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第12話  ティアナの決意



「――私が行きます」


 体の正面で手を組み姿勢を正して立つティアナは、閉じていた瞳をゆっくりと開き、決意を固めた瞳でニクラウス、アウトゥル、ジークベルトを見つめる。


「北欧の森へは私が行きます」

「なっ、ティアナ様、なんという無茶なことを……」


 慌てて止めようとするアウトゥルを、真摯な眼差しで見つめる。


「元々、レオンハルト様が猫になってしまったのは私のせいです。だから森へ行くのは私がいいと思うのです。いちお、多少の魔力も持ち合わせていますし……」


 言いながら右手にはめたラピスラズリの魔法石を掲げたティアナの腕を、ジークベルトが掴む。


「何言ってんだ、魔力と呼べる魔力もないくせに。ティアが行くなら俺も行く――ダメだと言ってもついていくからな。一人でそんな危険な森には行かせられない。どうしても時空石を見つけに行きたいなら、俺も連れて行くんだ」

「うむ、姫を一人で行かせる訳にはいくまい。ジークベルト殿は優秀な魔導師じゃ、そなたが共に行くならば安心して任せられるのお。ティアナ姫、ジークベルト殿、お二人に時空石のことは任せるぞ」

「はいっ」

「はい」


 頷く二人に、アウトゥルがニクラウスの前に立ちはだかり反論する。


「ニクラウス殿、そんな勝手に……」

「ならば、アウトゥルよ、お主が行くか?」

「えっ……魔力も持たない私には時空石の元に辿り着く前に魔物にやられてしまいますよ。それに、私はレオンハルト様のお側を離れるわけには……」

「ならば異論はなかろう? 我々以外に、事を話して大事にすることはできまい。ならばティアナ姫達に任せるのが最善じゃ。姫よ、レオンのことは我々が側におる、準備を万端に整え、行くのじゃ」



  ※



 夜の帳が落ちた、ティアナ達の客室のメインサロンで。

 肩より少し長い艶やかな黒髪を無造作に背中に流したジークベルトは、長身にまとわりつくような長い漆黒のマントを羽織り、腰には魔法剣を腕には無数の魔法石の腕環をつけ革手袋をはめ、丹念に身支度を整える。

 ティアナは普段よりも短いひざ丈の青いスカートと青いブラウスを着、その上からレースの白いチュニック、更にその上に黒いマントを羽織り、イザベルがマントを止める手伝いをしている。腕には、普段つけているラピスラズリの腕輪の他に、ターコイズとダイヤの腕輪を身につける。


「ティアナ様、本当に行かれるのですか?」


 着替えの手伝いをしていたイザベルが心配そうにティアナを見つめる。


「ええ。すぐに戻るから、心配しないでイザベル」


 ふわりと微笑むティアナに、その言葉が自分を安心させるための言葉なんだと知っているイザベルは、喉まで出かかった言葉をぎゅっと飲み込んで、精一杯、泣きそうな顔で笑顔を作る。


「準備は出来たか、ティア?」

「ええ」


 コンコン。

 ノックの音と共にアウトゥル、フェルディナント、ニクラウス、そしてフェルディナントが隠すように抱えた籠の中に入ったレオンハルトが部屋にやってきた。


「こちらが数日分の水と食料、必要と思われる道具など、それから……もしもの時用に発煙筒を入れました」


 そう言ってアウトゥルは抱えていた鞄をメインサロンのソファーの上に置く。


「必要なものを用意して頂きありがとうございます」

「いえ、こちらこそ……」


 アウトゥルとジークベルトがそんなやり取りをする横で、ニクラウスが机の上に一枚の紙を広げる。


「これはビュ=レメン周辺の地図じゃ。今いるのがここ、王宮で、北欧の森には西の跳ね橋から城壁沿いに北上し丘の手前で北西の方角に進む、ここから先が北欧の森じゃ」


 ニクラウスは地図を指さし、図面の中央から上の方へ動かして行く。


「北欧の森は広大で、わしも実際に足を踏み入れたことがあるわけではないから正確なことは分からぬが、西の方向に洞窟があり、その洞窟の中に時空石があるという言い伝えじゃ。人目につかぬよう、このような夜中に出発させて悪いが――頼むぞ」

「はい、心得ております」

「北欧の森の近くまでは、私が案内いたします」


 レオンハルトの乗った籠を持ったまま、フェルディナントが腰を折る。


「フェルディナントさん、お願いしますね」


 ティアナは用意された鞄の一つを背負い、ジークベルトに視線を向ける。


「ジーク行きましょう」

「ああ」




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