74.新しい領地と領都の防犯体制
12月の社交シーズンが始まるまでに、新しく賜った領地を見に行くことにした。俺とレンが賜った領地は隣り合わせだ。俺の賜った土地がラン地方で、レンが賜った土地が隣のボタン地方である。ちなみにレンの家名は俺と同じにするそうだ。
領都ネイメーから魔道馬車で1日ぐらいの距離である。俺、レン、クララ、アンナ、リタ、それにエバも行きたいと言うので連れていった。
ラン地方もボタン地方もアムスム王国の西側に位置しており、共に海に面している。ラン地方には港もある。港については今後、余裕が出たら整備してみたい。大型帆船による外洋航海、これは男のロマンである。
しかし、ボタン地方には、漁村はあるが港と言えるようなものはないみたいだ。これについてはラン地方の港が整備できた段階で考えることにした。
ラン地方には岩塩の鉱山があり、カリ鉱石も採れる。これは朗報である。最近は液体肥料の注文が増えてシャタイン侯爵家からのカリ鉱石では足りなくなってきていたので、ここのカリ鉱石を使えば液体肥料が増産できる。
ただし液体肥料の増産は領都ネイメーの工場の増築で対応することにした。ここに工場を作るとリン鉱石や俺が作る尿素の運搬が手間である。
それからここでも、麦の連作障害の対策として農地を4分割して、
農作物を4月~11月までとうもろこし、
4月~8月じゃがいも、
10月~翌年8月まで小麦、9月~12月葉物野菜、
5月~11月まで大豆、
とローテーションを組んで植えることにした。
テンサイについてはもう俺の砂糖生産能力が限界なのと気候が違うので植えないことにした。それに、たぶん今年は旧ネイメー子爵領で5000tぐらいになる。テー公爵領でも同じくらいになる。砂糖1kg銀貨1枚では売れないだろう。
それから、旧ネイメー子爵領で行った一連の施策も同様に実施することにした。
安全対策として、領内を回って、災害が起きそうなところの対策工事と街道の簡易舗装の実施、魔道馬車による兵士の巡回による盗賊や魔物の対策と兵の駐留による安全と治安の維持を行うこととした。
また、疫病対策として、ネズミと害虫を防ぐ魔道具と交換魔石の全世帯無料配布、各村落に1つの病人の隔離用の施設と公衆便所と公衆浴場の建設。
それと各家に1か所トイレを作って、用を足す時は必ずトイレですること。また汚物はトイレに流すようにして、道や水路へ捨てることの禁止、道端や公共の場所で用を足した場合の罰金、消毒液を無料配布し、その消毒液による台所やトイレの消毒といった領主命令の発布を行うこととした。
それから気になる砂糖の値段であるが、これも厄介な問題である。旧ネイメー子爵領やテー公爵領でのテンサイの生産が進んだことにより、砂糖が1万tもできてしまった。これ売れるのかな。よくわからん。これはマリアとリタに丸投げすることにした。
売れなければ単価を下げるしかない。ヤマユリ商会ではテンサイ1tにつき金貨3枚で農家から買っている。テンサイ6tで砂糖1tできる。砂糖の生産は俺が魔法で行っている。砂糖1tの原料代が金貨18枚、俺の手間賃を金貨18枚、ヤマユリ商会の経費を金貨18枚とすると、金貨54枚までは下げられる。
今の販売価格は砂糖1kg銀貨1枚すなわち1t金貨100枚である。
「砂糖の販売価格はあまり下げたくないが、売れ行きを見て半分くらいまでなら下げてもいい」
とマリアとリタに指示した。
ユルノギ王国や辺境伯領での戦闘で帝国軍を完膚なきまでに破ったことにより、俺は帝国からは目の上のたんこぶといったところだと思う。
特に今回の戦争を主導したと言われている帝国貴族シュバルツバル公爵としては、面目丸潰れで、帝国内での勢力争いにも影響してくるところだと思う。
しかし、10万の帝国軍がほぼ壊滅した現状では、新たな戦端は開けないと思う。たぶんそこまでの余力は帝国にないと思う。
