VRMMOで遊んでる間に俺らの身体はのっとられたらしいです。
感想・ご意見お待ちしております。
「愚かな人間達よ!
貴様らはもはやこの世界から出ることは叶わない!!!」
とあるVRMMOで、普段どうり遊んでたら、空からそんな声が聞こえた。
空を見上げると、なんていうの?
ほら、あれだよ、あれ。
あれ……あ、ホログラムみたいなのが空に浮かんでた。
そのホログラムみたいなものには、このVRMMOに登場する魔王の側近がいた。
名前はグレン。多分漢字だと紅蓮。
赤髪、赤眼で整った顔立ち、全体的に細いにも関わらず、出るところはきちんと出てる素晴らしい体型だ。
あれだな、わがままボディーだ!(キリッ
NPC人気投票でも、確か十位以内に毎回入ってたはずだ。
なんかのイベントか?
でも、なんの告知も無かったし、こんなメタ発言今までなかったのになぁ。
そんな風に見つめていると、隣にいたナギから声をかけられた。
「ねえ、拓也、なんかおかしくない?」
「うん、俺もおかしいとは思うよ。
ところで、ナギもおかしいよ?」
「え?」
「俺、タクだから、拓也じゃないから」
「あ! ……べ、別にそれくらいいいじゃん!
タクのバカ!」
「いやいや、現実との差が見た目的にあんまりないからって、よくないよ!?
身バレ、ダメ、ゼッタイ!」
その後も俺はナギに対して話そうと思ったが、俺が喋れたのはそこまでだった。
空のホログラム紅蓮が喋りだしたのだ。
「貴様らは、この世界をただの仮想世界と思うていたのだろうが、それは違う!
いや、確かにはじまりはそうだったかもしれぬが、何千人、何万人、何十万人もの気持ちがここに集まったことで、ここは一つの独立した世界となった!
これ以降、来ることは出来るが、帰ることは出来ぬ!
ああ、心配するな、貴様らがいない身体は我らが創造したキャラクターが貴様らの身体に入り、あちらで生活する!
せいぜいこの世界で楽しむことだな!!!」
はーはっはっはっ! はーはっはっはっ!という高笑いを余韻に残して、紅蓮のホログラムは消えた。
「な、なんだって!?」
「どういうことよ!」
周囲にいた人達は騒然とし始めた。
確かに、今まではゲームだったものが、急に現実になるとか言われても焦るよなぁ……。
隣にいるナギもなんだか動揺している表情だ。
「ど、どうしよう、タク!
出られなく……なにやってんのタク」
「地面に寝っ転がってる」
「なんでそんな状況になってるかを私は聞いてるのよ!」
「いや、見上げてみてたら首が痛かったもので。
あ、聖騎士さんのパンツ見えた」
「どこ見てるのよ!」
「だから、聖騎士さんのパンt「ばか!」……ナギが聞いたのに」
「まあまあ、ナギちゃん。 私は気にしてないから」
「あ、聖騎士さん」
「なごにゃんさん!」
「やあっ! 全くタク君の話聞いてたら、気が緩んじゃったよー」
聖騎士の役職のなごにゃんさん。
スリット入りのチャイナ服や、バニーの格好などの際どいけど、能力の高いネタ服を着る人だ。
今日はビキニアーマーに腰布という格好であり、腰布の間からちらりと見える生足とパンツがたまらんとです。
正しくはパンツじゃないとわかっているけどな!
それに加えてナギときたら……。
つるぺたにもほどがある。
「だって、俺らもう皆魔王倒してるし、ぬるゲーじゃないっすか」
「あー、そりゃそうだねー。
まあそう考えると、実際に第二の人生が始まったと思うべきかな?」
「ですよー」
そんなこんなで、この世界で過ごすようになった。
あの時紅蓮が言っていた通り、俺達は外に出ることは出来なかったが、中に入ってきた新規プレイヤーがいた。
新規プレイヤーはこのVRMMOから外に出ることは出来なくなったとは知らなかった。
知らないまま敵を倒し、敵に倒されることもあった。
そう、敵に倒されることもあった。
しかし、セーブポイントで問題なく復活した。
ペナルティーは通常のゲームプレイ時同様に、所持金半額、経験値の五パーセントを失うというものだった。
これによって、俺達はログアウト不能だけど、デスゲームではないことを知った。
ただし、上記で述べたペナルティーはVRMMOを初めて三日以内の初心者のみに適用されるものだったため、チャレンジ精神旺盛な人(魔王倒し済み)が敢えて敵に倒されてみたところ、セーブポイントには無事に着いた。
着いたはいいが、所持金全額、経験値十パーセント、ランダムに所持アイテムを失った。
予期していたらしく、大事なものや所持金の多くは金庫に入れてたらしいので、今は失った経験値を稼ぐことを、楽しんでいるらしい。
「なあなあナギー」
「なによ?」
「いつか俺らの身体に入ったキャラクター達もこのVRMMOに来るんじゃないかなって俺思うんだけど」
「さぁ……。 そんなの神のみぞ知るってやつじゃない?」
「……んだな」
VRMMOってこういうこともあり得そうだな、と思いました。