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お姫様は面倒くさがり  作者: 夢月なつか
1/9

突然な出来事

短編を連載にしてみよう。と、いうわけで挑戦。

誤字脱字や、言い回しとかおかしくね?的な事がありましたらご指摘お願いします。


 きらきらと、カーテンの隙間から光が差し込む。

 その光は筋を作り、天蓋付きのダブルサイズのベッドの主を照らした。


「んぅ・・・・」


 ちょうど光が当たって眩しかったのか、ベッドの主は布団を頭までかける。


 コンコン


 一人部屋にしては広すぎる部屋の扉がノックされた。

 しかし、ベッドの主は身動きしない。


 ガチャ


「姫様、おはようございます」


 入ってきたのは、一人のメイド。

 本来なら、部屋の主の返事を聞いてからなのだが、この部屋の主の場合は特殊なので返事を待たず入る事が許されている。

 彼女はスタスタと部家の中を横切り、カーテンを開ける。

 朝の日差しが部屋の中を照らし出す。


「起きて下さい」


「面倒くさい」


 布団の中から即答するのは、ベッドの主。

 姫と呼ばれた彼女は布団にもぐり込んでいるが、起きていたらしい。


「起きて下さい」


「んー」


「嫌だではありませんからね、さぁ」


 ばさぁっ


 メイドが布団を剥ぐ。

 ベッドの主は、長すぎるピンクブロンドの髪を引きずりながら顔を上げた。

 髪の隙間からは鮮やかな赤い瞳がのぞき、薄いピンクのネグリジェから伸びる白く細い足と腕を動か体を起こす。

 日の光に当てられキラキラと輝きを放つ姿は天から舞い降りた天使のようで、美しく可愛らしい。

 姫と呼ばれたベッドの主の少女は、ベッドに座り込む形となり、「はぁ」と大きくため息をつく。

 その姿も様になっているのだが、メイドは特に思うこと無く、冷ややかに言った。

 専属メイドとして仕えて長いので慣れているのだ。


「早く着替えますよ」


「面倒くさい」


「お召し物は何にしましょうか」


 少女の言葉をスルーしつつ、メイドはクローゼットの中にあるドレスを吟味する


「これなんかどうでしょう?」


 ファサァとドレスを広げて見せる。が、


「・・・・」


 少女は再びベッドの主となっていた。

 ひたすら面倒くさいを繰り返し、やる気の感じられない少女だが、どんな行動を取っても美しく可愛らしいく見えるのだから詐欺だと言いたいメイドだった。

 もっとも、これもいつも事なので、メイドは無言でドレスをハンガーにかけ、椅子をベッドの傍まで持ってくる。


「姫様、ご用意できましたので、こちらに来て下さい」

 

「ん、」


 ベッドの主となっていても、寝ているわけではない。

 ただ起きているのが面倒くさくなったので横になったのだろう。

 そんな少女は、のっそりと起きて、ゆっくりゆっくりベッドの端まで四つんばいで移動してくる。

 そして、近くにある椅子に腰掛けた。

 ピンクブロンドの髪が無造作に床に広がるが、少女は気にする事はなかった。

 そのかわり、メイドが髪をまとめて抱える。

 そして、髪を抱えながら、椅子のストッパーを足で外した。

 そう、この椅子には小さな車輪がついており、座ったまま移動できるのだ。

 

 カラカラカラ


 髪を抱えたメイドが、椅子の背を押しながら、大きな鏡のある立派な化粧台の前に行く。

 椅子のストッパーをかけ、ハンガーに掛けたドレスを持ってきた。


「さ、着替えますよ」


「ん」


 椅子から立ち上がった主のネグリジェを手早く脱がせ、ドレスを着せていく。

 とても手際がよく無駄も一切ない。

 あっという間に着替えが終わる。


「よくお似合いです」


 今日、メイドが選んだのは、淡いオレンジ色のドレスだった。

 腰には白いレースで縁取られた山吹色の太い紐が巻いてあり、後ろで大きなリボンとなっている。


「ん」


「満足いただけたようですね。では髪を整えましょう」


「ん」


「面倒くさい。と言われましてもやるのは私ですから。毎朝毎朝懲りずに・・・・」


 最後の言葉は呟くように言うメイド。

 不思議なことに「ん」しか言っていない彼女と会話ができているが、これは専属として付き合っていく間に、自然と言っている分かるようになっていたのだった。

 あと、彼女の「ん」と会話出来るのは彼女の母親だけだ。

 メイドは、櫛を手に取り、ピンクブロンドの美しい髪の毛を梳かして行く。

 床に着くほど長い髪の毛は、寝起きにもかかわらず絡まる事無く整えられて行く。

 丁寧に櫛をいれていくメイド。そして座って微動だにしない少女は・・・・


「座ってるの面倒くさくなってきた」


 ぼそりと呟いていた。が、それを聞いたメイドは、いつものことなので、特に反応しない。

 そして少女は、面倒くさくなってきたと言いつつ、姿勢はそのままにしていた。

 なぜなら、ここから立ち上がって行く方が面倒くさいからだ。

 

