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チームワークのくそったれ!

暦4562年、世界は危機的状況に陥っていた。

その原因は、惑星外知性生命体・・・通称エクスだった。今から約20年に突如、惑星イーセリオに対して侵略を開始したエクスは、1年も経過しないうちに大陸の4分の1を制圧し、人類の約40パーセントを死滅させた。もちろん、イーセリオの人類達も黙っていた訳ではない。しかし、エクスに対して従来の兵器は、ほとんど効果がないばかりか全く対応する事が出来なかったのだ。日に日に迫ってくる絶滅の足音に人類は、屈しかけていた。だが、ある兵器の登場によってその戦況は、一気に互角へと引き戻らされる事になる。

人型機動装甲兵器―AF。

究極の汎用性を備えた人型兵器は、強力無比な戦闘力を用いてエクスを駆逐し、遂に人類は、約40パーセントの領土を奪還することに成功した。

しかし、いつ新たな新種を出して来るか分からないエクスに不安と危機感を抱いた連合政府は、あるプロジェクトを立ち上げる。

それが、センチネル・プロジェクトである。



第1章  ロンリーウルフ

世の中には、二種類の人間がいると俺は考えている。

運の良い奴と悪い奴だ。

でなければ、なんのミスもしていない俺がわざわざ辺境の基地に転属となり何時間もかけていく理由が見つからない。

「おお!蒼海、見てみろ!」

急にでかい声が俺の耳元で炸裂した。

「っ~~~~~!!??」

驚き声にならない悲鳴をあげて目を開いた。

どうやら眠っていたらしい。

「やっと起きたな!」

そんな声がして視界に狼の顔がアップになった。

いや、正確に言えばシベリアン・ハスキー種の犬人である。

「里緒・・・お前、なんで耳元で叫んだ?」

俺は、目の前の犬人―狗神 里緒を睨んだ。

「さっきから何度も呼んだぜ?しょうがねぇだろ。それとも、目覚めのキスが良かったのか蒼海?」

冗談めかして言う理緒に俺は、冷静にアッパーをくれてやった。

「痛ぇぇぇぇぇぇ!!!!???」

絶叫し、顎を押さえジタバタもがく理緒を尻目に俺―白峰 蒼海は、輸送機の窓から外を眺めた。

眼下に広がっているのは、海と森に囲まれたかなり広大な敷地を保有している軍事基地だった。

センチネルプロジェクトの為に新設された基地・・・ハルツエイド基地である。

「へぇ、思っていたよりかなり広い基地だな。」

蒼海は、感想を口にしていた。

「まぁ、これぐらいなきゃ、今回の計画は出来ないんだろうな。」

理緒は、シートに身を沈めながら呟いた。

すると、機内に着陸体勢に入った事を告げる電子音声を流れた。

その時だった。

機体に凄まじい震動が走ったと同時に緊急事態を告げるアラームと緊急事態を告げる電子音声が鳴り始めた。

「ちぃ!なんだ!」

里緒は、舌打ちをしながら座席から立ち上がったが、一方の蒼海は、

既にパイロットに繋がる無線をかけていた。

「パイロット」

「イエスサー、何でしょう。」

パイロットは、冷静に返事を返しながら機体を立て直そう

としていた。優秀な奴だ・・・蒼海は、感心しながらも無線を開いた。

「何があった?」

「ハルツエイド基地内より本船に対する攻撃を確認。恐らくAFによる砲撃または銃撃と確認しました。」

「何?(・・・だとしたら狙いは、俺たちか。)」

蒼海は、この緊急事態に違和感を感じつつ一番可能性の高いモノを考えた。

ならば、する事は限られてくる。

「パイロット!」

蒼海は、無線に呼びかける。

「イエスサー、何でしょうか。」

「ここで降りる。後部ハッチを開けてくれ。」

冷静に蒼海は、告げた。無線の向こうにいるだろうパイロットは、一瞬、沈黙した。

「だ、駄目です!!白峰大尉らの機体には衝撃吸収機構が外されています!

