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お姫様は面倒くさがり  作者: 夢月なつか
3/9

説得

誤字脱字等ありましたらご指摘お願いします。



 ライナーは、レイアについて、国王夫妻に許可をもらい(すんなりいった)まずは父親を説得することにした。


「父上、リーデンの第二王女についてなのですが」


「ん? レイア姫のことか、彼女がどうかしたのか?」


「俺は、彼女を妻にします!」


 息子の突然の告白に宰相は一瞬かたまり、


「あ、あぁ、まぁ落ち着けライナー。レイア姫は病弱なのは知っているな?」


 宰相は、レイアの美しさを知っていた。

 見たのはだいぶ前だが、その時すでに圧倒的な美しさに可愛らしさを備えた絶世の美少女だった。

 容姿も身分も問題ないが、ただ一つ、易々と賛同できない理由が、病弱なことだ。

 子を産むとなれば、病弱な身では母子共に危険が及ぶし、もし一人目を無事出産しても二人目は難しいだろう。

 彼には息子はライナーだけであり、あとは娘が三人いる。

 後継ぎとして、時期宰相としてライナーは申し分なかった。

 そんな息子の頼みはなるべく聞いてあげたいが、これに関しては考え直すように言わなければならなかった。


「お前を今後支えてくれる家族になるのには・・・・」


「天使・・・・姫は病弱ではありません」


「・・・・ん?」


 聞き違いだろうか?と宰相は首を傾げた。


「彼女は、病弱ではありません。面倒くさがりなだけです! アルフレッドから聞いたので間違いありません。その後国王夫妻にも同じ事を言われましたし」


「んん?」


 ますます聞き違いだろうか?と宰相はさらに首を傾げた。


「父上、そんなに首を傾げると痛めますよ」


 ライナーに言われて、頭の位置を元に戻すが・・・・


「ライナーよ、もう一度いってくれるか?」


「耳が遠くなったのですか? 姫は病弱じゃなくて面倒くさがりのため部屋から出てこないみたいです」


 宰相はライナーの言っている事を理解して


「いや、それだめじゃ・・・・」


「父上、姫は面倒くさがりですが、やることは(最低限)やりますし、やればできる賢い方だそうです」


 ライナーは、表情でを、全く変えず、真剣に淡々と言い放つ。

 宰相は、面倒くさがりとか、やればできるって普段やらないってことじゃ?などぼそぼそとつぶやきつつ


「だとしても、認めるわけにはいかん。姫が、本当に面倒くさがりだとしたら、リーデンとは違い我が家では隠し通せぬ」


「父上! 私は彼女を愛しているのです! 誰よりもなによりも! 父上の屍を築いてでも!!」


「らいなぁぁぁぁぁ」


 宰相の悲痛な声が響き渡った。


 それから、宰相は涙を流しつつデメリットが大きいことを理由に拒否をした。


 だが、ライナーは諦めてはいなかった。

 元より、いきなり説得できるとは思っていなかった。

 父親である宰相の説得は後回しにし、やはり外堀から埋めるか。と、使用人達から説得していくことにした。

 使用人達は、命令なら応じるだろうが、それでは意味が無いので、しっかりと理解してもらって賛同を得なければならない。


 ライナーの長い説得の戦いが始まった。

 一人一人に懇々とレイアへの愛を語りまくった。

 説得というより、ライナーが言いたいだけだったのだが、使用人達はそれで効果がある。

 生粋の貴族と違い、こういう恋愛は使用人達を熱く燃え上がらせた。

 その結果、レイアが面倒くさがりなことを話しても「それを含めて愛されてるのでしたら異論はありません」と、興奮気味に賛同することになっていた。


 それを洗脳と呼ぶのかもしれないが、そんなこと思う者はいなかった。


 そうして、使用人達を洗脳ではなく説得した結果、レイアを若奥様とすることが、使用人達の間で決まった。

 ここまでするのに、二年かかってしまった。

 使用人達は数も多く、休みの人もいる。

 さらに、ライナーも忙しく、説得内容も長い。

 そのため、多くの時間が掛かってしまったのだった。


 そして、次は家族である。

 祖父母や母、姉や妹を説得し、最後に父親。

 まずは、身近な存在である姉妹を説得することにしたした。

 まずは一つ上の姉リリー。彼女は、レイアについては噂になっている、病弱の天使のような美少女としか知らない。

 そんな姉に、まずはレイアに対しての想いを告げる。


「あら、三年くらい前から様子がおかしかったと思ったら、やはり恋の病だったのね。しかも、相手は第二王女様。素敵じゃない」


「やはり、おかしかったですか」


「ええ、妹達と『恋の病だよぜったい、相手誰かな?』とよく話してたわ」


 実に楽しそうに姉はいう。

 ライナーは、そんな姉に対して、レイアの真実を伝えた。

 すると・・・・


「うーん、天使と言われる絶世の美少女である第二王女様が面倒くさがり・・・・しかも筋金入りねぇ」


 軽く目を閉じ、考え込む。

 そして、数十分後・・・・


「実際どれくらい面倒くさがりなのかわからないからなんとも言えないけど、まぁいいんじゃない? 元々病弱って話で通ってるし、本当のことが外部に漏れないように徹底すれば。跡取りは養子って選択肢もあるしね」


