勉強はやっておいて損はありません!
「ミリーナ様っ!いい加減に布団から出てきてくださいませっ!!」
んー!まだ目覚ましなってないし…、もうちょっと寝てもダイジョブだよ、お母さん…。
「誰がお母さんですかっ!寝ぼけてないで身支度をしてくださいっ!!」
怒った声で怒鳴り上げた誰かさんは、私がまってという隙も与えず、布団をはがした。
___なんか同じことあったような?
何やらデジャブを感じた私は、ゆっくりと瞼をひらくと…、__メイド服の女性が眉を吊り上げていた。
「えっ!嘘っ!!まだ夢なの!?!?」
「何を言って、い・ら・っ・しゃ・る・のですかっ!」
驚きを隠せなかった私に、メイド服の女性は容赦なくほっぺをつねりあげる。
「いだだだだだっ!!」
強烈な痛みに思わず声を上げた私は、その時初めて察したのだ。
夢じゃないな、これは。
「…、あの、婚約のやつってどうなりましたか?」
身支度が終わった私は、廊下を歩いて図書室へ向かっていた。
夢だからっていうのもあったけど、教師としてのプライドが騒いで彼の気持ちに答えられるようにはしたけど、、大領地の息子との婚約は、金銭的な余裕がないらしいここでの最後の頼みの綱だったのではないだろうか。
「ミリーナ様がお父様に申し出たあと、お父様は高級な速達便を使って、ロースタンズに文を出しました。今頃、届いているのではありませんかね。」
どうしてあんなことしたのですか…、と頭を抱える、メイドさんにああ、私やっぱりやっちまったんですね…と心の中で反省する。
図書室につき、私は本を探る。
この土地の字と言葉は日本語とはまったく違うはずなのに、なぜかわかるし、話せる。
歴史の本を大量に持ち出し、窓の近くのテーブル席に腰を降ろす。
__ちょっと汚いけど、質はいいんだよなぁ。
学校のビジネスチェアに座ることが多くなって、お尻の感覚が鈍ったのか、この椅子のふわふわ感と反発力は絶妙でとっても座り心地がいい。このまま寝られるよ…。
睡魔を押し切って本を読み進めると、新情報が出るわ出るわ。一番驚いたのは、ミリーナのお父さんであるユーザル・カンベールがまだ幼かった時にはこの領地、ユーロベルトは結構さかえていたらしい。
けれど、お父さんのお父さん…、だから、ミリーナのおじいちゃんが亡くなって、幼くして領主に即位したお父さんの補佐の人が、この国を狂わせた、と憎しみがこもった文でつづられている。
一人娘のミリーナこそ、この国の希望の光。と生まれたばかりの赤子を持ち上げているお父さんと共に、でかでかと書かれたチラシのようなものもあった。
・・・。
……まぁ、もう終わったことですしネ。もう忘れて、ほかの方法で頑張りましょうっ!よしっ!
「それにしても、ユーロベルトには孤児が多いのですね。たくさん記事があります。」
「当たり前でしょう。…にしても、珍しいですね。ミリーナ様が歴史のお勉強なんて。」
「そ、そうですかね~。」
私はぎくりとして、目をそらす。
そうだ、ミリーナと私とで中身が変わっちゃってることを知ってる人はまだいないよねっ、変に目立って、『ミリーナ様だけど、ミリーナ様ではない!処刑だ!』とかなったら大変だよ~!
目立たず、焦らず、この世界に慣れていこう。
ほかのことを考えるのはそのあとだ。




