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Repeat "one"  作者: 雪隠
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第1章 夏の一年 2 魔力検査

「今だと丸山製の片手剣安くなってるよー」


「熱々の鳥焼きはいらんかねー」


「今ならいい魔力石が入ってるよー」


炎と公園を出た俺は魔力検査が出来るという店に向かっていた。


「結構賑やかな通りだね」


「まぁここは一番大きな通りだからね」


「そういえば、さっきの魔石って?」


「誰でも投げると魔法が発動する石だよ。自分が使えない魔法が使えるけど、威力は低いのだね」


誰でもか……。


「多分俺は魔法使えないだろうからお世話になりそうだ」


「いやいや、案外凄い才能が眠ってるかもよ?」


「そうだと嬉しいけどねぇ」


彼女と色々話をしているうちに、店の前に大きく魔と書かれた看板があるところについた。


「ここが魔力検査ができるところ?」


「うん、ここだよ」


店の中に入ると占い部屋のようなものがいくつも並んでいた。


「どこに行けばいいの?」


「値段も質も変わらないからどこでもいいよ?」


「値段!?」


お金なんて一銭も持ってないんだけど……。


「持ってないのはわかってるから大丈夫大丈夫。ここは私が出すから」


「いやでも……」


「後でバイトと住むところ探しに行こうね」


そう言うと彼女は俺を引っ張って、並んでいた部屋の一つに入っていく。


「いらっしゃい。あ、炎ちゃんじゃない」


「菫さんお久しぶりです」


「今日はどうしたの?」


「ちょっと彼の検査をお願いしたくって」


菫さんと呼ばれた人が俺の方に視線を向ける。


「はじめまして、菫です。その歳だから魔力検査はやったことあるわよね?」


「四季要と言います。いえ、ちょっと初めてなもので……」


「初めて?色々説明もするからそこにかけてくれる?」


俺は菫さんの向かい側に座り、俺の隣に炎が座る。


「じゃあまず魔法はわかる?」


「すみません、そこからお願いします……」


「炎ちゃん、彼どうしたの?」


「私もよくわからないんですよね〜」


「炎ちゃんらしいけど……とりあえず魔法について説明するわね」


「お願いします」


「ちょっとややこしいからだいたいわかればいいわよ」


「まず、魔法は基本は火、水、風の三属性あるわ。火は風に強くて、水は火に強い、風は水に強い。ここまではいい?」


三つ巴ってわけだな。


「大丈夫です」


「各属性にもS〜Dのランクがあって、使用者の中でSは1%、Aは10%、Bは20%、Cは30%、Dは40%くらいずついるわ。使えば成長していくけど、Bあればいいほうね。さっき有利不利を教えたけれど、ランクが上ならば不利な魔法とも互角になったり、上に出られることもあるわ。

そこにいる炎ちゃんは水と風は使えないけれど、火だけはSランクよ。」


それを聞いて炎の方を見ると、


「にへへ〜」


嬉しそうに笑っていた。


「どちらかというと多くの属性を使えるより、ランクが高い属性がある方が評価されるわ。」


「炎ってすごいんですね」


「炎ちゃんはほんとにすごいわ。でも、最近噂の女王は三属性ともSランクらしいし、世の中怖いわね」


「桜花はほんとにすごいんだよ!」


「桜花?」


「うん、女王の名前」


「桜花か……」


「そういえば今日の夕方に隣の国の姫様と模擬戦をするって話だったから、後で二人で見に行ってみたら?」


「そうなの!?要、行ってみよ?」


「いいよ、俺も気になるし」


「やった」


炎が小さくガッツポーズを取る。そんなに見たかったのか。


「とりあえず魔法の説明続けちゃうわよ」


「はい、お願いします」


「基本の三属性の他に特殊魔法ってのもあるのよ」


「特殊?」


「三属性に分類されない魔法。自分の魔法を強化する魔法、身体を強化する魔法、動物や他言語を喋る相手と会話する魔法、女王は未来を見る魔法を持ってるなんて噂もあるわね。さっき言った姫様は氷が使える魔法だとか。戦闘に使うものから日常生活で使うようなものまで沢山あるわ。ただ、特殊魔法は誰でも持ってるわけじゃなくて、だいたい1割くらいの人間が使えるわね。炎ちゃんは残念ながら特殊魔法には恵まれなかったみたいだけど」


