夢の道筋、発見です!
「ミリーナ様、朝食の時間でございます。」
私の側近、メイド服のアンナさんが私の部屋に入ってきた。
「承知しました。身支度を整えてから参ります。」
わたしはたっくさん鏡の前で練習した、さわやかな微笑みをアンナさんにかます。
アンナさんもにっこりと笑って、廊下から扉を閉めた。
さて、私がミリーナちゃんになってから季節は一巡し、社会常識や情勢、領主令嬢としての作法など様々なことをみっちりと叩き込まれ、人に教えられるほどまで成長した。
最初は、今までミリーナちゃんが教わったであろう知識がこれっぽっちもなかったので、流石に怪しまれるかなと記憶喪失の演技などを練習していたのだけれど、ミリーナちゃんは元々相当覚えが悪かったらしく、「また復習を怠りましたね。」と慣れたもんだとばかりに最初から教えていただけた。
一人で着るのは絶対無理だと思っていたドレスも、しゅばばっと着脱することができるようになったし、
だいぶ、この世界に慣れてきた感じだ。
「お待たせして申し訳ありません。」
私が食堂に移動したときには、お父さんはゆったりとコーヒーを飲んでいた。
「よいよい、待っとらんぞ。さあ、早く席につきなさい。」
お父さんはコーヒーを机にもどし、にっこにこで話しかけてきた。
「では、失礼します。」
アンナさんが目を光らせる。よーしっ、勉強したとおりに!
まず片方の手で椅子を弱めに引いて、もう片方を座るところに置く。
座るところをちょいっと撫でて、さっきよりも少し強い力で椅子をもう一回引き直す。
…扇子スタンバイ! さっき椅子においてた手を胸元にあるポケットまでもっていき、扇子を掴む。
扇子を取り出し、ドレスの裾を上げて一礼して、ゆっくりと座る。
よしっ!あとは扇子を開くだけ!顔の前まで扇子を上げて、両端を掴んで広げた!
……と思ったら、変な方向にねじ曲がってしまった扇子さん。
くそ~、あと少しだったのにっ!
アンナさんは大きなため息をし、お父さんは大笑いだ。
「だが、ミリーナも成長したな。前までは勉強を勧めても、まったく取り合ってくれなかったが、今は自主的にも勉強して。ほんとにっ…、成長したんだなっ…!!」
お父さんが大声で泣き出した。ちょ、ちょっと恥ずかしいな。
アンナさんが布をお父さんに手渡し、お父さんは布を目に押し当てた。
「まだまだ失敗も多いですが、ミリーナ様はこの一年、凄まじいほどの勉強量をすべてこなして、今現在、上流貴族7まで進めております。」
「上流貴族7!?!?本当か、ミリーナ!!」
「えっ、は、はい…。」
すごいではないか!とほめたたえるお父さんを、すごいでしょう、とでも言いたそうな顔で見つめるアンナさん。
えっ、そんなに進んでたんだ。アンナさん、ちょっとくらい私に言っててくれてもよかったのに…。
「ほかの領主の子息たちは、今頃はきっと中流の終盤か上流の序盤であろう。上流の7まで来てしまえば、あと3つで、貴族の子供たちへの教育講師を務められるぞ!!」
「講師ですかっ!?!?」
私はお父さんから出たワードに目を輝かせる。
「ああそうだっ!それだけではないぞ!上流10まで終われば…」
お父さんがなにか言っているが、私はそれどころではない。
講師…、それって教師ってことだよねっ!!この世界に教師という仕事があるならば、私は教師になるしかないぞ!!
よし…!決めたっ!私は教師として、この領地を栄えさせてみせる!!!




