第14話:あれ、俺またなんかやっちゃいました?
受賞しなかったらこれが最終話です
どっかの出版社様、拾ってくださいませんかね……?
プロットはありますから!!!
40万文字くらい書けますから!!!
ラフィを師匠にするまで、俺は用意周到に準備をしてきた。
まず、魔力探知の魔術をフル活用し、応用することで擬似マップ——ゲームで画面の左上とかにある、ミニマップみたいなものだ——を作った。その範囲をリガルレリアまで拡大することで、冒険者たちの動向を把握していたのだ。
近づいてきたら、シャルに「そろそろ来るよ」と伝え、俺は探しておいた丁度いい木の上に立ち、全力で魔力を隠蔽しながら偵察をした。こうすることで、シームレスに師匠を迎えることに成功していた。
そして最後、試合は……わりとアドリブだった。
仕方ないだろう、事前のサーチとかはさすがに出来ない。とはいえ、まさか屋台で働いていた少女が来るとは思っていなかったけどね。
あの時感じた、不思議な魅力——引き寄せる力は、もしかしたらこれを示していたのかもしれない。運命を感じざるを得ないな。
あとはもう、戦うだけだ。ひたすらラフィの戦い方を分析し、系統や戦闘法を導き出していく。
ゲームでも狙撃手はいたが、あまり使うキャラではなかったので、正直嬉しかった。よく知る戦い方では勉強にならない。いずれ狩人のような戦いをしなければならない時だって来るはずだからな。
ま、総じて結果としては上々だったし、よく即興であれだけ出来たなと自分を褒めたいくらいだ。
◇
「では、今日からよろしくお願いします、師匠」
いつもの庭で、俺は青髪美少女のラフィと向き合っていた。
この前のお茶会みたいに、日傘付きのテーブルで優雅なご歓談というわけだ。
「はい。よろしくお願いします。人に教えた経験はあまりありませんが……」
先日死ぬ気で戦ったというのに、ラフィはまだ緊張しているらしい。身体を小刻みに震わせている姿は、何か小動物に見える。
いや、戦闘は戦闘で割り切れていたからかもしれないな。どちらにせよ、俺に分かることではないけど。
「あまり、ということは、他にはあるのですか?」
「そうです。妹のリタには最低限教えています。といっても、あの子は勉強すること全般が嫌いなようで中々身についていないのですが……」
「妹……もしかして赤髪の?」
俺がそう問いかけると、ラフィは目を丸くして驚いた。
「そ、そういえばリタが言ってた気がします。『聖人みたいな雰囲気の男の人と、魔性の魅力がある女の人が来たよ』って」
「あぁ、間違いなくそれは私ですね。女性の方は、姉であるラドリーナかと」
魔性の魅力……確かに、ラドリーナは黙ってれば美人だ。蠱惑的な魅力がある。口を開けば、それが一気にメスガキになってしまうのだから、可哀想というかなんというか。
「つまり……あの店は公爵家御用達ということに……!?」
「あはh……そうなるかもしれませんね? 私の名前でしたら、使っていただいても構いませんよ」
「ありがとうございますっ!」
いつもは冷静な雰囲気を放つラフィだが、やはり商売のこととなると血が騒ぐのか、目をキラキラさせていた。脳内でそろばんでも弾いてそうな顔。
仕事でも金を扱わない役職だった俺とは、随分と違う存在なのだ。
「あっ。そ、そういえばなんですけど……」
「ん? どうされました?」
ラフィの声色が一変したので、彼女の目を覗き込むと、その視線は俺の頭上に向けられていた。あまりにもじっと見つめているものだから、気になって俺もそちらを見てみる。
「ノア! 昼間から女を連れ込むとは、偉くなったもんだなぁ!?」
三階の窓から身を乗り出して、こちらに厳しい視線を向けてくる気持ちの悪い男が一匹。そう、あの小物——ディケールだ。
「兄さん。私は彼女を連れ込んだわけでもありませんし、ましてや女性に向かって“女”とは、みっともないですよ?」
「このっ……! 言うようになったなぁ!」
さすが聖人の呪い。言ってる事は非常に紳士的だが、あまりにも皮肉が効きすぎる。神がかった返しだな、なんつって。
「にしても兄さん。そこは兄さんの部屋ではないでしょう。なぜそんな場所に?」
「う、うるせぇ! 最近はここを勉強に使ってるだけだ!」
「勉強に、ですか……兄さんがそんな殊勝な心がけをもっていたなんて、驚きです。さすが兄さん」
「この野郎……!」
あの事件——決闘騒ぎから、既に2ヶ月近く経っている。なのにまだ改善されないどころか、少し悪化しているような気もする。
もしかしたらあの部屋に原因があるのかもしれないが、俺もあそこは何の部屋なのか知らない。
「えっと、お二人は仲がいいんですね……?」
「無理に言おうとしなくていいんですよ、師匠」
「ですよね……」
すると、どこからか紅茶の匂いが漂ってきた。次いで背後から足音も2つ。
この場所にやってくる人間など数えるほどしかいない。そう重い、振り返ることなくその名を呼んだ。