いくら大尉達だとしても・・・」 

「現在の高度は?」

蒼海は、明らかに無視しながら訊ねた。

「は・・・?げ、現在の高度は1200フィートです。」

1200だと?なら余裕だ。

蒼海は、口の端を持ち上げて笑った、まさに余裕の笑みだった。

「大丈夫だ。心配しなくても今まで何度も経験している事だ。たとえ最悪の事態になっても君達の責任じゃない。それに今でないと下の奴が本格的に撃ってきそうだからな。」

蒼海がスラスラと理由を述べる。

「・・・分かりました。では、3分後にハッチを開放しますので準備をして下さい。」

遂にパイロットは折れたのか、そう言って無線を閉じた。

「ありがとう。」

蒼海は、無線を置いた。すると、

「そら!」

里緒の声と同時に何かが蒼海に向かって投げられた。それを蒼海は、見もせずに受け止めた。

「サンキュー!里緒!」

礼を言う蒼海。そして、腕の中にあるのは、ウェットスーツの様なものだった。

これは、パイロットスーツと呼ばれる物で戦術機に搭乗する際に中の機器や機構との摩擦や接触による怪我を防ぐものであった。

「さっさと着ろよ。時間ねぇんだろ?」

ニヤリと笑いながら急かす里緒。だが、その時には、既に蒼海は着終わっていた。

蒼海自身のパイロットスーツは、蒼と純白のツートンカラーに塗り分けられており、全身の各所に保護用のプロテクターが組み込まれていた。

対する里緒のパイロットスーツは、黒と深紅のツートンカラーで塗られ同じ様にプロテクターが組み込まれてあった。

「相変わらず、里緒が着るとガッシリしているよな。」

「ハハハ、蒼海が細すぎるんのだよ!もちっと食って体を鍛えろよ。」

ドンと厚く逞しい胸板を叩く里緒に苦笑するしかない蒼海。

そして、2人は輸送機後部にあるAF格納庫に向かった。

そこには、非常灯の薄暗い灯かりが鎮座する二機のAFのシルエットを浮かびあがらせていた。

そして、2人は、それぞれの愛機のコックピットに入り込んで気密ハッチを閉じた。

「気密安定域の到達を確認・・武装及び内部兵装の異常無し・・・全システムオールグリーンを確認・・蒼牙、戦闘出力30パーセントで起動する。行くぞ!蒼牙!」

蒼海は、愛機―蒼牙に呼び掛けた。すると、その呼び掛けに応えるかのように蒼牙の外部情報機関であるアイカメラに光が燈った。

その横でもう一機のAFが立ち上がった。

「FCS(火器管制システム)及び索敵系システムオンライン・・・装甲状態良好を維持・・・全武装異常無し・・紅爪、戦闘出力30パーセントで起動。行くぜ!紅爪!!」

蒼牙と紅爪の両機が立ち上がると今まで無機質な白の装甲に染み出すように色がついていく。蒼牙は、深い海を連想させる深蒼。紅爪は、灼熱の炎を思わせる深紅。

そして、なによりも目を引いたのは、二機の武装だった。

蒼牙は、両腕に魚のヒレを連想させるブレードを備え、更に両腰に刀と呼ばれる剣を装着し、さらに背中に二振りの大剣を備えたまるで、蒼の鎧を纏った剣士のようであった。

また、紅爪は、蒼牙とは正反対の印象を持たせた。

紅爪は、両方のマニュピレーターに巨大な銃器を持ち、背部の武装ラックには、これまた長大なガトリング砲と長遠距離一掃型レーザーキャノン砲が装備されており、さらに、追加装甲と共に内部火器を多く備えているようであった。そして極め付きは、重厚なシールドだった。さながら、動く砲台か紅の重鎧を纏う巨漢の戦士のようであった。

