2-0 (Interval) 第一章のあらすじ
<第一章のあらすじ>
日本の一角にある隔離された街・ハピネスタウンには、世界中から忌み嫌われている伝説の民族・ネスパ人が、戦争で故郷を追われ、難民として保護・監視されている。
国際会議によって日本の管理下に置かれたハピネスタウンは、日本の警察役人(通称・役人)と呼ばれる人間たちしか入れない、隔離された街であった。
そんなハピネスタウンには、ネスパ人の他に日本人の警察役人しかいないが、交流は法律で禁止されている。
そんな中で、十七歳のネスパ人・マリアと、二十歳の日本人・織田亮が恋に落ちた。
マリアは戦争孤児で、一人きりで路上生活を送っており、それに同情した亮が手を差し伸べたことにある。
亮の父親はこの街の最高指揮官であり、日本の前総理大臣である。本人も飛び級しているほどの秀才で、若くして次期最高指揮官候補にも上がるほどの人材だが、ネスパ人擁護派で、交流が禁止されているこの街の法律をおかしいと言っている数少ない日本人でもあった。
それもそのはず、亮は交流禁止令が出る前に、日本人の父とネスパ人女性の間に生まれた、日本とネスパの一人目のハーフだったのである。
だが、二人の恋は数日のうちに幕を閉じた。
もともと亮には親の決めた婚約者・真紀がおり、父親や同僚・卓の反対によって、無理やりに引き裂かれてしまう。
しかし、その時すでに、マリアのお腹の中には、亮との子供がいた――。
交流禁止令の名のもとに捕えられたマリアは、自らも気付いていなかった自分のお腹にいる子供の存在を知り、脱獄。身を隠し、一人で亮との子供・昇を産む。
それから五年後、ひょんなことからマリアと再会した亮は、自分の子供である昇を引き取りたいと申し出る。それは、自分の子供を手元で育てたいという気持ちと、貧しい暮らしをさせたくないがための提案だった。
だがこの五年の間に、亮の暮らしも変わっていた。最高指揮官に任命され、少なからず交流禁止令などの規制は緩和されたが、親の決めた通り真紀と結婚し、二人の子供ももうけている。
昇を引き取りたいということを、当然真紀は反対したが、亮の気持ちも察し、引き取ることを了承。なにより、このまま亮がマリアとずるずる会うことだけは避けたいと思ってのことである。
マリアにとっては、昇の幸せを願えば、その申し出を断ることなど出来なかった。
昇が引き取られて一人になったマリアは、真紀の指図によって刑務所に入れられたが、その後釈放され、養育費を口実に、毎日真紀のもとへ金を届ける日々を送っている――。
<今までの登場人物>
マリア
ネスパ人女性。故郷で戦争に遭い、家族を失くす。路上でその日暮らしをしていたが、十七歳で亮と出会い、昇を出産。昇を産むために脱獄したため、五年もの間、人目を避けて暮らしていたが、ネスパ人の富豪やレストラン店主など、同じネスパ人と助け合っていた。
織田亮
現ハピネスタウン最高指揮官。日本の前総理大臣を父に持ち、母親はネスパ人。自らは日本とネスパの一人目のハーフ。幼い頃に母を亡くし、父親に英才教育を受けてきた。飛び級までした秀才で、優しいが優柔不断なところもある。腹違いの兄がいる。
織田真紀
亮の妻。亮と同じ警察役人で、収容所や刑務所の管理を任されているやり手のキャリアウーマン。プライドが高く、年下の亮を口で言い負かせられる強い女性。過去に亮の兄と付き合っていた。亮との間に双子の子供がいる。
織田氏
亮の父親。本名不明。日本の前総理大臣であり、前ハピネスタウン最高指揮官。今も日本の政治家で、方々に顔が利き、金と権力だけは有り余るほどある。こうと決めたら誰の指図も受けない、賢く冷徹な男。
森山卓
亮の同僚。亮より年上。亮と同じハピネスタウンの警備などをしていたが、現在は同じ日本の政府機関で、ハピネスタウンと日本の橋渡しのような仕事に携わっている。亮に助言をし、マリアとの交際に猛反対したが、優秀な友人であるため一目を置いている部分もある。
織田昇
マリアと亮の息子。
織田力・織田真世
亮と真紀の子供。双子で、昇よりひとつ年下。