その場合手っ取り早いのは俺の暗殺だと思う。そこで、情報を得るためにシュバルツバル公爵の館に監視装置を送り込んだ。今回のゴーレムは見つかると爆散するようにセットした。また、シュバルツバル公爵の城内にも監視装置を送り込んだ。
同時に領都ネイメーにも市内の監視強化のため、いたるところに監視装置をセットした。また、伯爵邸には監視装置だけでなく、悪意のある者が侵入出来ないように結界を張った。また、もし悪意を持った者が侵入した場合、その情報が伯爵邸の執務室と警備員室のモニターに映し出されるようにした。なお、モニターのことは、情報を漏らさないよう警備員と魔法契約を結んだ。
領都ネイメーの監視装置の情報では、今のところ市内に暗殺者が侵入した形跡はなかった。しかし、シュバルツバル公爵の館に送り込んだ監視装置の情報ではすでに暗殺者を数名送り込んだようである。
そこで、ユルノギ王国とアムスム王国の国境の検問所に鑑定魔法の使える監視装置をセットした。そうしたところ、商隊に紛れ込んだ暗殺者を見つけた。
商隊はユルノギ王国の商人で液体肥料の購入が目的で、それ自体には問題がないようである。商隊の長は暗殺者のことは知らないようである。
俺は夜にその商隊の泊まっている宿に転移すると、その暗殺者に闇魔法で
「殺害の対象はネイメー伯爵でなく、シュバルツバル公爵である」
という暗示をかけた。
次の日その暗殺者がどう動くか見ていたら、その暗殺者は商隊と離れてユルノギ王国へ引き返したようである。そのようにして、送られてくる暗殺者を次々と送り返していった。
しかし、シュバルツバル公爵が死亡したという情報は入ってこない。いたちごっこである。俺も暇ではないし、12月になると王都に行かなければならない。
そんなことを考えていたら、シュバルツバル公爵が大怪我を負ったという情報が入ってきた。一命はとりとめたようであるが、現役復帰は無理のようである。表向きは病気療養とするらしい。
その後も時々暗殺者が来るようである。男の暗殺者は興味ないのであるが、女の場合はすごく興味がある。この世界は美男美女、暗殺者も例外なく美人である。そんな美人と戦うのである。〇〇は無理でも、〇〇ぐらいは、妄想が止まらない。
一度、女の暗殺者と戦った時、女の暗殺者の着ている服を少しづつ斬っていったら、駆けつけたレンがすごくお冠である。黒いオーラがとまらない。そのうち女の暗殺者が口から泡を吹いて倒れた。レンのオーラにあてられたようである。その後、その女の暗殺者は尋問されたが、俺は関わらせてもらえなかった。そして、今後女の暗殺者が来たときは、レンが対応することになった。
しかし、レンの場合、うまく手加減してくれればいいのであるが、焦って、手加減なしでするとすぐに挽肉である。すると、暗殺者の尋問もできないし、なにより後で掃除するメイドがたまったものではない。最初にメイドに掃除させたときは何人かのメイドが失神した。そこでやはり俺が対応すべきだと主張したのだがレンの意志は固い。絶対に譲ってくれない。仕方がないので挽肉になりそうなときは、暗殺者に結界を張って守るというおかしなことになっている。中々暗殺者の対応は大変である。
俺は12月になってもすぐに王都にはいかずに、王宮でのパーティーの開催される日のぎりぎりまで、領都ネイメーの防犯体制の構築に努めた。表向きは
「不審者に命を狙われたので、領地に引っ込んでいる」
ということにした。
そして、その間を利用して、伯爵邸で働く者すべてに、もう一度鑑定をかけスパイの洗い出しを行った。その結果メイドが数名俺たち家族の予定を外部に漏らしていたようである。
これについては帝国がらみか、アムスム王国の他の貴族がらみかは分からないが、そのようなメイドは解雇して、もう一度伯爵邸で働く者すべてに風紀の徹底を指示した。




