ぼろぼろな小屋は危ないので立ち入り禁止です
「ガルダ、アンナでございます。いらっしゃるなら出てきてください。」
庭の片隅にある二階建てのとっっても年季の入った小屋の前に立ち、声を張り上げるアンナさん。
空気をビリビリと揺らすような声を平然とした面立ちで出し続ける。
アンナさんの一歩後ろにいる私は、声に負けて建物が崩壊してしまうのではないかとハラハラしていた。
1分ほど建物に呼びかけていたが、出てくることはおろか、人の気配すらしない。
___忙しい人だって言っていたし、出かけているのかな?
「アンナさん、ほんとにありがとうございました。また後日に、私もう一度来てみます。」
アンナさんだって忙しいはずだ。ここでずっと拘束してるのも、申し訳ない気がする。
すると、アンナさんは腕を組み、眉間にしわをじわじわと刻むと、私の方を向きなおして
「いいえ、今日ガルダはいるはずです。玄関に魔法を張っていないので。」
「えっ?」
きっぱりとそういったアンナさんは、拍子抜けな声を出した私をよそに、扉の前に進む。
「上がりますよ。」
と、短く言って、錆びついたドアノブをバキッと鳴らして玄関の扉を開けてしまった。
えっ、?バキッ、って?
開いた扉から、通路いっぱいに広がった階段が見える。
私がその場で思考停止しているうちに、アンナさんは階段を超スピードで上がっていく。
「ま、待ってください!アンナさん!!!」
気づいたときにはもうアンナさんの背中は見えなくなっていた。
はやい……!流石は敏腕メイド…!!
私もあとを追うように、階段に足を踏み入れた。
すると、途端に変な吐き気に襲われた。
うっ、、なんか、船酔いしてるみたい…。
口を押えながらも、のぼるしかないぞと自分に言い聞かせて上を見上げると、、真っ暗である。
__こんな高さ、なかったはずですよ…。
いや、小学校の四階教室からの上り下りで階段には慣れてるつもりではいたけど、流石にこれは……
無理ですね。諦めます!!!アンナさんに任せよう!
私は180度回転して、外に出ようと歩き出し_
「いだっ!?」
何かにドンとぶつかってしまったようだ。
強打したおでこを押さえながら、ゆっくり目を開けると…
__なにもない。そこには、さっき入ってきたドアの向こうに外が広がってるだけだ。
あれ?おかしいな、たしかにぶつかったはず…、
確認するため、外に出ようと歩き出し_
「いだっ!!」
またまた何かにぶつかった。
__なにか、嫌なことを察してしまったような気がする…。
私はのどをごくりと鳴らして、ゆっくりと手を外に突き出す。
こ、これは…、
空を切るはずの手は、ぴったりと張り付いた。
それとなく、入口の端から端まで手を伸ばすが、ペタペタと自然に張り付いていく。
まるでパントマイム…。
しばらくペタペタしたあと、手を降ろして、その場に立ち尽くす。
「見えない壁…てことですか?」
つい声に出してしまった。
なんてこと…。
一度目を閉じてみよう。冷静に…
原理もわからないこの見えない壁に私は手も足も出ない。
けれど、この現象は十中八九魔法が関わってると思うんですよね。
そして、その魔法使いは上にいる…、
私は目を開けて、もう一度、上を見上げる。
暗い…、さっきと何も変わらない…。
…変わらない?
そりゃあそうですよ…。変わるわけがない…。
私は一歩、足を階段の上に乗せた。
「自分から!!動かないと!!!」
大きな声で自分に活を入れた私は、階段を駆け上がる。
「侵入者…、ああ、アンナか。放置でいいかな。」
薄暗い部屋に一つ、低くも高くもない中性的な声が響く。
「あれ、あともう一人、誰かいるっぽい…?」
部屋に浮かび上がった景色には、ドレスの裾をひどく汚し、なんともひどい顔つきのミリーナが階段をひたすらに駆けていた。
「へへっ、お嬢様がこんな顔しちゃって…。」
くくく、と無邪気な笑い声をこぼした者は、立ち上がり、ひとりでに動いたローブを華麗に着こなした。
「僕が直々に迎えに行ってあげよっ」