「両大尉、準備は、宜しいでしょうか?」

メインモニターにパイロットのバストアップ画像が表示される。意外と若い自分達と同年代のように思われた。

「ああ、ハッチを開いてくれ。」

蒼海は、パイロットメットを被りながら応えた。

「了解。ハッチ開放します!白峰大尉、狗神大尉御武運を!」

その声と同時に二機の戦術機が黄昏の光が染め上げた空に飛び出していた。

一瞬、胃が持ち上がるような浮遊感の直後、機体は、重力に従って自由落下を開始した!

「地表まで残り670フィート・・・そろそろか。」

蒼海は、背面に装備された飛翔ユニットを展開して、風に乗った鳥のように飛翔し始めた。

「いい風に乗れるか?」

そう1人呟いた。

「相変わらず、変わったやり方が好きだな。」

里緒は、モニター内で滑るように動く蒼牙を見つめながら笑った。

「さてと、俺も降りるかな。」

そう暢気に言っている間にも地上は迫ってくる。

すると紅牙は、武装ラックからレーザーキャノン砲を引き出した後に腰だめに構え、ゆったりとした動作で地上に銃口を向けながらチャージを開始・・・

そして

「トリステル・・シュート!!」

その瞬間、銃口から竜の咆哮を彷彿させる発射音が大気を震わせた。

巨大な光柱が地表に衝突・・・巻き上がった風と重い反動が機体の落下速度を大幅に削りフワリと着地に成功した。

「よし、大成功!」

里緒は、満面の笑みで言った。

「こっちもオーケーだ。」

蒼海も飛翔ユニットを巧みに操って着地した。

「さてと、索敵開始だ。」

里緒は、熱源探知識別装置の索敵エリアを拡大させていく。



「へへへ。新入りさんが降りてきたぜ。」

そう舌なめずりして呟くのは、オルドクスの主力機体 ガーベラのパイロットである。

「ま、まずいんじゃないんですか?」

傍らにいるのは、ノーバディ軍の砲撃・索敵専用機ホルツであり、

こちらは、勝手に威嚇射撃を行った上官に不安の色を隠せないようだ。

「うるせぇ!若造の機体に頼るなんてこちとら御免なんだよ!!」

もはや、発砲の理由の意味が分からず沈黙するホルツのパイロット。

そうさ、今までもアクアエリアスの奴らが気に食わなかった!

災害や民間の事にAFを使って軍隊というよりも正義の味方といった行動をとり続ける奴らを誰も心良く思っている軍や組織はなかった。

その時、コックピット内にロックオンされた事を告げる警告音が鳴り響いた。

「なに!こんなに早くか!!?」

動揺するガーベラのパイロット。

「こちらは、本日付で、ハルツエイド基地に派遣されたアクアエリアス所属の者だ。なぜ、攻撃を行った?」

それと同時に無線から若い男性の声が聞こえた。

「お手並みを拝見したい。実力がどれほどのものなのかをな!」

ガーベラのパイロットは、至近距離から貫通弾装填の突撃銃を発砲した!

