早速ピンチ到来です!?
パラパラパラ…。
図書室に本のページをめくる音が響く。
「うーん、この本じゃないんだよなぁ~~、こっちかな?」
両サイドに大量の本を積み重ね、
次々と本をとり、ぺらぺらとめくっては、顔をしかめる私。
今、私が何をしているかわかりますか?
__答えを、探してるんです。
教師の道を歩み出した半ばで、ミリーナになってしまった私は、この世界で教員の仕事ができると知っ
て、資格を取るために以前よりも熱心に勉強をしようとやる気を出したわけですよ。
この世界で教員の資格を取る方法は、結構厚めのドリルのようなもの、○○貴族シリーズを全てやりきる必要があるらしく、知らないうちに残り3つまでやってきた私は、その3つもちゃちゃっと終わらせてしまおうと、次のドリルに進んでみたところ…、
__まったくわからない。
前のものは、復習みたいなものから始まって、そこからつながるようにわかりやすく問題が出されていたはずなのだけど…、数学的なものは見覚えのない記号が増えているし、歴史は聞き覚えがない人物の問題でびっっしりと埋め尽くされている。
おかしいな~っと思って、前のドリルとか、歴代偉人本とかを必死に確認している…、それが、今です。
けれど、一向に問題に関するヒントとかが見つからず……。
私、思うんですよ。これ、教科書があるんじゃないかなって。
ドリルの問題は、教科書の内容に基づいてるのが基本だし、正直、もう教科書の存在を信じないと、絶望感に溺れる自信があったので、私は図書館から出て、アンナさんの部屋を訪ねた。
アンナさんは私の先生をしているわけだから、資格を得たことがあるはず!
コンコン、と目の前の扉を二回のノックしたあと、
「アンナさん、今、お時間はよろしいでしょうか?」
なんでかは自分でもわからないけれど、少し緊張しながら扉の向こうに話しかけた。
「あら、ミリーナ様。いかがなされましたか?」
一分も待たずにガチャリと開いたドアの内には、小さな眼鏡をかけたアンナさんがいる。
読書中だったのだのかな。
「えっと、その…、図書館で上流貴族8を進めるために勉強をしてたんですけれど、問題がまったくわからなくて…。」
「あら、上流貴族の教本はミロカスト王国の図書館に返却しましたじゃありませんか。『すべて書き写したから返却してちょうだい』とミリーナ様が…。」
あああああっ!私は思わず頭を抱えた。
やっぱり教科書があったんだっ!しかもほかの国から借りてた本!
ミロカスト王国とは、ロースタンズよりもものすごく大きな国で、この大陸のいわゆる首都的なところだ。
ここ、ユーロベルトからは道なりで3000キロくらいはあったような…。今から取りに行くとなっても、交通費がシャレにならない…!
すると、アンナさんは悟ったように
「はぁ…、たった半日であの教本を全て写したと言っていた時点で私が気づくべきでしたね…。あの頃は忙しすぎて、細かなところに頭が回っておりませんでした…。」
な、なんて嘘をついているんだミリーナぁぁぁぁぁあ!
アンナさんに催促され勉強机に向かったと思ったら、横の引き出しから物語本を取り出して読んでみたり、机に突っ伏して寝てるようなミリーナの姿が頭に浮かぶ。
…たしかに私の記憶の中にあるミリーナは勉強大嫌いだよ?でも、根は真面目ないい子って、私信じているよ。うん。
けれど、こんな嘘をついて、ことを荒げたのはダメだったね。
「う、嘘をついてごめんなさい…。」
「私が疲れていなかったら、バレバレでした。領地の令嬢として、これからはもっと信憑性のあることを口にするように。」
と、怒った口調で私を見つめた。
嘘をついたことに謝ったんだけれども…。
「えっと、教本なしで上流貴族を進めることは…」
「まぁ、不可能ですね。」
おそるおそるでアンナさんに問いかけたが、アンナさんは迷いもなく無理といった。
そ、そんな…。
私ががっくりと肩を落とすと、アンナさんは深ーくため息をついて、
「仕方がありません。ガルダに転移を頼んでみましょう。出張が多いですから、今いるかどうか…。」
「て、転移ですかっ!?」
びっくりで声が裏返ってしまった。
説明しましょうっ。
まず、この世界には『魔力』を持って生まれる特別な人がいます。
魔力は目に見えないけれど、凄まじいパワーを秘めており、魔力を持った人はその力を利用して術に変えました。それを『魔術』といいます。
そしてっ!数少ない魔力持ちの人からさらに、物凄く強大な魔力を持った人が出てきます。
そんな人々は当時の魔術力を軽く超えており、自分たちが使える高レベルな魔術を確立させたのです。
それが、『強化魔術』ですっ!
アンナさんが言っていた転移は、そのまんま、行きたい場所へ対象者をテレポートさせることができる魔術。たしか強化魔術の1つだったから、とても強い魔力が必要不可欠だし、そもそも行きたい場所を完璧に把握しないといけないから、魔力以外にも記憶力が必須っていう、超ハイレベル魔術だよ!ああ、魔法とか魔術って、昔からあこがれてたんだよねぇ、自分が使えないのはとてもとても残念だけれど…、実物を見れるってことかぁ…、感動だなぁっ…!!
「ミリーナ様?どうなさいました?」
アンナさんに肩を揺さぶられて、ハッと脳内から戻った私。
「うぇっ、あ、はいっ!聞いております。本当にすみませんでした。」
アンナさんに向けて、私はぴしっと頭を下げた。
するとアンナさんは、やわらかく微笑んで
「…最近のミリーナ様は、勉学に大変力を入れていらっしゃるご様子、わたくしどもも心より応援しております。お嬢様がひたむきに勉学に励んでくださっていることは、私たちにとって本当に嬉しい限りなのですよ。」
アンナさん__。
やっぱり、優しいなアンナさん。
ちょっとだけ、私の恩師の飯田先生に似てる感じ。
私も、自然と口角があがっていき
「期待にこたえられるように、努力します。」
私の笑みに微笑み返すようにするアンナさんは、不意に壁にかかった時計を見て
「では、そろそろガルダのところに行きましょうか。」
はい、と短い返事をして、私はアンナさんの後ろをついて歩き出した。




