表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

魔女、猫を探す1

 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。

 甲高い機械音が部屋中に鳴り響く。


「ん、う~ん」


 ベッドから目覚まし時計に向かって手を伸ばすが、なかなか届かない。

 なんで届かないんだ。

 あ、そういえば、昨日の夜に私が届かないところに置いたんだっけ。

 

「出~た~く~な~い~」


 もぞもぞとベッドの中に潜り、耳を塞いで体を丸める。


 ピピピピピピピピピピピピピピピピッ。


「も~うっ!」


 ガバッと毛布を両手両足で吹き飛ばし、やっとのことで目覚ましを止める。


 もふもふの白い寝間着を身にまとう、やや幼い見た目の少女。

 白銀色の髪を頭の後ろで一本に結わえている。

 ミア・クルスはやっとのことで起き上がる。


 なんでこんな朝早くに起きないといけないんだ。

 

「……あ」


 そういえば今日は午前中から予定が入ってるんだっけ。

 とろんとした目をこすりながら洗面所に向かう。


 ミアが洗面台に右手をかざす。


「ん」


 すると、淡い光が右手を包み、次第に洗面台に水がたまっていく。

 その水を使ってバシャバシャと顔を洗い、近くに置いてあるタオルで無造作に顔を拭く。


「よしっ!」


 ちょっとしたかけ声で自分自身に気合いを入れる。

 パパッと準備をしちゃおう。

 一本に結わえた髪をほどき、髪を軽くぬらして自分の髪に手をかざすと、暖かな風が吹き始め、髪を乾かしていく。

 今日の仕事は確か、猫探しだったか。

 なぜ公明な魔女である私が猫探しをしなければならないんだ。

 いや、仕事を受けたのは私なんだけど。

 髪を整え、キッチンに向かう。

 ガチャリと冷蔵庫を開ける。


「……買っておかないと」


 ミアは冷蔵庫の中を見ながら言った。


 残りの少ないジャムの瓶を取り出し、冷蔵庫の扉を閉める。

 別の場所に置いてあるパンを取り、テーブルの横の椅子にどかりと座ると、パンにジャムをたっぷりと付け始める。


「やっぱり朝は甘いものだよな~。いただきます」


 べっとりとジャムの付いたパンを口に運ぶ。


「ん~、おいしい」


 唇に付いたジャムを舌で舐め取る。

 ジャムを更につけようと思って瓶を取る。


「あれ、もうない」


 悲しい、とても悲しい。

 朝は甘いものじゃないと私は生きていけない。

 なのに、ジャムがもうないなんて……


「まあいいか」


 ジャムの付いてないパンを口に運ぶ。

 やがてパンを食べ終えると、荷物の準備を始める。

 とは言っても、必要なものは大してないが。

 ポーチと紺色のローブを身につけ、つばが大きく、てっぺんが長く尖った帽子をかぶる。

 右手には特殊な木でできた杖を持つ。

 これで準備完了だ。

 そのまままっすぐ玄関に向かう。


「行ってきます」


 家に誰かがいるわけではないが。

 扉を開けると、日差しがまぶしく、思わず目を細めてしまう。


「うう~、太陽がキツい」


 そんなことを言いながら目的の場所に向かう。

 あたりを見渡すと、仕事に向かう時間なのか、様々な人が歩いている。

 種族も人間以外にエルフや獣人など様々だ。

 みんな朝早くから当たり前のように活動していて凄い。

 私とは体の構造が違うんじゃないか?

 ……午後は買い物をしなければ。

 パンにジャムに……うーん、自分で料理をするのは面倒だからな。

 何を買うべきだろうか。

 なんかもうメイドを雇って全てを任せたい。

 いやでも、暮らすなら一人がいいなあ。


「……あ」


 目的地にもう着いてしまった。

 目の前には当たり障りのない一軒家がある。

 とりあえず扉をコンコンとノックする。

 すると、家の中からこちらに向かう足音が聞こえ、扉がガチャリと開けられる。

 家の中から現れたのは高齢のおばちゃんだ。


「あら、どうしたの? もしかして迷子?」


 このおばちゃん、私を迷子の子供だと思っているのか?

 怒るよ?

 まあ私は大人だから、最初の過ちは許してやろう。


「……おはようございます。ミア・クルスです」

「あら、ごめんなさい、あなたが噂の魔女さんね。今日はよろしく。ちょっとまっててね」


 そう言うとおばちゃんは家の中に入っていき、再び戻ってきた。


「はい、これ。ミューちゃんの似顔絵」


 おばちゃんから一枚の紙切れを渡される。

 その紙には猫と思われるイラストと特徴が書いてあるが、お世辞にも絵が上手いとは言えない。


「ありがとうございます」

「それじゃあ、よろしくね」


 そう言うと、おばちゃんは扉を閉めた。

 さっさと依頼を終わらせてしまおう。

 私は高名な魔女だからな。

 猫探しなど一瞬で終わりだ。

 まず始めに、魔法で猫の場所を特定をしよう。

 そう思い、右手に持つ杖を前にかざす。 


「猫よ~見つかれ!」


 かけ声は適当だ。

 この魔法は特定の種族を感知することができる。

 杖に淡い光が集まり、猫の場所が大まかに分かった。

 いや、猫が思ったより多いな。

 ここから特定の猫を探すのか……

 受ける仕事、間違えたかも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