重厚感のある金属同士が衝突する独特な音が響き渡る。

しかし、異変が生じたのは、発砲したホルツの方だった。

「な、なんでだ・・・・?!??」

ホルツのパイロットは、愕然としていた。

コックピット内に響く警告音・そして表示される戦闘不能の文字

ほんの一瞬の間に四肢を破壊されてしまったのだ。

「これで宜しいでしょうか?」

蒼海は、無線で呼びかける。

呼びかけと同時に蒼牙は、右腕に装備された大型ブレードを展開し コックピットに突きつけていた。

それは、あなたなんてすぐ殺せるぞ?と言う明確な意思表示でもあった。

「は・はい!!」

ホルツは、完全に怯えてしまった。その声の様子に既に戦意はないと判断して蒼海は、刃を収めた

「申し訳ありません、大切な愛機でしたのに。」

申し訳なさそうに謝罪をした。

その時だった。

蒼海は、蒼牙を反射的に飛び退かせた。

それは、野生のカンに似たようなモノだった。

まさにその瞬間、蒼牙が立っていた場所が何かに抉れた。

「・・・・狙撃か!」

「蒼海!」

里緒は、紅爪を蒼牙の前に滑り込ませるとまるで守るかのように立った。

「なんだってんだよ今日は!味方に攻撃されるためにこんな所まで来たんじゃねぇぞ!!」

里緒は、ついに苛立ちがピークに達したのか怒鳴った。

「全くだよ!」

蒼海もまた苛立っていた。

もしかしたら、この任務は自分達を消すための任務だったのでは?と考えたくなる。

「っちぃ!!!」

里緒が苦しそうな声を出す。

先程から狙撃される弾丸が紅牙の構えるシールドに命中し続けているのだ

「・・・里緒」

「アン?なんだ相棒!?」

「アレやるから援護してくれ」

蒼海は、静かにそう呟くように里緒に言った。

「・・・はぁぁぁ!?馬鹿かお前は!計画前なのにあれ使っちまったら、

それこそ大目玉だぞ!!?」

里緒のバストアップ画像が理緒の顔でいっぱいになった。

「とにかくなんとかしないとこのまま殺られて、二階級特進で中佐なんて墓標に刻まれたくないからね。大丈夫、30%しか出してないからさ。」

ニコリと無線画像に映る理緒に向かって笑う蒼海。そして、モニターに触れた。


一方、その狙撃した人物はといえば・・・・

「ん~~?あの紅い奴がんばるなー。おまけに装甲もかなり固そうだ。」

輸送機の側面ハッチから巨大な戦術機用のスナイパーライフルを覗かせた

機体の中で彼は、眉間に皺をよせていた。

美しい漆黒の毛並みは、黒ダイヤを連想させ、さらに両方の瞳は漆黒の中でも栄える黄金色をしていた。豹人特有のしなやかな体は、ある意味、女性的にも見える。

「まだ仕留められねぇのか?マーズ。」

急にマーズの無線に不機嫌そうな顔をした銀灰色の毛並みの男が映された。

「もうちょっとだよ、ジェードの旦那。あの蒼い方は、簡単そうなんだけどさ、紅い奴が守ってるうえに装甲が固くてさ。」

二ヘラと笑うマーズに対して、ジェードは、フンと鼻で笑った。

「さっさと始末しろ。人間や犬人は、目障りだからな。」

「でも、旦那。あいつらは、今日から味方だよ?これじゃ、大問題だ。」

マーズは、不満そうな顔をして反論した。

「いいから黙って殺れ!」

ジェードは、牙を剥き出しにして、まるで、ジェードに噛みつかんばかりに吼えた。

「はいはい、旦那の人間と犬人嫌いは、相当なもんだね。それじゃあ、

女にモテないよ?人間と犬人の女ってけっこう美人が・・・・・」

「黙ってトリガーだけ弾け!!!!!!」

ジェードは、輸送機内に響く程の音量で怒鳴った。

「ハイハ・・・。」

マーズが、相槌を打とうとした時、コックピットに警告音が響いた。

「なっ!?」

そして、メインモニターに目を向けた瞬間、そこに映し出されたのは・・・

