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sfad  作者: せたがめ
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オリキャラ小説(test)

「おい藤灘、てめェまた事件現場に入ったんだってな?勝手に入るなっつってんだろうが!!」


突然玄関のドアが開く音がし、事務所にドスの効いた男の声が響き渡る。


「私は近くにいた婦女警官に許可をもらったぞ?勝手には入っていないなあ」


一息置いて、軽く笑いを含んだような声で、別の男が返事をした。


「ただ女性警官を口説いただけだろうが!それにあの現場の責任者は俺だ!俺は許可してない!!」


 玄関の方を覗いてみると、長身の男二人が向かい合い、口喧嘩している。側から見れば大ごとかもしれないが、ここでは日常茶飯事だ。やれやれとため息をつき、二人の間に割って入る。


「はいはいそこまで!二人とも落ち着いて!」


「英、今は俺の仕事の話をしてるんだ。邪魔すんな。ていうか…今日もコイツの部屋を掃除させられてんのか?」


トレンチコートに身を包んだ鋭い目つきの男は、ぎろりともう一人の男の方を睨む。この人は池月常盤(いけづきときわ)。ガラが悪く見えるが、優秀な刑事である。そして、僕の兄だ。


「とんだ言いがかりだなあ。英君はあくまでも自主的に私の部屋を掃除してくれているのだよ」


そう笑顔で優雅に言い放ったのは、藤灘誠司(ふじなだせいじ)。僕の雇用主で、憧れの先生だ。私立探偵を営んでおり、警察でも手が出せない難事件を次々と解決している。


僕、池月英(いけづきえい)は藤灘先生のもとで助手をしている。家を飛び出し、藤灘先生の仕事姿に惚れ、弟子入りした。聞き込みから荷物持ち、書類の整理までなんでもやっている。特に、先生の部屋を片付けるのは大事な仕事だ。先生は片付けるのが大の苦手だ。床には大量の書類が散らばっており、机の上には色々な分野の本が積み上がっている。


「良い大人なら部屋くらい自分で片付けろ!英に片付けさせんな!!大体、英を働かせてるのだって、俺は許してねえからな!」


「そんなの英君の自由だろ?英君は自分の意思で私のもとに来たんだよ。なあ英君?」


「そうだよ兄さん!僕は探偵になりたいって言ってるだろ!いい加減ここで働くの認めてよ!!」


ぐぬぬ、と兄さんは悔しそうにうめく。


兄さんは昔からとても優秀だった。勉強もできて運動もできて、警察学校も主席で卒業した。口が悪く一見ガラが悪いように見えるが、弱いものや小さいものには優しく、特におばあちゃんたちから人気がある。要するに、能力も性格も完璧なのだ。


対して、僕は勉強も運動も中途半端、警察学校もなんとかギリギリ卒業できた程度だ。「どうして兄のようにできないのか」が、親の口癖だった。兄のようにできない自分が惨めで、家出してしまった。


そんな時に出会ったのが、藤灘先生だ。とある事件に巻き込まれた僕を助けてくれたのだ。その時、先生の手腕や心意気に惚れてしまった。先生は助手を取る気はなかったようだが、無理を言ってこうして事務所で働かせてもらっている。


兄さんは、そんな僕を連れ戻そうとしている。しかも、先生は兄さんが担当している現場でよく勝手に捜査しているらしく、いつも二人の間には小競り合いが絶えない。


「そんなことよりも、これを見てくれ、英君!」


兄さんの「おい!まだ話は終わってねえぞ!」という声を無視し、先生は積まれた本の上から何かを持ってきた。それは、綺麗な模様が施されたティーカップだった。深い高貴な青色に、金で豪華な縁取りがされている。先生は紅茶が好きで、紅茶を淹れるカップにもこだわりを持っている。こうして良いティーカップを買ってくることがたまにあるのだ。


「へッジウッドの新作でね。人気で予約できなかったんだが…依頼人の伝手で手に入れられたんだよ!あとでお茶にしよう。」


「へっまたそんなよくわかんねェ高そうなコップ集めてんのか」


「池月、君にはこの美しさはわからないだろうねえ〜。だから女性にフラれるんだよ。あのバーのお姉さんを誘って、断られたんだろ?」


先生が口元に手を当て、心底おかしそうに笑う。ああ、これは…。


「なんだと!?それとこれとは関係ねえだろうが!てかなんでてめェが知ってんだよ!?」


兄さんがソファから立ち上がり、今にも先生につかみかかろうとする。いつもこうだ…。事件を一緒に追って犯人を追い詰める時は、本当に息ぴったりなのに、どうして普段は喧嘩ばかりしてしまうんだろう…。


「二人とも!もう辞めてください!!…ほら先生!もうすぐ証人との面会の時間ですよ!兄さんもそろそろ現場に戻る時間じゃないの?」


「ああ…もうそんな時間か。そろそろ行かなくては。」


カップを机に置くと、先生は身支度を始めた。兄さんも、仕方なさそうにコートを羽織り、仕事に戻る準備を始めた。


「それでは行ってくるよ。留守番を頼んだよ、英君。」


優美な笑顔で手をひらひらと振り、先生は出かけて行った。兄さんは「ケッ」と吐き捨てたあと、


「じゃあ俺も行くわ…。いいか英、いつでも辞めていいんだからな?絶対に警察で働いた方がいい。あんな奴の元で働いてもロクなことがねえぞ。」


そう言い放って、兄さんも事務所を後にした。この小言を言われたのはもう何回目だろうか…。はあ、とため息をつくと、掃除の続きを始めた。


さて、玄関を掃いたので、次は先生のデスクの掃除だ。最近取り扱った事件の資料が床に散らばっている。


「先生、事件の内容を把握する力はすごいけど…読んだ資料を次から次へと床へ投げ捨てるんだよなあ…あれは正直辞めてほしい…」


床の資料を拾っていると…肩に何かが当たり、カチャリと音を立てた。嫌な予感がした。まさか…と思った時には遅かった。先生が新しく買ったカップが、机の上から床へ自由落下していた。


危ない!と思い手を伸ばしたが…届かなかった。カップはガチャン!と鋭い音をたて…真っ二つに割れてしまった。


そんな!どうしよう…。頭が真っ白になった。先生はこのカップを大そう気に入っていた。しかも人気でなかなか予約できなかったとか言ってなかったっけ…どうしようどうしよう!


恐る恐る割れたティーカップを触ってみたが、もう接着剤などでくっつけることは出来なさそうだ。


一度、兄さんも、先生お気に入りの時計を落として壊してしまったことがあった。あの時の先生は、見たことがないくらい怒っていた。


働き始めてからいくつか失敗をすることもあったが、先生は全て笑って許してくれた。しかし、今回は許されないんじゃないんだろうか。先生に失望され、最悪事務所を追い出される…?そんなの嫌だ!!


こうなったら、同じカップを買ってきて、誤魔化すしかない。もちろん自分の失敗を隠すのは後ろめたさがある。でも、でも…先生に失望されるよりはマシだ!


カップの破片を新聞紙に包み、棚の奥へ隠した。今持てるだけのお金を持ち、僕は先生のティーカップを探しに出かけた。



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