50話 見知った面々
「―――絢ノ瀬、説明を」
橘は蹲るアリアを視界に捉え、そして次に倒れ伏している兵士、大男、ロギアに銃口を向ける五人に向けられ、そして絢ノ瀬に向かい冷たく言い放った。
ロギアは橘を一瞥した後、制止も聞かずにアリアの傍へと寄り添い立ち上がらせる。
「そこの五人とそこに倒れている奴を拘束して連れていけ。オレは此処で後処理をする、尋問はその後だ」
橘の鋭い指示に他の兵士達が動き始める。
橘の後ろに控えていた水琶とユズルの見知った顔の二人がロギアとアリアへと駆けて行く。
「……」
ロギアは水琶がアリアを介抱するのを眺めそれから雪崩れ込んで来た兵士達へと視線を巡らせる。
兵士はどれもしっかりと武装をしており、服装もまちまちだ。
その中で少し気になったのがそれぞれの兵士が着込んだ装備や衣服に種類の違うシルエットが刻まれている事だった。
少なくともざっと見回す限りこの場に三種類程見受けられる。
「あれが派閥って奴か……」
橘の話を頭に思い浮かべる。
“流石に事が大きくなり過ぎた、かな……”
ロギアがしばらくそのシルエットを眺めていると「貴方も手を貸して下さい」水琶のその言葉に我に返ったロギアはアリアの傍に移動し、少しでも不安を和らげようと声を掛けた。
アリアが落ち着きを取り戻した時、その場の空間に居る兵士達の視線がロギアとアリアに集中し、ロギア達が顔をそちらに向けずともその視線が改めて嫌と言う程肌に伝わって来る。
その中でも何処か落ち着かない不快な意図を持っているであろう視線を薄々と感じ取りそれがロギアの顔に判りやすく現れ、水琶やユズルもそれに感づいたらしくお互い顔を見合わせた。
ロギアが兵達の方へと視線を動かすと、どのシルエットに関わらず不気味さからかロギアと目を合わせずわざわざ視線を外す者もチラホラ見える。
“一枚岩じゃない、ねぇ……”
橘の言葉を思い返しこの状況に嫌悪感を抱きながらも、これからも油断は出来ないと自身の感覚を周囲の自分達に注がれる視線に向ける。
そして話の決着がついたのか橘がこちらへと歩いて来る。
「あー……少しばかり厄介な事になったな」
橘がいつもの砕けた感じにロギアへと声を掛ける。
「ああ――見ての通り、な」
「あ~……」
橘はロギアの視線の先、シルエットが違う者達へと顔を向け何か言い淀んだ後頭を掻き溜息をついた。
「悪いが……えーっとなぁ……これからの予定だが当初話していた物に結構な変更が付け加えられる事になった」
バツが悪そうに橘はその飄々とした顔に苦笑いを浮かべる
「――変更ね……」
ロギアはチラリと自らが倒した男達へと向ける。
「少年等はほぼ無実だってのはオレにもいや、誰から見ても判断出来るが……多少なりの大事になっちまったみてーで。此処に水琶でも残しておくべきだったかな、まぁ今更だが……後々の事を考えてちょっくら根回しが必要になった」
「根回し……か」
橘のあからさまな言い方からしてややこしい派閥同士のやり取りだろうとロギアは推測出来る。
そんな事に関わるとろくな事になり兼ねない事も容易に想像出来た。
「二人の安全を確実に確保する為にも少しばかり時間をくれないか?」
申し訳なさそうに橘は頭を下げ、ロギアも渋々と返事をする。
「――その時間、俺達を拘束するって事か……」
「……まぁ、そんな所だ」
バツが悪そうに答え、これ以上言っても仕方ない事と考えロギアはアリアへと視線を送る。
“流石にもうヘトヘトか……”
アリアの体調の事も考え流石にそれでしか手を打つしかないと結論付け、ロギアは橘の提案を受け入れざる負えなかった。
「――ああ、宜しく頼む」
突っかかって来た男の態度と言い、目を不自然に逸らす連中といい、上手い事自分達が乗せられている様で癪に触ったがロギアは渋々橘の指示に従う事にした。
この度は第50話を読んで下さりありがとうございました。
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