表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/8

魔女、薬草を採取する

 とある日の昼頃。

 右手に杖を持ち、ローブを身にまとった女性、ミア・クルスは冒険者ギルドの扉を開ける。

 すると、受付にいる一人の受付嬢がこちらを見て笑顔を見せる。


「あ、ミアさん!」

「やあ、リリア」


 ミアは一直線にリリアの元へ向かった。

 ギルド内ではちらほらと冒険者の姿があるが、決して多いとは言えない。

 これは、午前中の内に依頼を受けた冒険者がギルドを出て行ったからだろう。


「今日はいかがなさいましたか?」

「ちょっと依頼を受けようと思ってね」

 

 ミアは魔女として個人的に依頼を受けることが多いが、冒険者登録もしている。

 

「分かりました。依頼はあちらの掲示板にあるものが全部ですね」

「そうか。ちなみに、私にしか出来ないような依頼はある?」


 ミアは魔女であり、まれに魔法でしか解決できないような依頼が入ることがある。


「いえ、今日はそういう依頼はありません」

「分かったよ。ありがとう」


 そう言って掲示板の方へと向かう。

 掲示板には依頼の書かれた紙が難易度ごとに分かれており、ミアは様々な依頼を流し見する。

 

「ふむ、」


 やはり、ゴブリン討伐や害獣の退治の依頼が一番多いな。

 このあたりの依頼はCランク以上の冒険者が受けることができる。

 しかし、普段依頼を受けない私のランクはDだ。

 

「よし、これにするか」


 そう言って手に取ったのは、薬草採取の依頼だ。

 小銭稼ぎ程度ではあるが、私にはこれくらいがちょうどいい。

 そもそも私はそこまで戦闘が出来ないからな。

 だって危ないじゃん。

 痛いのは嫌だし。

 じゃあなんで冒険者登録をしているかって?

 単純に金がないからだ!!


 ミアは手に取った依頼を持ちながら再びリリアの元へ向かった。


「リリア、これを受けるよ」

「かしこまりました。頑張ってください」

「うん、頑張ってくるね」


 そう言って冒険者ギルドを出る。

 向かう先は都市を出てしばらく進んだところにある森だ。

 そこまで歩くのは面倒だが、まあ多少は許容しよう。

 しばらく歩くと、都市の外へと続く大きな門が見えてくる。

 この都市は大きな壁に囲まれており、門には門番であろう二人の兵士がいた。


「ここを通るぞ」

「これは魔女様。今日は何をしに?」

「薬草採取だ」

「そうですか。頑張ってきてください」


 門を出たあとも、二人の兵士はニコニコしながら手を振ってきた。

 門番め、気が緩んでいるな。

 仕方ないので、こちらもちょこんとした仕草で手を振っておく。

 ……あいつら、喜んでないか?

 まあいい。


 しばらく歩き、森のすぐ手前までやってきた。

 ここから森の中に入っていくわけだ。

 とはいっても、そこまで深い場所に行くわけではないので、比較的安全だ。

 まあ、たまに群れからはぐれたゴブリンとかが現れることはあるが。


 森の中に入って少し歩く。


「よし、ここら辺かな」


 早速薬草を探し始める。

 今回探す薬草は大きな木の根元に生えていることが多いので、そのあたりを重点的に見ていく。


「お、あった」


 薬草を腰につけた袋の中に入れていく。

 これなら問題なく依頼をこなせそうだ。

 そう思いながら歩いている時だった。

 足に何かが引っかかり、見事に姿勢が崩れ、前に倒れ込む。


「へぶっ!? うう……」


 痛い。

 鼻がズキズキする。

 咄嗟に左手で鼻を触ってみる。

 うわ、鼻血出てる。

 だから冒険者は嫌なんだ!

 こんなに痛い思いをしてまで冒険者なんてやるわけないし!

 なんか痛すぎて涙が出てきた。

 もうさっさと依頼を終わらせて帰ろう。





「よし」


 これで必要な量の薬草は集められたかな。

 さっさと帰ろう。

 ちなみに鼻にはガーゼを突っ込んでいる。

 これで血が垂れてくる心配をしなくていいからな。

 

「……あれ?」


 どっちに行けば帰れるんだっけ?

 忘れた。

 どうしよう……


「人よ、見つけろ」


 とりあえず魔法で近くに人がいないか確認してみる。

 この魔法では周囲にいる人を影のように視認することができる。

 ふむ、右側に四人くらいいるな。

 一人は怪我でもしたのか?

