93.居酒屋改革
王国歴329年4月の終わりに、俺は領都ネイメーに戻ってきた。領都に戻ってきた俺は、たまっていた仕事を片付けると、懸案であった居酒屋改革に着手することにした。
このままではあまりにも健全過ぎる。俺の奴隷ハーレム計画とは程遠い。少なくとも、前世の記憶にあるような、激しいテンポの曲が流れ、ちょっと薄暗く、天井にはミラーボールが回り、天井からはスポットライトが降り注ぐ、そして客がホールで音楽に合わせて踊る。いわゆるディスコの様な物にするのである。
まず、居酒屋を隣の部屋と一緒にして間仕切りを取って、ミニコンサートができるくらいの大きさに広げた。そして、舞台の前の客が踊れる空間をさらに広くし、客席も増やした。
そして室内照明を、明るさを薄暗がりから昼間の明るさまで段階的に調整できるようにした。そしてホールの天井にミラーボールとスポットライトを設置した。
そして舞台やホールにスピーカーを設置して大音響の音楽が流れるようにした。スピーカーについては、入力した音の流れにより、出力用に作った高出力の音の流れを調整するように2つの魔法陣を組み合わせることによりできた。同様にマイクも作った。おまけとして細いペン型の照明棒も作ってみた。
次に楽器の製作である。まず、前世の記憶にあるシンセサイザーやドラムやギターのような楽器を作ることにした。
シンセサイザーについては、まったくわからん。すぐに挫折した。結局ピアノで代用することにした。
次にドラム、これはすぐにできた。
次にギター、これもギターは出来たが、エレキギターは結局できなかった。舞台にはピアノとドラムとギターを配置した。
次にバンドの育成である。俺の部下の中から楽器の演奏をしたい者を募集した。応募してきた者に順にピアノとドラムとギターを演奏してもらい、6人を選抜した。
内訳はピアノとドラムに男性2人、ギターに男性1人と女性3人である。これでバンドを結成してもらった。バンド名はネイメー伯爵家バンドとした。
「あまりにも安直なので、後で変更しても構わん」
と言った。
俺の前世の記憶にあるディスコサウンドの楽譜をいくつか作って、ネイメー伯爵家バンドに演奏してもらった。そして、男性客が多い時は女性に歌ってもらい、女性客が多い時は男性が歌うように指導した。
そうやって練習していると、音を聞きつけて、昼間にもかかわらず人がやって来たので、彼らには細いペン型の照明棒をもってホールで踊ってもらった。
「どのような踊りをするのか」
と聞かれたので
「適当に体を動かせ」
と言った。
ついでに辺りを暗くしてミラーボールを回転させ舞台のバンドにスポットライトを当てた。
そしたらクララもやってきた。
「お父ちゃん何しているの」
「バンドの練習しているのだよ、クララも踊るか」
「踊る」
そう言って、俺と一緒に踊り始めた。
最初は俺のディスコダンスを見よう見まねで踊っていたが、慣れてくると俺よりうまい。踊りのセンスもあるみたいだ。
ボーカルの女の子に、
「ちょっといいか、クララに歌わせてみたいのだけど」
と言って代わってもらった。「クララ&ネイメー伯爵家バンド」の誕生である。
うまい、クララは歌と踊りのセンスがある。
「しかし、ここでずっと、クララに歌わせているとレンに怒られる」
と思っていたら、レンとアンナとリズそれにエバもやってきた。
「何しているのですか。旦那様」
レンが少しお冠である。
「いや、バンドの練習をしていたのだよ」
「バンド」
「楽団のようなものさ。ほら舞台があるのに、誰も何もしないのはもったいないと思って」
「ふーん。わかった。それはいいとして、何でクララが勉強もせず、歌っているの」
「クララが来たから、歌わせてみただけ。クララうまいだろ」
レンのジト目が直らない。
「クララ、しばらくしたら、勉強に戻るのですよ、いいですね」
「はーい。お母ちゃん」
アンナが
「これがハルト様の奴隷ハーレム計画ですか」
「ちょっと違うけど、少しは近づいた」
音が外に漏れるのはまずいと思い、この居酒屋には厳重に防音結界を張った。
この居酒屋は意外にも女性職員に好評であった。体を自由に動かして踊るというのはストレスの発散になるようである。そうしていたら
「うちの娘の帰りが遅い」
という苦情が来るようになった。
そこで、自宅から通っている女性職員の利用は夕方6時までに制限した。5時までが勤務時間なので1時間しか踊れないという意見が出たので、月2回までなら、3時から2時間の休暇を取れるようにした。
これについては給料の減額をしない。つまり有給休暇である。これとは別に年間20日の有給休暇を全職員が取れるようにした。
これは好評で、この居酒屋は3時ごろから、落ち着いたサロンといった雰囲気から一変してディスコに様変わりするようになった。
また、ネイメー伯爵家バンドには、元の職場から離れ、バンドに専念してもらうことにした。ただし、領都の伯爵邸だけでなく、各地の駐屯地や新領地のラン地方やボタン地方も回って演奏してもらうことにした。
職員の慰問である。娯楽の少ないこの世界では、これは好評であった。
俺は今この居酒屋に来ている。薄暗い客席の後ろの方の席で隣にはエバが座っている。ホールには大音響のディスコサウンドが流れ、ホールでは客が踊っている。
俺はつまみを食いながら、エールを煽っている。
「いいか、ご主人様命令だ。このことは絶対に口外を禁ず」
と言ってエバの腰に手を回す。
「これが、俺の奴隷ハーレム計画だ。給仕の女の子はおさわり厳禁だが、妻はおさわり厳禁じゃない」
「まあ、妻はおさわり厳禁じゃないです。でも人前ではちょっと」
「わかっている。続きは部屋に戻ってする」
「それならいいけど」
「それからこれはくれぐれも誰にも言うなよ。そしたら、また連れてきてやる」
ハルトの奴隷ハーレム計画はずいぶん前進したのであった。しかし、これがレンやアンナ、リズにもばれて、
「エバだけずるい」
ということになって、結局レンやアンナ、リズとも同じようなことをした。




