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とくぞうはたびにでた!

クゾーとヘラクレスは雷神の持ち物だと言う戦車に乗り込んだ。戦車と言っても馬で引くタイプのものだ。ただ引く馬はついていない。


「雷神と言えばオーギュストが使ってた剣も雷神から賜ったとか言ってたな。」


紫電を纏う剣というのはいかにも雷神らしい。クゾーの流儀のおかげで当たらなかったものの、素肌に当たるとなかなか危険な武器である。


「その剣はドワーフ族が作ったものじゃないかな。雷神が人間と関わりが深いとは思えないし。」


フレイが言う。とするとオーギュストの発言はこちらに見栄を張ったものであったということになる。


「王国にいるそのドワーフ族ってのは王国に捕らえられたのかな。ドヴァに聞けばわかるかも。」


ドヴァは確か匠長とか言っていた。天界から戻って来たら聞いてみよう。


「さてそろそろ出発するよ。アキレウス、リリアムちゃんとダリアちゃんをよろしくね。」


アキレウスは大きく頷く。


「ああ。いつ何時敵襲があるかわかったものではないからな。」


「よし。じゃあ行ってくるよ。」


フレイがリリアムとダリアを見る。リリアムはとても心配そうな顔をしている。


「お気をつけて…お父様が一緒ならそう危険なところではないと思いますが…。」


「大丈夫さリリアム。それより自分の心配をしな。いざとなったら…君もみんなを守っていい。」


リリアムは真剣な顔で頷く。


「はい。では無事に帰られますことをお祈りしています。」


フレイはわかっている。とだけ言うと鞭を普通の戦車なら馬がいるであろう所へ打ち付けた。それが起動の合図らしい。


「よし。8時間で天界を目指すから相当スピード出すぞ。後ろを向いたら首が折れるかもしれんから注意しとけ!」


戦車は猛スピードで走り出した。


「行ってしまいました…。クゾーさんがいない間に新たな敵襲が無ければいいんですが。」


リリアムが不安そうな声を漏らす。


「まあアキレウスくんも居ますし。部屋に戻りましょう。」


エコーが声をかける。その言葉で全員部屋に戻って行った。


「おいちょっとあんた。」


ダリアがエコーに話しかけた。


「エコーです。なんですか?」


「いや今家ん中でのんびりしててもヒマじゃん?良かったら森の中を案内してくんねーかな。お父様が花咲かせてくれた事だし木の実でも成ってるかもしれねえし。」


エコーは訝しげにダリアの顔を覗き込む。


「構いませんよ。私達はいてもあまり戦力にはならないでしょうし。」


2人は森の中へ入って行った。


部屋にはアキレウスとリリアムの2人が残された。部屋の中を静寂が包む。


「なんだかあんたも災難だな。人間が来る前はこの森もたいそう静かでいい森だったであろうに。」


アキレウスが口を開いた。


「いえ。どのみち人間が他種族を襲っている現状から目を逸らして生きるのは不可能ですよ。エルフ族も狩りの対象ですし。」


「そうは言ってもあのクゾーとかいうオークと私とヘラクレスが連中の狙いらしいし、無関係なあんたは少なくとももっと平和にいれただろうよ。」


リリアムは静かに首を振る。


「決して無関係などではありません。エルフは1度受けた恩は忘れませんし、慈悲も絶やしてはなりません。エルフとはこの世を光と豊穣で満たすようにお父様から命じられた種族なのですから。」


アキレウスは首をすくめて微笑した。彼は生きる理由など神の子でありながら考えた事もなかった。


「まあ連中も敗れてすぐにこちらを攻撃する事はなかろうし、しばらくはのんびり…という訳にもいかないのか。」


アキレウスは何事かを察知した。そして素早く家の外に出る。


するといつの間に森に入って来たか、家の前に少女が1人立っていた。


「何者だ貴様!」


アキレウスが叫んだ。


「僕はエインセル。君は?」


少女はニヤリとしながら短く答えた。



ダリアとエコーは森のかなり奥まで来た。


「ずいぶん奥の方まで来ちゃいましたね。この辺なら木の実が手付かずであるかも…。」


エコーがそこまで言ってダリアの方を振り返るとダリアが刃物をエコーに向けていた。


「…何の真似ですか?」


「いやさ。私の流儀は闇のエルフの時と光のエルフの時で全く違う効果になるんだよね。闇のエルフの時は人を悪に導くこと。洗脳によって戦わせたりとかな。光のエルフの時はその逆で人を善に導くことになるんだよ。こっちの流儀は使い方次第で自白を強要することもできるんだ。」


エコーがダリアの方に向き直る。その目はいつものエコーのものではない。


「それで?私が何か自白でもしたんですか?」


ダリアは首を横に降る。


「いや私はそもそもあの家の中に内通者がいる可能性を考えててさ。そしたらあんただけ私の流儀が効かなかったんだよね。それにそもそもあんたはどうにも疑わしい。あのオークを助けてここに連れて来たのはあんただし、その前に人間達が急にフェアリーの守りがあるはずのこの森に来れるようになったのもおかしい。だからさ…。」


ダリアはエコーに向かって刃物を突き出す。


「正体見せやがれ!」


刃物がエコーに突き刺さるかと思いきや、エコーの身体は雲散霧消してしまった。


「やれやれ、この私の流儀が見破られるとはね。」


森に男の声が響く。ダリアは辺りを見渡した。


「誰だてめえは!!?」


ダリアが叫ぶと霧が集まり出し、背の低い老人が現れた。


「どうも初めまして。私は妖精族のヘンプと申します。私の流儀は虚像を作り出すこと。『音が反響する』という現象を虚数の範囲で定義して、エコーという妖精族を作ってあなた方を観察していました。」


「やっぱりあいつは誰かが作り出した偽モンか…。お前は王国に仕える妖精なのか?」


ヘンプは頷く。


「ええその通りです。そこまで知られたからにはあの家に戻られては困りますな。ですが私は虚像を作ることしかできませんで。事が終わるまで幻覚で森を彷徨って頂きます。」


ヘンプがスッと姿を消す。ダリア1人が森に残されてしまった。


「な!クソ…早く戻って知らせねえと…待てよ、事が終わるまでってまさかリリアムのとこに敵が来てるって事か…?」


ダリアは舌打ちすると辺りを見回した。よく見ると木々が騒ついている。ヘンプの幻覚が始まっているのだ。


17話へ続く。


お読みくださり誠にありがとうございます。

ダリアの口調が最初と全然違うのは仕様です



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