メイドは辞めません。結婚して子どもたちができたとしても辞めません」
私はメイド。
レイア様の専属メイドとしてのプライドは捨てられない。
それでもいいなら、結婚しましょう。
「いよっしゃあぁぉぁぁ」
レイア様、あの時レイア様が言った通り、これも恋の一つだったのかもしれません。
トムとのやりとりは楽しかったけど、なにか物足りなくなったのです。
「うるさいですよ」
「サーヤ、愛してるぞ!」
レイア様、私に子供ができたら、レイア様のお子様のに仕えさせてもいいですか?
レイア様は、結婚してから一年弱で子供を授かり、今現在は三人目妊娠中です。
子育ては、必要なことはして、あとは私達がお世話をしてます。
乳母を雇わず、レイア様がめんどくさいと言いつづ母乳をあげた事は驚きですが。
「最低三人か・・・・」
「ん? 何か言ったかい?」
「何も言ってないから、報告しにいきますよ」
「そうだな!」
お子様に仕えさせるなら、最低三人は産まないといけない。
年齢的に大変かもしれないが、頑張ろう。
レイア様と、可愛いお子様のために。
私はサーヤ。
レイア様の専属メイドだ。
使用人の一人、トムと結婚して、今はうまくやっている。
とても楽しい。
そして、私は身籠もった。
充実した日々を過ごしている。
「サーヤ、よかったね」
「はい、奥様」
旦那がいても、サーヤの一番はずっとレイアです。