「サイドに大きめのおだんごを作り、髪を流れるように垂らしてみました」


 大きめのおだんごにしても、そこから伸びる髪は腰の位置より下にある。

 仕上げにと、メイドは暖色系の花飾りをおだんごにさしていった。


「花の妖精のように可憐です。姫様」


 少女はより美しく、より可愛くなり、メイドは自らの出来栄えに満足した。


「さて姫様、本日の朝食は食堂です。陛下からお話があるそうです」


「・・・・ん?」


「聞いてないよ?と言われましても、今言いましたから。さぁ行きましょう」


「めんど「大事な話みたいですので行きましょう」


 何を言ってもダメですよ。と、メイドは言外で語っていた。

 少女は、大きいため息をはき、椅子から立ち上がった。


「ん・・」


「聞き入れてくれて嬉しいです」


 基本的に少女は、食事は部屋で摂っている。

 家族と食事をする専用の食堂まで行くのが面倒くさいからだ。

 そして、それを家族も許していた。

 少女に対しては、すごく甘いからだ。

 だが、今日は呼び出された。


(なんか、すごく面倒なことになりそうな気がする)


 そう思うと、とても憂鬱な気分だが、たまには家族と食事もいいかと、気を取り直し・・・・


(あー、めんどくさい)


 どうしても、面倒くさいと思ってしまう少女だった。






 リーデンという国がある。


 その国の国王夫妻には、息子と娘二人がいる。


 そして、二人の娘のうち、次女である第二王女は、絶世の美少女と言われていた。


 その姿はまさに天使。


 成長したら女神のような美女になるだろうとまで言われている。


 が、その姿を見た者は滅多にいない。


 なぜなら、第二王女は生まれつき体が弱く、部屋から出て来ることができないからだ。

 

 部屋からでたとしても、そこは王族専用の区域にあるため、やはり見ることは難しい。


 とても病弱な天使のような姫君。


 それが、第二王女であるレイアの評価だった。


 が、身内である国王夫妻や兄姉、そして一部のメイドや乳母は知っている。


 彼女は、筋金入りの、むしろ病気?と思えるほどの面倒くさがりなため、引き篭もっているのだと。


 病弱というのは、面倒くさがりと言うのを隠すための表向きの理由だったのだ。


 ただ面倒くさがりなだけなら問題だが、レイアは賢かった。


 王女としてやらなければならない様々な勉強はやっている(部屋で)


 そして、国王夫妻は娘に甘かった。


 兄姉も甘かった。


 だから、レイアはほとんど部屋から出なくてもよくなったのだ。


 ちなみに、両親や兄姉は会いに来るし、たまに食事も部屋で一緒にしている。






「おはようございます」


 少女の、レイアの専属のメイドは後ろに控えている。

 レイアは久しぶりにこの場に来ていた。


「おお、レイア、なんと可愛らしい!」


「おぉ、まさか来るとは・・・・」


 父である国王は、娘の姿にでれでれで、兄であるアルフレッドは驚いていた。

 が、その後で「やはり我が妹は見た目は天使だな」と頷く。

 ちなみにアルフレッドは、素直でないだけで立派なシスコンである。


「おはよう、レイア。ご苦労様だったわね、サーヤ」


「とてもよく似合っているわ、ほんと可愛いわねレイア」


 母である王妃は、専属メイドを労い、姉のレイナはにこにこと妹を褒めた。

 レイナはすでに結婚しているが、今は帰省中だった。


「座りなさいレイア」


「はい」


 レイアはやや気怠げながらも優雅に座る。

 

「さてレイアも十四歳になるな、明日婚約者候補が来るからしっかりな」


「・・・・」


 レイアは周りをみる。

 母も兄も姉も、専属メイドのサーヤも、給仕も頷いていた。

 どうやらレイア以外は皆知っているようだった。


「すごく面倒くさいから嫌です」


「はっはっは、すまんレイア、今回は聞けんのだ」


 国王は、すごく疲れたような、しかし喜びを感じさせる声で言った。

 その様子にレイアは、ため息をつき、


(あぁ、やっぱり面倒くさいことになった)


 そう思った。


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