表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビュ=レメンの舞踏会 ―魔法のとびら―  作者: 滝沢美月
第3章 刻印に秘められた恋
PR
31/43

第29話  口づけは真夜中に



「…………っ」


 ティアナの頬を透明の雫が伝い、後から後から溢れてくる。

 ルードウィヒは自分の耳につけていたルビーのピアスを片方外すと、それをティアナの左耳につけ優しく触れる。


「これは私の生誕の折に母が用意してくれた物で、ずっと身につけていた物です。どうかこれを見て、時々は私のことを思い出して下さい」


 ティアナは自分の耳に触れるルードウィヒの手の上に手を重ね、切なく微笑む。


「時々なんかじゃなく……いつでも、いつでもあなたのことを想います」

「ティルラ――君を見つけるために私は生まれ、君に出会って幸せでした。添い遂げることは叶わないけれど、生涯愛しているのは君だけです。遠く離れようと、死して時を廻ろうとも――私の心は君だけのものです。君の心も、私だけのものだと誓ってくれますか――?」

「はい……っ」


 抱きしめられていた腕を緩められ、ティアナはルードウィヒを見上げ、泣き笑い、頷いた。

 ルードウィヒはティアナの顎に手をかけ僅かに上向かせると、ゆっくりと長い睫毛の生える瞼を閉じ、口づけた――



 ゆっくりと降り注ぐように端正な顔が近づいてきて、ティアナは無意識に瞳を閉じる。唇に優しい感触を感じ、胸がきゅんと締め付けられる。

 一度止まっていた涙がまた流れ出し僅かに塩の味を感じ、それと同時に体中を炎が駆けめぐった。

 口づけの余韻のまま間近で見つめ合っていた二人は、恥ずかしげな咳払いにリアも同じ部屋にいることを思い出し、お互いに距離をとり視線をそらす。


「ルード……また私の存在を忘れていたわね……っていうかこの非常事態に呑気に別れを惜しんでいる場合じゃないんじゃないかしら?」

「忘れていませんよ……」


 ルードウィヒは首をかしげながら、ふわりと苦笑する。


「リア、どうかティルラのことをお願いします。お願いできるのはあなただけですから――」

「分かってるよ、任せなっ! だからルード、あんたもちゃんと生きるんだよ……」


 リアは目じりを濡らし強い口調で言って、ルードウィヒの肩をばしばし力一杯叩く。


「ははっ、リアの喝ももう聞けないのですね……」

「なによっ」


 拳を振り上げたリアから逃げるようにルードウィヒはティアナの側へ行き、ふわりともう一度ティアナを抱きしめる。


「本当は夜明け後に南の国へ送りたかったのですが、もう時間がないようです。急がないと他の者に気づかれてしまう――だから、もうお別れです」


 抱きしめられる腕にぎゅっと力が込められ、ティアナは胸が切なくて苦しくて――


「大丈夫、また会えるわ――」


 無意識にそう言っていた。

 体を離したルードウィヒは大きく目を見開き、ふわりと目元を和ませて泣き笑う。


「ええ、必ず――」


 ルードウィヒが掠れた声で言うと、ぼぉっと部屋に優しい色の炎が広がりティアナとリアを包み込んだ。


「火の精霊よ、ロラマンドリよ――」


 ルードウィヒが腕を広げ名前を呼ぶと。

 クオオォォォォ――

 答えるような鳴き声が部屋に響き渡り、炎が九龍を形どると意思を持ったようにティアナとリアを巻きこみ、ルードウィヒを見て頷くような仕草をする。


「遠き地、古の絆の繋がる地へ、彼の者達を守り導き給え――っ!」


 クオオォォォォ――

 承諾するように九龍がもう一度唸り声を上げると、ティアナの目の前は炎で包まれ、ぐるぐると体が回転し炎のトンネルと登っていくような落ちていくような不思議な感覚に襲われ――気がついた時には、鳥がさえずる森の生い茂る緑の中に横たわっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