とくぞうはおうとはなしあった!
「三神?この世界は主神が創造したのではないのか?」
「いや、主神が持ってるのはこの世界の種族を創造する権限だけ。私と主神と冥神はこの世界に最初に主神によって産み出された神族で、私がこの大地と海を作り、冥神はこの世の全ての命の終わりを担当したの」
アキレウスは驚いた。確かに自分の母親は海の神というとても広い範囲を担当している神ではあるが、世界の創造に関わっているというのはスケールが大きすぎる。もっともこの世界には神話という概念が無いので知らないのもやむない事であるが。
「それでその冥神は何をしているのだ?」
「それは分からない。でも彼は主神の方針には賛同していない事は確かね。そして何かしらの策を講じている事も」
海神はそれ以上の説明をしようとはしなかった。アキレウスも詮索はしない。
「……わかった。母上がこれまで通りに海の加護を授けてくれるとわかっただけでも心強い。今日はこれで失礼する」
アキレウスは踵を返して帰って行こうとした。その背中に海神が声をかけた。
「お前は私が愛する人との間に産んだ子。主神の様に道具を作りたかった訳じゃない。それだけは覚えておきなさい」
アキレウスはその言葉におう、と短く答えた。
クゾーが連れられて来たのは王の居住ではなく森の中にある石造りの小さな小屋だった。城を空にしてエインセルを配備していた事から考えるとやはりこちらの作戦は王に筒抜けだったようだ。
(エコーもいない、ドヴォルザークもいないで作戦が知られているとなると、王には何かしらの能力があるのか……?)
エインセルは戸を叩き、中の者と何やら話してから戸を開けた。中には椅子に座った王らしき人物と、縛り上げられたドヴァ達がいた。
「やあクゾーくん。直接会うのはこれが初めてだね。何ももてなせる物が無くてすまないね」
王は色白で金髪で顔が整ったごく普通の人間の男の姿をしていた。
「交渉に持ち込むって事は、何か要求したい事があるんだろう?俺が死ねばいいのか?」
「いやあその逆だよ。君には生き残って貰いたい。何故なら君は僕とよく似てる。この世界の人間族や他種族なんかに興味は無いが、君は別だ。全く同情すべき境遇だよ」
この世界?この世界という事は王も元の世界から来たのだろうか。
「僕の目的はねえ。手前勝手な神族達が支配してる世界を終わらせたいんだよ。そして僕らかわいそうな者たちが支配する側に回る新しい世界を作りたいんだ。そうだ、あの主神の息子なんかも是非加わって欲しいね」
話が見えてこない。王だけが全てを知り、クゾーは何も知らない。その格差が会話を不成立にしていた。
「手前勝手なのはお前の方だろ……。どれだけ多くの他種族を虐殺して来た?戦わせるために命を生み出したり、人を狂った神に仕立て上げたり……。お前の振る舞いは何だってんだ!」
「だからさあ。それは君が真実を知らないからだってば。知ればこんな世界は主神の作った落書きに見えてくるよ」
王は余裕たっぷりに笑みを浮かべている。クゾーはいい加減焦れてきた。
「お前の言う真実って何なんだよ!主神がこの世を創造した事は知ってる!この世で生きにくい種族もそりゃいるだろ!でもお前みたいな方法が本当に正しいのかよ!理不尽に遭っても、馬鹿みたいに思えても正攻法で誰も傷つかないやり方ってのが本当に強い奴の取る方法なんじゃないのか!?」
それは自らの人生の事。そしてオークになってからその流儀を引き出した思考。さらにはリリアムの選んだ道。クゾーの喉からそれらが結晶となって迸った。
「やれやれ。どうやら言って聞かせた方が早いかな。クゾーくん、君はね」
そこから先は無かった。突如として現れた光り輝く槍に王は身体を貫かれ、一拍置いて小屋の屋根が吹き飛んだ。
「な……?」
それは外から来た一撃だった。槍が飛んできた先をクゾーが見ると、機械で出来た死神のようなフォルムの者がそこに漂っていた。
「喋りすぎだ。所詮人間でない者は信用ならん。こんなオークを仲間に引き入れようとするなんてな」
オーギュストだった。しかも以前のように機械的な言葉ではない。
「豚神め。お前を屠るのはこの私だ。そしてこの世界に君臨するのもな」
死ぬ。このままではここにいる全員が死ぬ。それをクゾーは察知した。
「リリアムさん……汚れ役を引き受けると言ったその覚悟、試させてもらいます……」
先ほどの叫びを、熱を、誓いを心に充填していく。
「リリアムさん植物で皆を守って!!」
リリアムはその言葉に頷き、木を生やした。クゾーはそれを見て笑みを浮かべた。自分の役目はこれで終わりだ。
「Orc-Bom!!!!!!」
クゾーの身体から閃光が迸るのと、リリアム達がその場から離脱するのは同時だった。
徳三は自身にとっては2度目の経験である『死』を迎えた。
28話へ続く
いつもご愛読ありがとうございます
まだもう少し続きます




