序章 朧気な人生
俺は確かに運が悪かった。
受験ではA判定のところに落ち、1%で最高レアが出るソシャゲのガチャは500回引いても出ない、当然あたり付きの駄菓子で当たったこともなく、席替えでは何故かいつも一番前のど真ん中。
そんな俺にも一つの幸運が巡ってきた。
つい先月、彼女ができたのだ。
寒明朧。
綺麗な黒の細長い髪を腰まで降ろし、顔は日本人形のように整っている。手足も細くて長く、胸がやや小さいものの(本人曰くC。恐らくB)、綺麗なシルエットをしている。
あまり積極的な性格ではないが、とても聡明で、きちんと話す時は話し、友達も多く、クラスでは人気がある。
何故そんな彼女が俺と付き合っているのかと言うと、特にこれといった何かがあったわけではなかった。
ただ、家が近くて帰り道が同じで、入った部活が同じ、席も近くになることが多かった。
そんな積み重ねの中で俺は彼女が気になるようになり、想いを告げた。
彼女は特に悩んだ様子も見せずに了承をしてくれ、俺たちの新しい関係が始まった。
しかし、それもさっきまでの話だ。
クリスマスイブの夜、デートしていた俺たちは無差別な殺人事件に巻き込まれた。
犯人が朧を誘うとした時、朧の前に出て俺は刺されて死んだ。即死だったと思う。
本当に運がなかった。
でも、俺にしてはかっこつけられた最期だったんじゃないかなぁなんて思ったりもして。