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3年間、聖女を偽ることになりました。ドッペルゲンガーです。  作者: 廿楽 亜久
第5話 嫌われ者

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後編

 嫌われてた? 教会に? 聖女なのに?


 確かに、そう言われれば、そうだったのかもしれないと思うことは、旅の中に多くある。

 だが、世界的に最も大きな精霊信仰の聖女を、嫌う?

 そんなことがあるのだろうか。


 もし、それで巡礼を失敗すれば、瘴気は世界中に溢れ、自分たちだって死ぬというのに。


「受け入れがたいかもしれないが、事実だ」


 嘘をつかなさそうなシエルにまで言われてしまっては、否定する言葉も出てこない。


「なんで……」

「そりゃ、アイツが――」


 クリミナが口を開いた瞬間、シエルの手が遮る。


「すまない。追いついてきたみたいだ」

「あぁ……後ろの連中はどうにかするから、適当に祈る振りしてろ」


 後から来るという騎士団が追いついてきたのだ。


 今の話を聞かれるわけにもいかず、一度話を中断して、倒れた魔獣の近くに跪き、手を組んだ。


 祈りの仕方なんてわからないから、ただの記憶にある形だけを真似る。

 だが、騎士たちからすれば、それで十分だ。


「さすがです。すでに倒されていたのですね」

「うむ。灰被りの君の前で、情けない姿を晒せないからな」

「せっかく、イザベラを連れてきたって言うのに、もったいない」

「それに関しては、教会から文句が来ていますので、後ほど対応してくださいね」


 そういえば、公務の間に少しだけクリミナへ会いに来たのだった。


 すっかり時間を忘れていたが、既に次の予定の時間になっている。

 全く反省している様子がないクリミナに、注意している騎士も疲れたようにため息をついている。


「実害被る魔獣の討伐に勝る、急務な仕事なんてないだろ」

「自分は言えませんので、ご自身でお伝えください」

「そうするよ」


 少しだけ頬をひきつらせた騎士の様子からして、今の言葉は嫌味だったのだろう。

 こいつの場合、普通に悪びれず言いそうだし、今のはこの騎士の言葉選びが悪い。


「じゃあ、このあと、ご要望通り、イザベラと言い訳回りしてくるから、後片付けは任せるよ」

「承知した。この名呼ばれれば、音より早く駆け付けることを約束しよう!」

「…………」


 さらっと仕事を押し付けるクリミナに、うれしそうなシエル、そして彼女たちを見て何か言いたそうな騎士。


 自分の立場からすれば、クリミナがこのあとついてきてくれるのは、願ってもいないことだが、少しだけ騎士に同情する。


「イザベラ。もう行けるか?」

「あ、うん。ありがとうね」


 クリミナに促されながら、来た時と同じように、空を飛びながら、王都へ戻った。


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