 仲間を支えながら歩いているな。

 ここにいても森から出られない可能性があるし、とりあえず四人の方へ行ってみるか。


 しばらく森の中を歩くと、四人組の冒険者らしき人達が見えてきた。

 ふむ、男二人に女二人か。

 皆だいぶボロボロだな。

 それに、男の一人が足に怪我を負っているようだ。

 足に巻いてある布から血が染み出している。

 あの怪我はまずいかもな。


「やあ、君達。ちょっといいか?」


 その声に長身の女性が一番に反応する。


「あなたは、もしかして魔女様!?」

「ああ、そうだ。」


 様子を見るに、戦闘で怪我を負ったといったところだろうな。


「魔女様!! 助けてください!! ローガンが!!」

「そのつもりで来た」

「本当ですか!?」


 半分本当だ。

 あとの半分は道に迷ったからだが、これを言ってしまっては魔女の名が廃るから、口が裂けても言えない。

 いや、口が裂けたら痛くてそれどころではないだろうな。

 ……何考えてるんだ、私。


「その怪我人を寝かせてくれ」

「はい!」


 怪我人を支えていた細身の男が地面に寝かす。

 この男、だいぶ体格がいいな。

 体格のいい奴は大抵戦闘で一番前に出るからな。

 怪我も負いやすいだろう。

 足に巻かれている布をほどき、怪我の状態を見る。


「ふむ」


 傷を負ってから適切な処置が出来ていないようだ。


「水よ」


 魔法で水を出し、傷口を洗う。

 かなり深い傷だな。

 腰につけたポーチから包帯を取り出し、傷に巻いて圧迫する。


「ううっ」

「ちょっと我慢しろ」


 ちょうどよかった。

 今回採取した薬草は止血の効果もあったはずだ。

 そこらへんから適当に石を選び、薬草をすりつぶす。


「あの、何をやっているんですか?」


 小柄な少女が声をかけてくる。


「薬草をすりつぶして傷に塗る。何もないよりはずっとマシだからな。こういう知識はあると便利だぞ」

「なるほど」


 少女がコクコクと頷いている。

 よし、出来た。

 薬草を傷口に塗り、再び包帯を巻く。


「よし、これで多少はマシになったはずだ。あとは治癒術師や医者にでも診て貰え」

「ありがとうございます!!」


 細身の男は深すぎるほど腰を曲げていった。

 ふふっ、礼を言われて悪い気分はしない。


「よし、皆戻るぞ」


 細身の男がそう言うと、四人は歩いて行く。

 あれ?

 私を置いていく感じ?


「ちょっ、ちょっと待って!」


 ミアの声に四人が振り向く。


「どうしましたか?」

「あ、えっと、その男に何かあったらまずいから、町まで私もついていくぞ!」

「ありがとうございます。でも大丈夫です。俺達だけでも帰れますんで! 魔女様に仲間を診て貰ったので、これ以上お世話になるわけにもいきません!」

「あ、いや、ほら、えっと……」


 素直に私をついて行かせてよ!

 ここで置いて行かれたら帰り道が分からないじゃん!

 でも、そんなことを彼らに言えるわけがない。


 視線を泳がせるミアを見て、長身の女性が言った。


「もしかして、魔女様も帰るところですか?」

「あ、ああ!! そうだ!!」

「そうですか! それじゃあもう少しの間お願いします!」


 こうしてミアを含めた五人は町に帰ることとなった。


 



 ミア達五人は町までたどり着く。

 

 私を含め、皆かなり疲れているな。

 まあ、私は単純に運動不足だと思うが。


「魔女様、今日は本当にありがとうございました!!」


 細身の男が言った。


「このお礼はいつか必ずします!!」

「ああ、是非そうしてくれ」

「はい!! では私達は教会に向かいます。失礼します」


 そう言って四人は教会の方へと向かっていった。

 私は冒険者ギルドへと向かうことにするか。

 ……あれ、そういえば怪我の治療に薬草を使ったな。

 依頼を達成できる量はまだ残っているよな?


 ミアは腰についたポーチを手に取って覗く。

 多分……大丈夫なはず。

 そうこうしながら歩いていると、気づけば冒険者ギルドに着いていた。

 とりあえず薬草を持って受付に向かう。


「ミアさん、お帰りなさい」

「ああ、ただいま、リリア。薬草を採ってきた」

「あれ? ミアさん、その鼻どうしたのですか?」

「ん?」


 あ、鼻にガーゼを入れたままだ。

 恥ずかしい。

 ん、待てよ?

 あの四人の冒険者はこの状態の私を見てたってことか?

 ……言って欲しかった。


「とりあえず、はい、薬草」


 そう言って薬草をテーブルの上に置く。


「あ、はい。確認してきます。少々お待ちください」


 リリアは薬草を採って奥に行った。

 しばらくして、リリアが戻ってくる。


「あの、非常に言いにくいのですが……」


 その言い方、まさか……


「薬草、足りないです」

「くっ!!」


 思わずその場で倒れ込んで四つんばいになる。

 やっぱりか~。

 薄々足りない気はしていたからなあ。


「あの、このままだと依頼は失敗となりますが……」


 やばい、依頼に失敗すると違約金が発生してしまう!

 なんとか阻止しなければ!

 ミアは這い上がるようにしてテーブルの下から顔だけを覗かせる。


「明日、薬草を採ってくるから、依頼は保留ってことにしてくれないか?」

「はあ……分かりました」

「ありがとう!」

「特別ですからね? 駆け出しの初心者ならまだ分かりますが、ミアさんは何度も似たような依頼を受けてますよね?」

「うっ、その通りです」

「次からは気をつけてくださいね?」

「はい、以後気をつけます」


 うう、私、魔女なのに。

 初歩的な依頼でミスをするなんて。

 あの冒険者を治療するときに薬草使っちゃったからな。

 いや、あの後薬草をまた採取することもできたし、単純に森で迷った私が悪いな。

 次は失敗しないように気をつけよう。


 そう思いながらミアはとぼとぼと冒険者ギルドを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