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とくぞうはいきかえった!

オーク。豚のような容姿をした怪物でありファンタジーにおいては怪力と低い知能と旺盛な性欲と醜い見た目から力ばかりであまり強くない悪役ザコモンスターとしてたびたび登場する。40にしてその虚しい生涯を閉じ、どういうわけかオークに転生してしまった大国徳三は彼のオークに関する少ない知識を総動員させていた。

「あのー。そろそろ離してもらえませんかね?森のオークあるいは記憶喪失のフェアリーさん。」

徳三の手に握られた哀れなフェアリー族はいい加減疲れたという感じで言葉遣いを馬鹿丁寧にすることもなくそう呟いた。

「そう確か俺は…じゃあここは天国?」

徳三は自分が事故に遭ったことを思い出した。

「無視しないでくださいオークさん!天界の事ならこんなとこにありませんよ!もう逃げたりしませんから手を離してください。捕食したり慰み者にしたりしなかったらなんでもしますから。」

「そんなことしないっての!ちょっと待ってとりあえず質問に答えてもらっていい?」

徳三は驚きのせいか信じられない状況のせいか、普段より饒舌になっていた。

「まずここはどこなの?」

「小さい森の入り口の泉付近だとしか言いようがありませんね。フェアリー族は基本的に森から離れませんし。他の種族からなんと呼ばれているかは存じあげませんね。」

徳三としては何故自分がこのファンタジックな世界にいるのかが気になって聞いたが全く話が噛み合わない。

「それよりも種族名だと呼び辛いので名前を教えてもらっていいですか?ちなみに私の名前はフェアリー族のエコーです。」

「大国…徳三です。」

しかし言語がそもそも異なるせいか徳三の声の小ささのせいかよく聞き取ってもられなかった。

「オーク族のニート・クゾーさんと仰るのですね?素敵な名前じゃないですか。」

「ニートじゃない!何が素敵な名前だそんなクズニートみたいな名前!」

「でもニートというのは異国の言葉で『綺麗好き』という意味なのでしょう?」

エコーはさも当たり前のように言っているが大国徳三改めニート・クゾーには異国とはどこのことなのかすらわからない。クゾーは状況を整理することにした。記憶しているのは今までの自分の人生と、その最期の瞬間になったであろう交通事故の事。

「ちょっと待ってくれ…なんで俺はオークなんかになっているんだ…。」

現実世界でも相当な口下手だった男がいきなり異世界の人間とコミュニケーションがとれるはずはない。その発言はますますエコーを混乱させた。

「どういう意味ですかそれは。オークに産まれた自分の運命を呪っているのですか。それはいけません。人は皆神に愛されて産まれてきた神の子であって…。」

「そういうことじゃない!俺は人間だったのに死んでここに来たらオークになってたんだ!」

エコーは呆れたような顔付きになった。

「何を言い出すかと思えば…しかしですねえ、嘘をついている感じの声ではないんですよねえ。」

「え?そりゃ信じてくれるのはありがたいけどどうしてそんな事が言えるの…?」

常にあまり信じられる人のいなかった彼はこんな(少なくともエコーには)突拍子も無い話を信じてくれることは非常に珍しいことだった。

「私の固有の妖精流儀は声を操る事ですからね。声から感情を読み取ることも得意なんですよ。」

フェアリーアーツ。聞き慣れない言葉である。記憶を探っても耳にした事はない。

「妖精流儀ってのはなんだい?」

「この世界に生きてる以上は当たり前のことなんですけど一応説明しますと、その種族が持つ他の種族には無い特殊な力の事です。種族ごとに割り当てられているのは大まかな傾向で、1人1人に違った能力があります。フェアリー族なら「他者への干渉」、ドワーフ族なら「道具の創造」、神族なら「支配」とかですね。」

「じゃあオークにも何かあるの?」

「オークは「暴力」です。単純に怪力をつかう以外の流儀を私は見た事ないですねえ。」

なんだそのいかにも頭の悪そうな能力は。しかも暴力と言うからにはあまり他種族からは良い目で見られてはいないようだ。

「ともかく立ち話もなんですからこの森の奥のお店にでも行って話ましょう。その傷の手当てもしなきゃですし。」

そういえばクゾーは頭をケガしていた。交通事故にあった名残だろうか。

「さあ行きましょう。大丈夫ですその店の人はオークでも怖がったりしませんから。」

「あ、ああ…。」

クゾーは歩き出した。今でも全く状況は把握できていないが、とにかく大変な事になったのは確かだ。傷ついた頭をさすりながら、エコーの後をとぼとぼついていった。


3話へ続く。

2話まで読んで頂きまことに感謝いたします。

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