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神、降臨  作者: 楼陽
第一章 『砂漠色の遊戯』
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第一章 World.17 レンナ、突然の外食招致

「レドルアのところに行かなきゃ」


俺らの頭からすっぽり抜けてしまっていたレドルアは、今も一人で、食べ物の収集を続けている。先ほどの叫び声を聞いて、せっせかせっせか歩いている。

 決して魔法で飛んでいかないのは、レンナの魔力消費量が、かなり多いからである。理由はもはや言う必要もあるまい。



 鎖で繋がれた俺がレンナに連れられるのを見ている村人たちは、揃いに揃って羨望(せんぼう)の眼差しを向けてくる。


「街の中をこうして歩いていると、ものすごく嫌な視線で見られて、あまり気分が良くない」


「嫌っていうのはわかったから、もういい加減やめてくれない?」


 返す言葉がないのも、ずっと同じ理由である。


「いや、わかってるよ、ちゃんと治療のためだってのは。だから文句をあなたには言わない。ただ、村人が変な視線を向けてくるんだ」


「大丈夫よ、気にしなくて。みんな、私の横を歩いているあなたが羨ましいだけなのよ」


 この人は多分、村のマドンナなんだ。俺が少しいい顔できるのだけが利点と言えるだろうか。視線を大量に向けられるのは、あまり得意ではない。


「良いのか、あなたが変な男を連れて歩いてるなんて知れても」

「問題ないよ。逆にその方が変な勧誘に合わなくて済むし」


 容姿がいいのにも、困ることはつきものなんだな。


「よしまた畑に着いたけれど、弟が見えないね」


「姉さん、遅いですって」

レドルアが突然畑から顔を出した。


「何してたんですか?私が一人で野菜を収穫してること、絶対忘れてましたよね、お二人。もうあらかたとり終わっちゃいました」

 俺もレンナも驚愕(きょうがく)した。約百食分の野菜を、一人で撮り終わるレドルアは、何か体の作りがおかしいと、そう思うのだった。


 驚いてはいるが、とりあえず時間があるわけではないので、話を進めよう。

「大変だったな。でももうとり終わったっていう割には、荷物が少ないように思うが?どこにやったんだ?」


「大量の野菜たちは、地の精霊たちに運んでもらっています」

 レドルアが霊司力を抑制されなくなったと言う話は、どうやら本当みたいだ。


「そうとなれば、家に戻りましょう」

 レドルアがそういう頃、もうすでに砂漠に差し込む夕陽は、だんだんと村を橙に染めていた。


「うん、そうね」




 村は昼間よりも盛り上がっていた。もうすぐ暗くなる村の街道には、高い棒に取り付けられた大きな蝋燭(ろうそく)が灯っていた。

「なんか昼よりも盛り上がってるな。にしてもどうして家の中で蝋燭なんて使わないのに、外に出ると蝋燭なんだ?」


「確かにそうですね。聖都では蝋燭ではなく、みんな精霊術を使って灯りを点けちゃいますから。街灯だって三級あたりの精霊師が駆り出されて、僕も最初の頃はそんな仕事してたな」


 ああ、そうか。レドルアのいたと言う聖都でさえそうなんだ。この世界線では、電気が街を通っていないんだろう。


「なるほどね。いや、この村では、精霊術とか魔法とかが使えるような教育を受けてる人が、聖都と違って、なかなかいないから、精霊師のいない家には、村役場で働く雷の精霊専門の精霊師が夕暮れになるとつけに回って、街頭は火の精霊師が、点けに回ってくれるのよ」


「良く働く精霊師だな。つまり、レンナの家には来ないってことか。ハルカが精霊術使えるもんな」


「ないのよ、使えないのよハルカは、レドルアなら良く知っているだろうけど、雷の精霊って結構危なくて、ちゃんと資格持っている人じゃないと、扱えない場合が多いのよ」


「よく修行中にも言われましたよ。雷の精霊って結構気性が荒いので、資格のある人にしか付き従ってくれないんです」

 資格って大事なんだな。今日はなんだか資格の話に触れる事が異様に多い。



「すごいのね、雷の精霊って。まあそう言うことで、この時間になると、雷の精霊師に迷惑かけないように、多くの家が子供たちを外に出すから、さらに子供達が盛り上がっちゃうのよ」



 盛り上がった子供達が、昼間と同じく話しかけてきた。

「あ、あの手錠つけてるボサボサ兄ちゃんとレンナ姉さん、と誰あの赤髪?」

「みんな昼ぶりね、元気してた?」

「楽しんでるよ、今玉を蹴って遊んでるんだ。雷の人が来るから、今は家帰れないんだ」


 雷の人という略し方が、雷神様みたいで少しイカつい。

「誰なんだよその赤髪は。兄ちゃんに加えてもう一人なんて、その赤髪も幸せなこった」

今度は、少し中年のような喋り方をする子供が現れる。


「大変ご無礼を働いてしまい申し訳ない。私は『レドルア・・・」


 レンナが突然焦って、話に割り込む。

「あ、この赤髪の人は、『レドルア』と言って、聖都からやってきた特級精霊師なの!ものすごく強いのよ!」


「よっしゃ、レドルア兄ちゃんなんか精霊術見せてくれよ!」

「よし、わかりましたよ。なんか見せましょう」

 レドルアはレンナの突然の割り込みに戸惑いながらも、子供達に連れて行かれた。


「何かあったのか、レンナ」

「何かは今日の夕食で話すわ。今日は外食にしましょう」

妙に思い詰めたレンナに何が起きているのか、俺には知る事ができなかった。


 レンナがスタスタと家に帰ろうとしてしまうので、子供達と精霊術で遊んでいるレドルアを呼び戻す。鎖で繋がれている俺は、レンナについていくしか方法はなかった。




 レンナの早歩きによって、すぐに家に着いてしまった。

「ハルカ、ムスカル爺や!今日は家でご飯食べておいてくれるかしら?私たち他にやらないといけない事があって、家に帰れない」

「いいよ、わかった!」

応答したのはハルカだった。


 他にやらないといけないことってのは、まさか外食のことだろうか。ただ、ハルカを外食に連れて行きたくなくて、わざわざ言いにきたというより、ハルカには来させちゃいけないからの方が近いような義務的な話し方である。


「ほら、クライス、レドルア。外食に行くわよ」

「よかったのか、ハルカたち置いて行って、あいつらも楽しみにしてたんじゃ」

「時間かけないで、あの子とムスカル爺やは連れていけないの」


 本当に焦っているレンナの姿に、レドルアとクライスは、コソコソ話を始める。

「何をそんなに焦っているんでしょうか」

「皆目見当がつかない。さらにハルカたちにに話せない事情とはなんなんだろう」


「うるさいわね。少し黙っててちょうだい」

 こんなに危機迫った感じのレンナには、油を注いではいけない。そういうわけで、レドルアと俺は静かにしているのであった。


 

 するとしばらくして、あるレストランに着いた。

「こんばんは。いつもの部屋はあるかしら、ランダ」

「大丈夫ですよ、レンナ。今日はお連れ様がいるようで、私は必要でしょうか」

「顔でも見にきてくれれば嬉しいけど」


 ランダという白髪の店員が、応対をするが、いつもの部屋とは。一体何を隠しているというんだよ、レンナ。



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