「まだ出てないだけだもん」


炎が少しふてくされたように言う。


「まだ?」


「特殊魔法は成長はしないけれど、発現は人によって異なるわ。ただし、一人ひとつまでしか特殊魔法は持つことがないわ」


「なるほど、まだ炎が特殊魔法を使えることもあるかもしれないと?」


「あるかもしれないけれど、だいたいはみんな生まれついのよね……」


「なるほど……」


炎から落ち込んでいるようなオーラが伝わってくる。


「じゃあ、君の魔力検査しちゃいましょうか」


「あ、お願いします」


そう言うと菫さんが何も無い空中から口のないビンみたいなものを取り出す。


「今のは?」


「これが私の特殊魔法。エアポケットって呼んでるわ。ある程度まで物をしまえるポケットが作れるの」


「便利な魔法ですね」


「便利なんだけど、昔は派手なのが欲しかったわ」


そのビンを俺に渡してくれる。


「これが検査ビン。力を込めて振ると光のたまが出てくるわ。火属性は赤色、水属性は青色、風属性は緑色、特殊魔法は白ね。三属性は1~5個出てきて、数でランクが決まるわ。特殊魔法は1個だけ。全部出ないこともあるけどね。特殊魔法は検査でどんなものまでかわからなくて、本人しかわからないものなんだ」


「1個くらい出てくれればいいんだけど」


「なんだかんだ出るから平気だって」


炎が励ましてくれる。


「じゃあ振ってみて」


「はい」


目を瞑って力を込めて振ってみる。


……。


「え?」


「は?」


目を開けてビンを見てみると、沢山の色の光のたまがたくさんあった。


「ちょ、ちょっと貸して!」


炎にビンをひったくられる。


「赤が1.2.3.4.5……」


「え?」


「Sかぁ久しぶりだなぁ」


「青が1.2.3.4.5……」


「……」


「え?ほんと?数え間違えてない?」


「緑が1.2.3.4.5……」


「なんかすみません」


「女王と同じ!?炎ちゃんほんと!?」


「白が1……ん?2?」


「珍しいんでしたっけ?」


「ちょっと炎ちゃん貸して!」


菫さんが炎からビンをひったくる。

「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17……」


「要!私と結婚しよ!」


炎が抱きついてくる。


「え?」


「もう絶対離さないよ!」


「炎ちゃん頑張って!」


「菫さんまで何言ってるんですか」


「だって要くん顔も整ってるし、魔法の才能も将来有望だし」


「はぁ」


いきなり君には魔法の才能ありますよ!って言われても困るし、実感がわかない


「とりあえず検査結果を紙に書いちゃうね。これさえあればこの国では身分証明にもなるから」


「わかりました、お願いします」


少し落ち着いたらしい炎が離れる。


「でもほんと要凄いって!せっかくだから一緒に魔法学校に通わない?私もこの春から通うんだけど」


「ちょっと興味はあるけど、そんなお金用意できるかな……」


「お金なら大丈夫だと思うよ。要の魔法なら学校からお金が出ると思う。私ですら出てるし」


「それなら通ってみたいかも」


一体、魔法学校とはどんなところなのだろうか。


「終わったよ、要くん」


そう言って菫さんが検査結果の紙をくれる。


そこには、


火属性 S

水属性 S

風属性 S

特殊魔法 あり (二種類持っている可能性あり)


と書かれていた。


「特殊魔法に心当たりはある?」


菫さんに尋ねられ考える。


特殊魔法……。


ん?


さっきのは特殊魔法だったのだろうか?


「一応一つだけ」


「心当たりがあるのね。どんなの?」


「え?要特殊魔法に心当たりあったの!?」


「はい、さっきのことなんですけど……」


俺はさっきの時間が戻ったような経験のことを二人に話す。


「短時間の時間遡行……?」


「さっきのただぼけてたわけじゃないのかぁ」


炎にさらっと失礼なことを言われたがスルーする。


「今までこういう人もいたんですか?」


「私は知らないや。でも、女王も案外同じ能力だったりしてね」


「女王……」


「要、今から桜花のところ行ってみない?多分少しなら時間取ってもらえると思うから」


「じゃあ炎、お願いしていい?」


「うん!」


また炎が大きく笑ってくれる。彼女の笑顔は向日葵を連想させるような明るさだ。


「特殊魔法は多分もう1回再検査が必要になっちゃうと思う。2つなんて今までいなかったからね。今、魔法学校に通うって話してたよね?それならそこで再検査してみるといいよ」


「わかりました」


「菫さん、これ代金です」


炎が菫さんに紙幣のようなものを渡そうとする。


「今回はいいよ」


「でも」


「いや、今回は面白いものが見れたしね」


炎は少し迷った後、


「ありがとうございます」


と頭を下げた。


「ありがとうございます」


と俺も続く。


「二人ともいいって。また何かあったら相談でもしに来てくれよ」


そう言って菫さんは俺たちを送り出してくれた。

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