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3年間、聖女を偽ることになりました。ドッペルゲンガーです。  作者: 廿楽 亜久
第10話 望まれる奇跡

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19/22

前編

 広場に集まっている大勢の人。

 精霊樹の回復について、既に報せは世界中に広まっているが、改めて、聖女から”世界の救済”について宣言するために、設けられた場所。


「姉さま? 緊張されているのですか?」


 そりゃ、してる。


 元々決められていたことであり、この演説には、国内外から人が集まり、各国の記者も多い。

 つまり、ここで何かをやらかせば、聖女が偽物であることが、バレる可能性も高い。


「少しだけよ」


 イザベラが、緊張している様子は、あまり見たことがない気がする。

 少なくとも、自分の前では、あの穢れた精霊樹を浄化しに行く時も、死ぬ時ですら、恐怖や緊張はしていなかった。


「……でしたら、手を、繋ぎますか?」


 おずおずと提案するマリアーナに、一瞬、何を言われているのかが分からなかった。


 手を、繋ぐ?

 イザベラ、そんなキャラだったか?

 妹に対しては、そんな姉だったのか?


 すごい勢いで頭を駆け巡る思考に、答えは出ることもなく、無理矢理、結論を出す。


「マリアーナは、優しいわね」


 そう冗談交じりのように微笑み、マリアーナの手を取る。


「え、えっと……そう、ですかね……?」


 顔を赤くしながら、恥ずかしそうにするマリアーナに、なんとか誤魔化せたかと、内心ほっとする。


 昨日、一晩話していたせいか、少し気が緩んでいた。

 マリアーナには、奇跡を使って、俺がイザベラであると勘違いさせているが、一目で偽物だと見抜かれているのだ。

 何より、小さい時からずっと一緒にいる姉なのだから、仕草や言動ひとつで、違和感を持つ可能性が高い。


「なにしてるんだ」


 気を引き締めていたところに現れた魔女。

 呆れるような冷たい視線が、俺に突き刺さる。


「クリミナさん……? 今日は来られたんですね」


 驚いた声を上げるマリアーナに、クリミナは、疲れたように視線を逸らした。


「まぁな。お前の姉さんが寂しいとか言うからな。かわいそうだから、来てやった」

「ふふふ……相変わらず、仲良しですね」

「聖女見習いが、空言を騙るなよ」

「平気ですよ。真実ですもん」


 口調こそ普段と変わらないが、俺やシエルに大してとは違う、随分と優しい声色だ。

 こいつに、こんな人の心があったんだな。


 意外な事実に感心しながら、こちらへ視線を送る魔女に、俺も小さく息をつくと、笑顔を作った。


「でも、ちょうどよかった。クリミナ。マリアーナのこと、しばらくお願いしてもいいかしら?」

「構わないとも。最前列は、教会の連中で固められる予定だしな。聖女に、聖女見習いからのお墨付きともなれば、私がそこにいても問題ないだろう?」

「問題は起こさないでちょうだいね……」

「だ、大丈夫です。姉さま。なにかあったら、私が止めますから」


 健気なマリアーナの言葉に、クリミナも、何か隠しているような表情をしていて、マリアーナがもう一度、釘を刺している。


 しかし、実際のところ、俺がやらかした時に、すぐに対応できるように、できるだけ近くにいたいのだろう。


 国王と大司教。

 その両方に、すでに奇跡や祝祷術が使えないことは伝えている。

 この大イベントで、聖女の力の衰退について、公にするわけにはいかないため、誤魔化す力のあるクリミナが近くに控えることを、大司教も止めはしないだろう。


「基本、いつもの説法と同じ……大丈夫。何回も見てきたことだ」


 一緒に旅をしている間、何度も見た。

 聖都に来てから、何度も演じた。

 

「聖女様。お願いします」


 短くかけられた言葉に、思い起こしていたイザベラを表情に写して、頷いた。

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