とくぞうはさくせんかいぎをした!
主な戦力
クゾー:流儀を硬質の物体に変化させ、武器を作り出す。元々オークは流儀の容量が非常に高い種族だが、低い知能と強い欲望のせいで、このような使い方ができる個体は他にいない。
リリアム:エルフから豊穣神に昇華した。豊穣神として森や大地に命じる形で攻撃が可能。エルフとしての元々保有していた流儀も使える。
ドヴァ:ドワーフ族に特有の物資加工流儀を使う。とても便利だが材料が無ければ機能しないのが難点。
ダリア:エルフ族、相手の心にある善性を優位にする流儀を持つ。洗脳に近い事が出来るが、相手が心底から悪に染まっている場合は発動出来ない。
アキレウス:海神と人間のハーフ。高い戦闘力と他の種族の流儀への耐性、水の中で加護を受ける事も出来る。
ヘラクレス:主神と人間のハーフ。ケンタウロスに育てられていた。アキレウス同様戦闘力や耐性がある。加護を受ける事が出来るかは不明。
エインセル:相手が名乗ると相手の姿になる事ができる。また相手がエインセルの名を名乗ると相手と自分がエインセルの姿になる。ドヴォルザークとヘンプが産み出した人工の精霊。
クゾーは朝食の席でヘラクレスが失踪した事を皆に話した。
「くだらん。今更自分が何者であるかなど、自分は自分ではないか。私は人間族の振る舞いがおかしいと思うから人間族と戦うのだ。半分人間族である事と人間族と戦う事は矛盾しない。己が信念に従っていればそれでいいのだ」
アキレウスは冷たく言い放った。エインセルは隣で何度も頷いている。自分もアキレウスに存在を認めて貰ったという経緯があるからだろう。
「まあヘラクレスの場合は父親がこの騒動の首謀者である主神だし、フレイに言われるまで自分の父親を知らなかったんだし」
ここにいない者をこき下ろすのも気が引けてクゾーはヘラクレスを擁護した。実際、彼の気持ちは分からないでもなかった。自分が何者なのかという点では、クゾーも複雑な事情を抱えているからだ。
(結局主神は何も知らなかった。一体誰が俺をこの世界に連れてきたんだろう。そんな事が可能な人物なんてそれこそ主神くらいしか思い浮かばない)
クゾーの考えはそこで止まった。元々頭が良いわけではない。自分の常識の及ばない世界の事など想像すらつかない。
「ふむ。戦力が1人減ってしまったが問題無いだろう。元々物量ではこちらが圧倒的に不利なんだからな。一晩考えたのだが、こちらから王国に打って出るというのはどうだろう?戦力で劣る我々は、奇襲によって機先を制するのが最も有効だ」
「ちょっと待てよ。それってエルフ族の流儀に反するんじゃないのか?」
クゾーはすぐさま反論した。彼としてもリリアムを守ると誓ったばかりである。
「お気遣いはありがたいですが、もはやそのような段階ではないのです。お父様は私たちに代わって汚れ仕事を引き受けてくれていたのですから。今や私がエルフ族の神なのですから。エルフの純潔を守りたいのなら時には戦わなくては。元々エルフ族は全く無抵抗主義という訳ではないですし」
予想に反してリリアムは真剣な眼差しでそう言った。俺が守る余地なんて無いのかも知れない。とクゾーは思った。
「それよりも、王国を攻めて勝算があるんですか?私たちはたったの6人しかいないんですよ?」
「それについては大丈夫だ。こちらは王さえ倒せばそれで勝ちなんだからな。兵士や民間人は王の目的は知らされていないはず。ならば、ダリアの善性喚起の流儀が有効に使える。こちらが無抵抗ならほとんどの人間は攻撃出来ないと思う。もちろん基本的には出くわさないようにするが、仮に待ち伏せされたとしても逃げられるという訳だ」
ドヴァは自信満々にそう答えた。そして、背中から見覚えのある槍を取り出した。それはカスティーヨが使っていたサラマンダーの炎槍だった。
「城を攻め落とす際にはこれを使う。悔しいが、降雨装置でも無ければこの武器は無敵に近い。炎自体は消せても生きた炎が恐ろしい速度で広がって行くんだから」
ちゃっかりカスティーヨが自害した後拝借していたらしい。裏切り者のドヴォルザークが作った物であっても職人としての目は正直なようだ。
「ふむ。するとその作戦にはあまり人数は要らないな。戦える者もクゾー1人いれば充分だろう。私はその間に神族を1人味方に付けておきたい」
アキレウスが口を開いた。
「どこかにあてがあるのか?そりゃ神族が味方になれば心強いし、まだ分かっていない事も多いからな」
「ああ。我が母である海の神族、いわゆる海神の事だ」
そういえば忘れていたがアキレウスは半神であった。
「しかし母親には会った事無いんじゃ無かったのか?いきなり協力してもらえるかな」
「協力してもらえるかは知らんが、年次の挨拶は毎年来ている。私の育ての親が私を引き取った時に、お礼として私がいた村には毎年魚が豊漁になる時期がある」
神様も年次の挨拶とかするのか……とクゾーは思った。考えてみればこんなにはっきり神が存在する世界に元の世界の常識は当てはまらないだろう。この世界に長く居て、クゾーは元の世界こそ人間しか居ない偽物の世界に思えてきていた。
「そういう事ならアキレウスには海神に話を付けてきて貰おう。それにオーギュストの流儀は半神には相性が悪すぎるからな」
ドヴァもそれで納得したようだ。ここに来ていよいよ人間族に攻め込む事になった。人間族を前にして気後れせずに戦う事が出来るだろうか。そんなクゾーの迷いはリリアムの顔を見るとどこかに消えてしまった。
26話に続く
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