 うふふと、微笑んで言った。

 反対されるかと思っていたライナーは、


「あっさり認めるんですね、姉上」


「ふふ、だってあなた、絶対諦めないでしょう?」


「もちろんです。俺には彼女しか考えられない」


「なら頑張って父上と母上を説得しなさい。妹達は

大丈夫だと思うわ」


 確信に満ちた姉の言葉にライナーはやや疑問に思いつつ、今度は妹達のところへ向かったのだった。


 ライナーの妹達は七つ下の双子である。

 いつも二人一緒にいる双子の妹は、庭の花を見ていた。

 ときおり、楽しそうな笑い声が聞こえる。

 そんな双子にライナーは、話しかけた。


「マリー、エリー」


「「あ、ライナー兄様!」」


 振り返る双子は、見分ける特徴の違いが一つも無い程瓜二つであった。

 双子のマリーとエリーは、とても仲良しなので、常に同じ服や物を身につけているため、使用人達は区別がつかず、家族のみが分かっていた。

 なぜ、わかるのか?と問われれば、なんとなく。と言うのだから家族の絆的な不思議要素があるのかもしれない。

 もっとも、常に一緒なので、使用人達も対応にはあまり困っていなかった。


「ちょっと話があるんだが」


「「片想いの方についてですね」」


 同じ声が重なる。

 合わせたわけでも無く、タイミングも言葉も完璧なのだから、双子マジックである。


「む、よくわかったな」


「「使用人達はみんな知ってますよ、相手は第二王女で面倒くさがりって言ってました」」


 ライナーは、納得するが、そうすると姉のリリーはどうだったのか?と首をかしげた。


「「姉様も知ってたはずです。けど、本人である兄様からちゃんと話を聞いて、それが本当かどうか確認したうえで、結論を出したかったのだと思います」」


「なるほど、それもそうだな」


「「ですが、私達は兄様の決めた相手ならば歓迎致しますので、父上と母上の説得を頑張って下さい」」


 全く同じ笑顔を見せながら、マリーとエリーは、最後まで同じタイミング、同じ言葉を言ったのだった。

 彼女達は九歳の子供だが、よくできた双子であった。

 

 そうしてライナーは、残る家族、父と母の説得を開始した。

 結果的には、母親は、メリットとデメリットの狭間に揺れて悩んでいたが、すでに使用人一同と娘三人が賛同していると聞き、


「まぁ、そこまで本気なら・・・・仕方ないですね」


 と、許可をだした。

 最初に、周りから賛同を得たことは正解だったようだ。

 そして、残る父は・・・・


「だかな・・・・」「しかし、」「やっぱり・・・・」などと、中々説得に応じず、そうこうしているうちに、さらに月日は流れ・・・・


「父上!」


「はぁ、お前の熱意には負けた・・・・わかった。レイア姫の相手はまだ決まっていないようだから、リーデン王に申し込みをしておこう」


「ありがとうございます!!」


 はじめてレイアを見てから五年目にして、やっと婚約を申し込める事となった。






 リーデン国の第二王女であるレイアは、着飾って佇んでいた。

 久しぶりの家族そろっての食事の時に言われたのは・・・・


「お前の婚約者が決まった。相手はスカーレットの宰相の子息であるライナーだ」


「こん、やくしゃ・・・・めんどくさい」


 ボソリと言った言葉は、誰にも聞き取られなかったが、レイアがどう思っているのかは、ここにいる者は全員分かっていた。


「レイア、面倒くさいなどと思っても必要な事なのだぞ。しかも、お前が面倒くさがりだと知った上で申し込んで来たのだ」


「・・・・!」


 レイアは驚いた。

 ずいぶん前から両親が、相手を見つけようと四苦八苦していたのは知っていたレイアだが、本当に見つかるとは思ってなかったのだった。

 しかも、真実を知ったうえで・・・・

 そこで、アルフレッドが話し出す。


「ライナーは、俺の友人でな。お前のことを伝えたのは俺だ。あいつはレイアのことが本当に好きなんだよ。まさか家族全員どころか使用人達まで説得するとは思わなかったけどな」


 好きなどという言葉では、足りないほどライナーのレイアへの愛は重いが、それを言うとさらに面倒くさがられるので、黙っていた。

 レイアは、ため息多く食事を進めつつ、


「んー」


「あら、レイア。いくら面倒くさいと言っても、今日の昼来るのですから」


「!!」


 母の言葉に思わず手を止める。


(今日の朝食の時といい、急すぎる! 逃げる口実もなにもできないじゃない)


 それが狙いで、レイアにだけは直前に言ったのだった。


(サーヤは絶対しってたはず・・・全然気付かなかった)


 専属であるサーヤは、なんでも完璧にこなす、言わばスーパーメイドだった。

 なので、隠し事をしていても気づかれるような事はしないので、レイアが分からなかったのも仕方の無い事だろう。


「はぁ、(面倒くさいけど)わかりました・・・・」


 おそらく、家族は逃がしはしないだろう。


「レイアは、縁の無い話だと思っていたようだけど、そんなことありえないのですからね」


 にっこりと、素晴らしい笑みで言った姉、レイナの言葉にレイアはうなだれた。


家族は必死なんです

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