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【処女作】 ハピネスタウン物語  作者: あいる華音
最終章 「終焉 -end-」
72/81

Last (Interval) 第三章までのあらすじ

<第三章までのあらすじ>


(第一章)

 日本の一角にある隔離された街・ハピネスタウンには、世界中から忌み嫌われている伝説の民族・ネスパ人が、戦争で故郷を追われ、難民として保護・監視されている。

 ハピネスタウンには、ネスパ人以外には、日本の警察役人(通称・役人)しかおらず、交流すら認められてはいなかった。


 そんな交流を禁じられている中で、十七歳のネスパ人・マリアと、二十歳の日本人・織田亮おだりょうが恋に落ちた。

 しかし亮には地位の高い父親や決められた婚約者がおり、その恋叶わず二人は引き裂かれることになる。しかし、その時すでにマリアのお腹には亮との子供がいた――。


 子供を殺されると思ったマリアは、亮の前から逃走。

 亮は親の決めた婚約者・真紀との結婚を承諾し、マリアに唯一出来ること……この街の未来を少しでも明るくするべく、街の最高指揮官になることを決意する。


     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 それから五年後――。ひょんなことからマリアと再会した亮は、自分の子供である昇を引き取りたいと申し出る。それは、自分の子供を手元で育てたいという気持ちと、貧しい暮らしをさせたくないがための提案だった。


 だがこの五年の間に、亮の暮らしも変わっていた。最高指揮官に任命され、少なからず交流禁止令などの規制は緩和されたが、親の決めた通り真紀と結婚し、二人の子供ももうけている。

 昇を引き取りたいということを、当然真紀は反対したが、亮の気持ちも察し、引き取ることを了承。


 昇が引き取られて一人になったマリアは、真紀の指図によって刑務所に入れられたが、その後釈放され、養育費を口実に、毎日真紀のもとへ金を届ける日々を送る。



     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


(第二章)

 そんな中で、亮の腹違いの兄・織田竜おだりゅうがやってきた。

 竜はかつて真紀と恋人同士だったことがあるため確執があり、また父親ともうまくいってない。


 竜は健気に生きるマリアに同情し、幼い頃に目撃した亮の母親が処刑されるシーンを重ねて、マリアを助けたいと思うようになる。

 マリアに次第に惹かれていく竜だが、マリアは過労で倒れるまで働き詰め、手を差し伸べる竜に嫌気がさした真紀の手によって、マリアは再び刑務所に戻されてしまう。


 そこでマリアを待ち構えていたのは、暴行という死にたくなるほどの仕打ちだった。

 やっとのことで迎えに来た竜の手を取ることもなく、マリアは絶望するが、竜が父親と交わした「父親のために一年間日本に戻る」という交換条件によって、マリアは刑務所から出されることになり、竜の優しさに触れて、次第に未来へ希望を持ち始める。


 出所の日、マリアが竜からもらった息子・昇の写真を目にした真紀は、激怒して写真を破り捨てる。

 雪の降りしきる中、バラバラになった写真を手に、馬車から放り出されたマリアは、最期の光景を見るように、ただ美しい雪を見つめて目を閉じた――。



     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


(第三章)

 一年間の猶予をもらったマリアは、医者のアル、酒場のマスターであるコブたちに助けられ、次第に回復し、一年後に備えて仕事を始めるようになる。


 そして一年が過ぎ、竜が日本から戻り、マリアは真紀に養育費の値上げを要求され、一年前以上に過酷な生活を送ることを覚悟。しかしそれを助けたのは、やはり竜の存在だった。

 竜は父親から新たな難題を突きつけられるが、マリアの幸せのためマリアから離れることを決意し、その申し出を受けて父親の決めた相手と結婚することを決意する。


 しかしある日、竜は一年前に養育費受け渡しのため毎日マリアが待っていた場所で、真新しい血痕を発見する。それはマリアのもので、街で頻発している暴徒に襲われたものであった。

 大怪我を負ったマリアは、死に場所を求めて街へと歩き出した。そして力尽きようとしている時に出会ったのは、亮であった。やがて竜も合流し、マリアは病院へと連れられていくのだった。


