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ワガノワ・メソッド:キーロフ出身の漢がバレエの真実をぶった切る  作者: はまゆう


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第4話 【核心】ワガノワは何を目指してるんですか?

「先生、ワガノワ・メソッドって、結局何がゴールなんですか?」


この質問、本当によくされる。

若い奴も、ベテランも、みんな聞く。


でもな、答えを聞いて、

「え?そんなの?」 って拍子抜けする奴も多いんだ。


今日はな、その「拍子抜け」の正体も含めて、

ワガノワが本当に追い求めてるもの、教えてやる。


---


ある日、楽屋でかわされた「会話」


今からもう20年近く前になる。

キーロフの大先輩と、楽屋で話してた時のことだ。


俺が若かった頃は、こういう先輩に

「どうやったらあんな風に踊れますか?」

って、しつこく質問してた。


その日も、思い切って聞いてみた。


「先輩の踊り、なんであんなに無駄がないんですか?何を目指してるんですか?」


先輩、しばらく黙ってた。

で、こう言ったんだ。


「邪魔するものを、全部取ってるだけだよ。」


その時は意味がわからなかった。

「邪魔するもの?」って。

もっと技術を積んで、もっと表現を足すのが上達だと思ってたから。


でも今ならわかる。


ワガノワが目指してるのは、「何かを足すこと」じゃない。

「余計なものを削ること」だ。


---


ワガノワの本質は「削る」こと


お前ら、勘違いしてないか?

「ワガノワ・メソッドを学ぶ=新しい技術を身につける」

そう思ってないか?


違うんだよ。


ワガノワでやることは、

生まれつき身体に染みついた「クセ」とか「余計な力」を、

一つずつ削っていく作業だ。


プレパラシオンで手を構える。

その時、肩に力が入ってるなら、それを「削る」。


第1に腕を上げる。

その時、脇が閉まりすぎてるなら、それを「削る」。


第3を通って第2に開く。

その時、肘が落ちてるなら、それを「削る」。


延々と続く「削る」作業。

地味だ。華やかさは一切ない。

でも、これをやるかやらないかで、10年後が決まる。


---


「美しさ」は足した結果じゃない


世の中の多くの人は、

「美しい踊り=何か特別なものを身につけた人」

って思ってる。


でも違う。


美しい踊りってのは、

「余計なものを全部削り落としたら、残ってたもの」

なんだよ。


彫刻を思い浮かべてみろ。

ミケランジェロは言ったそうだ。

「像はもう石の中にある。余計な部分を削れば、現れるだけだ」って。


ワガノワも同じだ。


お前の中にはもう、

完璧な踊りが「ある」んだよ。

でも、生まれつきのクセとか、間違った癖とか、

変な力みとか、そういう「邪魔なもの」に覆い隠されてるだけだ。


ワガノワ・メソッドは、

その「邪魔なもの」を削るための、最も効率的な道具だ。


---


じゃあ、何を「削る」のか


具体的に言ってやる。

ワガノワで削るもの、3つ。


1. 余計な力み


お前、アダージオで肩、上がってないか?

ターンで手首、固まってないか?

ジャンプの着地で膝、ロックされてないか?


全部、「必要ない力」だ。

踊るためには必要な力もある。

でも、それ以上に「必要ない力」の方が圧倒的に多い。


ワガノワの順番は、

その「必要ない力」を暴き出すための設計図なんだよ。


2. 身体の「分断」


お前の腕、背中とつながってるか?

脚、体幹とつながってるか?

それともバラバラに動いてるか?


ワガノワは「全身が一つ」を目指す。

指先からつま先まで、全部つながってる状態。


これを邪魔するのが「分断」だ。

肩だけで腕を動かす。腰だけで脚を動かす。

そういう「部分だけの動き」を、全部削っていく。


3. 見せかけの「表現」


これ、一番やっかいだ。

「情感を出そう」って、顔だけで泣き真似する奴。

「ドラマチックに」って、手首だけヒラヒラさせる奴。


そういう「表面だけの表現」は、

むしろ踊りを浅くする。


ワガノワで目指すのは、

「何もしなくても、そこに何かがある」状態だ。


何も余計なことをしない。

でも、そこに立ってるだけで、何かを感じさせる。

そんな身体になること。


---


「削る」の先にあるもの


「先生、そんなに削って削って、何が残るんですか?」


いい質問だ。


残るもの。それはな、


「お前自身」だ。


偽りの力みが取れたとき、

偽りの分断が取れたとき、

偽りの表現が取れたとき、


そこに現れるのは、

「ワガノワのコピー」じゃない。

「お前という、ただ一つの存在」だ。


ワガノワが最後に目指すのは、

「その人にしかできない踊り」なんだよ。


逆説的だろ?

めちゃくちゃ厳密なメソッドを積み重ねた先に、

「型」じゃなくて「個性」が現れる。


---


ある日の大先輩、続き


さっきの大先輩の話、続きがある。


「邪魔するものを全部取ってるだけ」

そう言った先輩に、俺はさらに聞いたんだ。


「それって、いつまで続けるんですか?」


先輩、笑ったよ。


「死ぬまでだろ。当たり前だ。」


ワガノワにゴールはない。

完成もない。

ただひたすら、削り続ける。


でもな、それでいいんだ。

削るたびに、お前はもっと「お前」になる。

削るたびに、踊りはもっと自由になる。


「自由」ってな、何でもできることじゃない。

「余計なものが何もないこと」だ。


---


次回予告


次回からは、いよいよ実践。

「ポール・ド・ブラって、何ですか?」


「腕を動かすんじゃないなら、何をしてるんですか?」

この問いに、具体的に答えてやる。


第5回、待ってろ。


---


いいなと思ったら応援しろ。

削る作業、一緒にやろうぜ。


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