36.歓迎パーティー
学園が始まって1か月くらい経った。来週新入生の歓迎パーティーが開かれる。
貴族のパーティーと言うとダンスが必須であるが、俺もレンもうまく踊れない。最近は夕方公爵邸に戻ると、夕食後ユリアーネお義姉様指導の下、俺とレンはダンスの特訓である。
お互い足を踏まれるので、魔力の防具をつけている。最近はレンの魔力の防具も進歩して、ドレスだとそれまではドレスの下にセットしていたのが、今ではドレスの上からでもドレスの質感を損なうことなく、セットできるようになった。
結局、ユリアーネお義姉様の合格点をもらえなくて、俺とレンはほかの人とはダンスを踊らないことになった。レンがダンスに誘われることはないだろうが、ハルトは誘われるかもしれないので、その時はうまくあしらうように言われた。
パーティー当日になった。服装はタキシードとかスーツとかいうらしいが、よくわからない。公爵家の執事にお任せである。これを着てと言われたものを着ている。公爵家で仕立ててもらった。いくらするか恐ろしくて聞けない。服が汚れたり傷ついたりしないように、服の上から魔力の防具をセットした。
ヤマユリ商会の収入からするとこれぐらいの服は俺も余裕で買えるだろうが、元平民の俺としては、服は着られればいいと思ってしまう。レンも同じようである。青い顔をしている。
ちなみにヤマユリ商会はマリアンヌさんにお任せである。俺は、時々届く、在庫が少なくなった商品を追加で作って、マジックバッグに入れて公爵家に頼んで領都に送ってもらっている。
最近は、これまでの陶磁器(小銀貨5枚)、照明パネル(銀貨1枚)、に加えて、石鹸(小銀貨1枚)、洗髪用液体石鹸(小銀貨1枚)の注文が増えているとのこと。
なぜかほかの領地の商人も来ているようで、大口の注文が入ることもあるそうだ。
俺としては他の町にヤマユリ商会の支店を出す気がないので、
「頑張って」
とだけ返事をしている。他の町に支店を出すようなことをすれば、俺の自由な時間が無くなってしまう。
3人馬車に乗って、学園に行った。パーティー会場は学園の講堂である。会場にはすでに多くの学生が来ていた。
この世界の人は美男美女である。貴族の令息や令嬢が着飾った姿を見るのは福眼である。
令嬢のドレス姿に見とれていると後から殺気がする。レンは相当お怒りのようである。しかし、無視である。何かするわけでなく見るだけなら、浮気ではない。これが俺の言い訳である。
生徒会長の挨拶の後、パーティーが始まった。最初は生徒会長が婚約者と踊るようである。これが終わると各自自由に踊れるとのこと。
俺はレンと踊った。これが終われば今日のパーティーは無罪放免、後は食べることに専念すればいい。
俺がレンと踊った後、ユリアーネお義姉様のところへ戻ると、ユリアーネお義姉様はまだ誰とも踊っていないようだ。俺と踊るとのこと。どうも特定の人を作るのは嫌なようだ。家族なら問題ないだろうということらしい。よくわからん。
そのあと誘われるままに何人かと踊っていた。俺とレンは現在壁の花である。
クラスの女の子から誘われたが、ダンスはまだユリアーネお義姉様の合格点をもらっていないので足を踏むと言って断った。
レンは誰も誘いに来ない。予想どおりである。
暇なので索敵をしたら会場の外に誰かいる。用心のために監視装置を送って監視することにした。
「ねえ、ジント様、今日の私綺麗?」
「ああ、とても綺麗だよ、世界中で一番だよ」
「うれしい。カタリナ様と比べてどう」
「カタリナ、比べるまでもない。あんな陰湿な女、あの女といると、息が詰まる」
何となく、いけない会話のような気がする。男は女の腰に手をまわし、女は男の体にしなだれている。帰ってユリアーネお義姉様に相談することにした。
公爵邸に帰ってから、監視装置のことは秘密にしたかったので、気晴らしに外へ出たら会話が聞こえてきたので、記録したことにした。
記録する魔道具のことはあまり人に言わないように願いして、ユリアーネお義姉様に監視装置の映像と音声を見せた。
そしたら、ジント伯爵令息とカタリナ侯爵令嬢は婚約中とのこと。侯爵家にこのことが知れると間違いなく婚約解消とのこと。
「見なかったことにできませんか」
と言ったら
「そんなことをしたら、こちらにも責任が及ぶ。明日カタリナ様にこの映像を見せる。この魔道具はしばらく私が預かる」
とのこと。
次の日ユリアーネお義姉様は出かけて行った。
「俺は関わりたくない」
と言って固辞した。
帰ってきたら、あの魔道具は、侯爵家に貸すことになったそうだ。
「売ってくれ」
と言われたが、
「公爵家の秘蔵の魔道具だ」
と言って断ったそうだ。
今後の結論は言わなかったが、ユリアーネお義姉様の予想では、多分伯爵家の有責での婚約解消だろうとのこと。
しばらくして、学園に婚約が解消になったとの話が流れた。貴族はこういう話が好きなようだ。
結局、伯爵家有責の婚約解消、伯爵令息は学園を退学して、領地で謹慎、相手の男爵令嬢も学園を退学したそうだ。
俺としては
「俺が恨まれなければいい」
そう思っているのだが、
「この会話を記録したのは俺かレンのどちらかだろう」
といううわさが流れているようだ。
「しばらくおとなしくしていよう」
そう思っている。