「お久しぶりですね、ラドリーナ姉様?」
「あはっ、バレちゃった。ノーくん久しぶり♪ 元気にしてたかな?」
「えぇ。最近は落ち着いたので、ごく平穏な日々を送っていますよ」
「最近は、ね……あ、お茶会にあたしも混ぜてくれる?」
そう言ってラドリーナは、俺の視界に顔を覗かせてくる。
見つめ合う彼女の瞳は、俺を呑み込んでしまいそうなほど綺麗だった。深い森のような色合いは、ニレイスの森よりも壮大で、魔を秘めている。
青木ヶ原樹海、なんて地名を思い出したところでなんとか意識を引き戻し、「どうぞ」と席を引く。
「さすがは紳士。気が利くじゃない」
嬉しそうな笑みを浮かべたラドリーナは、そのまま俺の耳元に顔を近づけた。
「いきなり紳士になったノーくんが、まさか屋敷に女の子を連れ込んじゃうなんて。ちゃんとそっちも紳士的にやりなさいよ?」
「姉様もそういうこと言いますか。貴族としての品性はどうされたのです?」
「ふふっ、ちょっとくらいはいいじゃんね?」
コト、と音がした。
ラドリーナのメイドが紅茶を机に置いた音だ。
机には3つのティーカップ。いずれにも湯気の立つ紅茶が注がれており、クッキーなどの洋菓子もある。どうやら俺たちの分もあるらしい。
「さすが姉様。ありがとうございます」
「別にいいよ。あたしも、一人で優雅にお茶を飲むのは飽きてきたの」
「その年齢で飽きては将来が心配ですね……」
苦笑いを浮かべ、濁すようにクッキーを一つ齧る。
久しぶりに食べたクッキーの味は、日本で食べていたものよりも甘さがくどく感じた。砂糖やら甘味料の量が違うのだろう。こりゃ、いっぱい食べたら太りそうだ。
「……口を満たすような甘みは、紅茶に合うように砂糖を調整しているのでしょうか」
「その通り。あたしの手作りだからねっ」
俺のコメントに、ラドリーナも満面の笑みだ。
呪いが結構変換してるけど、それは気にしたら負けってやつ。
「あれ、師匠。お食べにならないんですか?」
「これ、私も食べていいんですか……?」
「もちろん。なんてったってノーくんの師匠? なんでしょ? 遠慮する理由なんかないよ」
「じゃ、じゃあ、お一つ頂きます……」
納得したから、というより、圧に負けたからなのだろう。頬が引きつっている。
だが、その表情は、クッキーを食べた瞬間に激変する。
「……! 美味しいですっ!」
「そう喜んでもらえて嬉しいっ」
「こんなに甘くて美味しいクッキー、食べたこと無い……!」
この顔、さっき見たような——思い出した。そろばんを弾いてそうな顔だ。どうせ「売ったらいくらになるかな」とでも考えてんだろうな。
そうしてラフィは、クッキーと紅茶の虜になった。交互にガバガバ食べ、幸せそうに頬を膨らませている。
そんな時、ふと嫌なことを思い出してしまった。なので、視界に入れないようにしていた小物の方を向いてみる。
「……そういや兄さん。よだれ垂れてますよ」
「んあ……? はっ、いっけね」
慌てて袖口でよだれを拭き、何事もなかったかのようにキリッと鼻につくような顔をし始めた。イラつくなこいつ。
「あれれぇ、ケーくんいたんだ! 謹慎部屋の生活にはもう慣れた?」
「謹慎部屋、ですか?」
「ちょっ、お前——!」
ディケールの顔が一気に青ざめた。
謹慎、という言葉も気になる。ここはラドリーナの話をしっかりと聞かなくては。
「そう。ノーくんをいじめたのが原因で、お父様から処罰が下されたんだよ。だから、謹慎という名の勉強漬けの生活になってるの。あそこは歴代の問題児が監禁された、由緒ある部屋なんだ」
そんな部屋に由緒なんかあってほしくなかった。なんで代々使われてるんだよその部屋は……
ただまぁ、ゲームじゃ聞かなかった話を聞けるのは面白い。クソ女神に感謝ポイントを100差し上げるとしよう。ただし、クソ女神ボーナスで99.9引くから0.1になるけど。
「それは……知らなかったです。でも、兄さんなら当然ですね」
「あたしもそう思う」
「お前らなぁ!?」
……よくよく思えば、この状況は全て俺が作り出したものだ。
ディケールが謹慎しているのも、ラドリーナが俺に興味を持ったのも、ラフィが師匠になっているのも、俺が転生しないと起こり得ないことだった。
まだ数ヶ月、されど数ヶ月。色々なことがあった。
この平穏がずっと続けばいいのに——なんて、ただの平和ボケだろう。
これからどんな冒険が、試練が待っているのか。
それは、きっと神でさえも知らないのだ。
ということで、前書きの命乞いの通り、これにて最終話です
エタるってのはこれくらい不本意な終わり方なので、皆様には申し訳ないという思いがあります
ですが、どうか許してください
僕の夢への旅路は、少しばかり早歩きじゃないといけないんです
高校2年生の夏、折り返しの地点。
まだまだ頑張っていきますので、どうぞ次作にご期待ください!
以上、ねくしあでした!