 命を取り留めたマリアだが、思うように働けないことで、真紀は金の要求を諦め、マリアを異常者である男と結婚させようとする。

 拒否権のないマリアはその申し出を受けるが、そこで待ち受けていたものは、精神的苦痛のなにものでもない、ただの闇の世界だった。

 未来への希望も見出せず、助けようとしてくれた亮や竜の手を振り払うことしか出来ず、自殺を決意する。

 しかしそれは未遂に終わり、婚約破棄の代償として、死刑執行を言い渡される。それも人前で行われる、公開処刑というきつい仕打ちだった。


 公開処刑の日、それは静かに進められた。

 亮はこの時日本におり、竜は出張で反対側の西地区へ行くと聞かされているマリアには、少しの希望もない。なにより処刑の許可は最高指揮官の許可が必要なもののため、亮が許可を出したのだと思うと、マリアには絶望視かなかった。しかしそれは、亮の目を盗んで真紀が押したものだとは、マリアが知る由もない。

 重刑に耐えながら、マリアは最後の刑罰である絞首刑を受けるため、自らが処刑される高い処刑台へと上っていくのだった――。



     ――   ――   ――   ――   ――



<今までの登場人物>


マリア

ネスパ人女性。故郷で戦争に遭い、家族を失くす。路上でその日暮らしをしていたが、十七歳で亮と出会い、昇を出産。昇を産むために脱獄し、亮と再会すると同時に昇を手放すこととなる。

禁止令下の亮との恋愛、更には脱獄したという自分の罪というものを誰よりも認識しており、昇のために働く喜びだけで生きている部分がある。未だに亮のことを忘れられないでいる。



織田亮おだりょう

現ハピネスタウン最高指揮官。日本の前総理大臣を父に持ち、母親はネスパ人。自らは日本とネスパの一人目のハーフ。幼い頃に母を亡くし、父親に英才教育を受けてきた。飛び級までした秀才で、優しいが優柔不断なところもある。

元からネスパ人擁護派で、ネスパ人からも慕われているが、冷酷な父親の操り人形であることは変わらず、マリアと真紀の間でも未だに揺れ動いている部分がある。



織田竜おだりゅう

亮の腹違いの兄。日本で刑事をしていたが、亮に呼ばれてハピネスタウンの任務に就く。

優柔不断な亮とは正反対の熱い性格で強引さがあり、自由奔放に生きてきた。

しかし亮の母親の処刑シーンを幼少の頃に目の当りにしたことで父と対立し、今も悪夢を見ている。軽い人付き合いをしなければ、心の闇に押し潰されそうな脆さもある。



織田真紀おだまき

亮の妻。亮と同じ警察役人で、収容所や刑務所の管理を任されているやり手のキャリアウーマン。

プライドが高く強い女性だが、亮の父に焚きつけられてマリアを憎んでいる部分もあり、一時期は情緒不安定になったか弱い部分もある。

過去に亮の兄と付き合っていた。亮との間に双子の子供がいる。



篠崎しのざき

竜の刑事時代からの同僚。一足先にハピネスタウンの勤務に就いており、竜とは飲み友達でもある。

ハピネスタウンでは、竜と同じ部署で右腕と呼べる関係となっている。



クリストファー

身体的ネスパ医療の医者。マリアの従兄弟で親の決めた婚約者だった。

故郷でマリアと生き別れたと思っていたが再会した。マリアの最後の家族だと思われる。

日本人の子供を産んだマリアを許せない思いもある。

三章で出てくるアルとは、医者仲間。



織田氏

亮の父親。本名不明。日本の前総理大臣であり、前ハピネスタウン最高指揮官。今も日本の政治家で、方々に顔が利き、金と権力だけは有り余るほどある。こうと決めたら誰の指図も受けない、賢く冷徹な男。



森山卓もりやまたく

亮の同僚。亮より年上。亮と同じハピネスタウンの警備などをしていたが、現在は同じ日本の政府機関で、ハピネスタウンと日本の橋渡しのような仕事に携わっている。亮に助言をし、マリアとの交際に猛反対したが、優秀な友人であるため一目を置いている部分もある。



織田昇おだしょう

マリアと亮の息子。



織田力おだりき織田真世おだまよ

亮と真紀の子供。双子で、昇よりひとつ年下。



アルフレッド

通称・アル。西地区で働く医者。マリアより一つ年下。

夜街育ちで家族はないが、夜街に住む女性たちからは弟のように可愛がられている、努力して医者になった人。

クリスとは医者仲間だが、精神分野の医者のため、クリスとは専門分野が違う。

熱い性格で、マリアを助けた人物。



コブ

西地区の外れで酒場を切り盛りしており、アルと一緒に暮らしている。

無実の罪で妻を収容所で殺され、日本人には敵意を持っている。



ドクター

西地区で個人病院を営んでいる。身体分野の医者。

アルと一緒に働いており、コブとの弟でもある。コブとは顔がそっくりだが体型は細身でまったく違う。

これより、マルチエンディングに突入します。

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