蒼牙だった。

「くらえぇぇ!!!」

蒼牙は、高機動モードの加速を載せた右マニュピレーターをマーズの搭乗している機体のヘッドに叩きつけて、そのまま輸送機から体当たりの要領で落としたのだ。

「なんだとぉぉぉぉぉ!!」

虚しく無線機からジェードの悲鳴が聞こえた。

しかし、既に蒼海とジェードは、聞いていなかった。

なぜなら・・・・。

すでに二機は、互いに狙いを定めていたからだ。

「(この人、この距離で俺にマシンガンを向けきった・・・。)」

「(こいつ・・・人間のくせにあの高機動戦に対応しやがった。向けるので

精一杯だったぜ。)」

膠着状態に陥った二機、しかし、

「おやおや、そんなに無防備な後姿を晒していいんですか?」

急に背後に熱源と気配が生まれた瞬間、モニターにやけにぎらつく、鎌が映し出された。

「しまっ・・!!」

目の前の敵機に注意が行き過ぎていたために、後方に控えていた別の敵機に気がつかなかったのだ!考えれば、ここは、オルドクス軍の戦術機専用の輸送機である。他に仲間がいても不思議ではない!

まさに、絶対絶命のピンチに陥った蒼海、しかし、その危機はすぐに引っ繰り返された。

「どっせいぃぃぃぃ!!」

輸送機が急に傾くのと同時に里緒の声が無線から響いた。

「その鎌をどけやがれぇ!」

里緒は、長距離一掃型レーザーキャノントリステルを構えて吠える。

誰でも見て分かるが、そこには、ブラフの雰囲気など微塵もなかった。里緒は、蒼海の事になると、すぐに感情的になってしまいこのようないきなり、本気モードになるのだ。

「おやおや。こんなところでずいぶんと物騒な物を持ち出しましたね。」

「そんな鎌出してる奴に言われたかねぇよ。」

牙を剥き出しにした野生の顔で返す里緒の顔が、3機のモニターに映し出された。

そんな膠着状態が続きそうになった瞬間、輸送機が激しく揺れた!

「な、なんだ!」

ジェードは、すぐに輸送機のパイロットに無線を繋いだ。

「どうした!!」

『み、右エンジンブロックに被弾!ただ、攻撃対象の反応無し!』

パイロットは、混乱しまくっている。

「フィファンスだ!」

蒼海は、その兵器に思い当たると思わず、叫んでしまった。

まさに、その瞬間、今度は、輸送機全体が揺れた!

『こちらブリッジ!もう機体がもたない!!』

その瞬間、蒼牙と紅爪は、輸送機から飛び出し、蒼牙の右腕部にマウントされたブレードで輸送機のブリッジと輸送機を切り離し、脱出機構を作動させた。

その直後に輸送機は、爆発してしまった。

そして、蒼海は、すぐさまレーダーに目を走らせた。

「いた!」

蒼海は、機体に装備された軽機関銃を地面のある一点に連射した。

すると、すぐにフィファンスと呼ばれる無線攻撃兵器が、楯のように弾丸を

弾き飛ばしていく。しかし、これこそが狙いだった。

「里緒!」

「任せろ!」

蒼海の合図にすぐさま里緒が、答え左のハードポインターに装備された

八連式ガトリング砲〈パラディオン〉を撃ち出した。

蒼牙の軽機関銃の経口と比べ物にならない大型の弾丸がフィファンスに襲いかかる。その弾丸は、易々とフィファンスを破砕して抜けていく。

蒼海らは、直撃を確信した。

だが、ここで、思わぬ事態が発生した。

フィファンスを操作していると思われる機体に弾丸が到達する前に

黒い巨体が、立ち塞がり弾丸をその身に受けたのだ。正確には、そう見えた。

「な、なんだと!?」

里緒が、驚愕の声を出した。

いや、驚愕しない方がどうかしている。

漆黒の巨人は、深紅のフィールドを展開して接触した弾丸が、潰れて

プレートのように地面に落ちたのだ。

思わず、動きが止まってしまった紅牙に漆黒の機体は、体中からミサイルを

発射した!

