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とくぞうはかみさまとであった!

「え?」


その場のフレイと女の子を除いた全員が唖然としてフレイを見た。


「なんだ君たち知らないでこの子達と一緒にいたわけ?同時期に主神と海神が人間との間に子を設けたっていうのは一時期すごい話題になったからね。見間違えるはずもない。」


確かにこの子達は人間とは思えない力を持っている。しかしまさか神族と人間とのハーフだとは。


(い、いやでも神話だと割とよくある話か…。)


ヘラクレスの名前の由来にしたヘラクレスだってあれは確かゼウスと人間の子供だ。


「私は知っていたぞ。母とは会ったことも無いがな。」


女の子は冷静にそう言った。


「じゃあ俺とこいつは…そういえばお前名前はなんて言うんだ?」


「あいにく私の育ての親は神の子ということで私に名前を付けようとはしなかったのだ。」


ヘラクレスに名前が無かったのもケンタウロスがこの子は神の子だと知っていたからだろう。


「そうか。おいクゾー。お前また何か神話の英雄から何かつけてやれ。」


また俺が名付け親か。俺は神学者じゃないっての。クゾーは渋々名前を考えた。


「そうだな。無敵の身体に踵の弱点…。ぱっと思いつくのはアキレウスかな…。」


「よし私はそれでいい。」


またも即断即決である。英雄というか神族とのハーフは決断が早いのだろうか。


「いやでもそれじゃあまりにも女の子らしくないんじゃ…。」


「何を言っている。私は男だ。」


えー!とフレイを除いた全員が驚く。今日はよく全員が驚く日だ。


「じ、じゃあ何で女の子の格好を…?」


「我が育ての親が私の力に気づき、このままでは戦争に駆り出されると思ったらしい。そこで女子の格好で育てたという訳だ。」


華奢で端整な顔立ちのため、髪を長くしていると女の子にしか見えない。


「住んでいた村に徴税官が来て暴れ回った時にぶっ飛ばしてやったんだがちとやり過ぎた。挙句に軍隊が出てきてな。捕らえられてしまった。それからは洗脳にかかったフリをして軍隊にいた。」


それほど王国に思い入れも無かったのがあっさり寝返った理由だろう。軍隊から抜けだせる機会をうかがっていたのかも知れない。


「俺はケンタウロスに育てられていたが騎士団に襲われてな。ここに逃れて来た。」


「なるほどな…2人がここにいるのは元を正せば王国が原因なんだな。」


そういえばそういう事になる。フレイは続けて言った。


「昨日私がリリアムちゃんから連絡を受けた時に考えていたのは、一連の人間族の動きは主神殿の差し金ではないかという物なんだよ。そもそも流儀を使えず数十年しか生きない人間族なんて種族を作った所に何か意味を感じるんだ。」


元人間のクゾーからしてみれば複雑な気持ちだった。人間が産まれた理由など考えた事も無い。


「それでだ。私は天界の最奥地にいらっしゃる主神に会いに行ってみようと思う。クゾーくんとヘラクレスくんも一緒にね。」


クゾーは驚いて思わず立ち上がった。俺が主神と会うだって?


「君も十分異常な存在なんだよクゾーくん。元人間でオークになったのなら、君も元に戻る手がかりが欲しいんじゃないかね?もっともリリアムちゃんに近づく為に嘘をついてたと言うなら話は別だがね。」


「クゾーさんを起こしてここに連れて来たのは私ですよ。嘘ついてないっていうのも私が保証しますよ。」


エコーが口を挟んだ。フレイは冗談だよ。と言って口元を緩めた。


「ヘラクレスくんに来てもらうのは主神と話をし易くする為。」


「俺も主神とやらが産みの親なんだったら会っておきたい。」


ヘラクレスがそう言うとフレイが深く頷いた。


「なら出発は明日の朝だ。クゾーくんもいいね?」


クゾーは頷くしか無かった。




「カスティーヨ…。たった2人でオークに挑むのが兵法か…教えたのと違うではないか…。」


王国ではカスティーヨの葬儀が行われていたが、本来なら国葬となるべきにも関わらず敗戦の隠蔽のため葬儀は酷く寂しいものだった。同時に、2度もオークを撃ち漏らした事への王の怒りの現れと取ることもできる。


「私の仇を討とうとしたか…他種族との戦闘は人間が圧倒的に不利だとあれ程言ったというのに…。」


オーギュストは目に涙を溜めていた。元はと言えば自分が最初にオークを倒せなかったことが原因なのだ。


「そうは言いましてもオーギュスト様。たった2人で行かれましたのは武器が強力過ぎたが故に味方を巻き込んでしまうかも知れなかったからではないかと。それに行くら無理だと言っても、勝ち目が無かったとしてもあの方は行かれたと思いますよ。そういう一本気な方ですから。」


側近がオーギュストを気遣うというより分析するような口調でそう言った。


「お前は少しお喋りが過ぎるぞヘンプ。」


ヘンプと言われたその背の低い老人は頭を下げた。


「これが妖精族の悪い癖でございまして。ご容赦を。」


「ったく。お前はドワーフ族を俺の部屋に呼べ。今から作戦会議だ。」


葬儀を切り上げてオーギュストは席を立った。ヘンプは一礼するとどこかへ姿を消した。


「全く他種族というのはどうも腹が見えんわ。あのドワーフ族も匠長を名乗るならもっと役に立つ物を作れと言うんだ。」


オーギュストは肩をいからせて自室へ向かった。



16話へ続く。


読んで頂きありがとうございます。


ヘラクレスの一人称が固定しないのは仕様です。

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