「マジかよ!!」

里緒は、焦った。紅牙は単独で飛行出来るようには設計されていない、つまり、バーニアを噴射しても落ちているのだ。

そんな状態で、例え、紅爪の砲撃戦防御用シールドを持っていたとしても30発ものホーミングミサイルを避けることなど不可能である。


一方、ミサイルを発射した機体のパイロットは、いつも通りの結果を

見ていなかった。


コックピットが、小さく窮屈に見える巨体をシートに納めている牛人の

パイロットーオーロック・ヴァリストは、機体を向き直らせていた。

「大丈夫か、スコット?」

その声は、淡々としていたが、心配をしている雰囲気はあった。

「はい、助かりました。オーロックさん。」

無線モニターに映りだしたのは、およそ戦場に出ているとは思えない

人間の美青年だった。

「そうか。」

「ですが、良かったのですか?ベヘモスの秘密を晒して」

スコットは、心配そうに訊ねてきた。

「いいのだ。これで、グランドオルスの技術が、戦術的に有効と証明されただろう。」

オーロックが、そう言った時、後ろで爆光が上がった。

終わったな・・・。オーロックは、そう思いもう一度、振り返らせた。

だが、そこにあったのは、刀を持った蒼牙がいた。

「何!? あれだけのミサイルを破壊したのか!?」

さすがのオーロックも驚いた。

「一体何なんですか!貴方達は。」

蒼海は、頭にきていた。こんな戦闘をするためにこんな所まで来たのではない。こんな事をしている間に同胞が、戦っているのだ。

「私達は、アクアエリアス軍のセンチネル・プロジェクトに参加する

テストパイロットです。貴方達もそうでしょう!?」

蒼海は、全周波数で呼びかけた。

『その通りだな。』

突然、無線に聞き慣れない女性の声が割り込んできた。

「どなたです?」

蒼海は、無線の相手に訊ねた。

『成る程・・。お前は、私を知らなくても私は、お前の事を殆ど知っているぞ。白峰大尉。それなりの良識は身に付けているようだな。』

「御褒めに預かり光栄です。ですが、こちらの質問に答えていらっしゃいませんが?」

蒼海は、プロジェクト関係者と判断して敬語で訊ねた。

「私か?私は、ユウナ・サイフィード大佐だ。これから君達、テストチームの隊長でありプロジェクト責任者だ。」

『「なぁ!!」』

その正体に全員、驚いた。

この大規模なプロジェクトを任されているのが、こんなに若そうな女性だとは思わなかったからだ。


「だが君達は、チームとしては最悪なようだな。チームワークなど

君達には、全くないようだ。所詮は、ロンリ―ウルフの集まりか。」

明らかに小馬鹿にされたが、蒼海は、その通りだとしか言えなかった。

これから、何時までか分からないが、供に過ごす仲間に刃を向けて

しまったのだ。こう言われても仕方なかった。

結果としてプロジェクト開始前にとんだ醜態を晒してしまう事になってしまった。この事実に蒼海は、静かに唇を噛み締めるほかなかったのだった。

だが、これは、これからの問題に比べれば、まだまだ序章に過ぎなかったのである。



第2章 最悪最強のチーム


最悪だ。

今の俺の気持ちを一言で表すのにこれほど相応しい言葉は無い。

着任前にまさかのチームメート同士で、無断戦闘を行ってしまった。

さらに、俺は既に自軍の僚機を破壊してしまっている。

これは、懲罰ものだ。結果、最悪となる。

「そんなしょげた顔すんなよ。蒼海は、何も悪くねぇだろ?」

里緒が通信しながら慰めてくる。

「ありがと。だけど、叱責は確実だ。」

そう言って蒼海は、通信を切った。

今は、専用のガレージ内に格納された俺達は、今から指令室に出頭することに

なっていた。

ウジウジ悩んでいても始まらないので、さっさとコックピットのハッチを開く。

「とんだ災難だったな。」

聞き覚えがありすぎる声に思わず、顔を上げた。

そこに立っていたのは、がっしりとした体格に長年、着込んだらしいよれた

グリーンの整備つなぎ服を着た熊人だった。

「グロウさん!?」



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