第一夜の4
「代わりに頼みがあるのだが……」
巻き込まれたとはいえ、私の身体等を取り戻すと言ってくれたカミュスに、できることがあるなら、力を貸さなくてはならないだろう。
「何かしら?」
「君の目を貸してほしい」
「?」
「先ほど目的は同じであると言ったであろう。私は奴に瞳の色を奪われたため、視力がとても弱くなっている。しかもちょっとした光でもまぶしく感じるので、目を開けていられない」
彼は自分の瞳を指さした。
綺麗な赤い瞳だ。
「この目は元々のものを再現したものだ。ここは私の夢の中だからどうとでもなる。現実では、先ほどのように両目を布で覆い、魔力感知を目の代わりに使っている」
だが、常に魔力を消費するので、疲れるのだ、とカミュスは言った。
「それに魔法を使う時に、魔力が足りないということも起こりうるかもしれない。まぁ、魔力量は多い方なので、今までで困ったことはあまりないが」
「ここから動けそうもないので、別にいいけど、どのように目を貸せばいいの?」
彼は私の両目にかぶせるように右の掌を当てた。
何かがずわっと掌に吸い寄せられた気がする。
目を覆っていた手が取り除かれる。私の視界に変わったところはない。
カミュスは天を仰ぐように顔を上に向けていたが、私の方を向いて、閉じていた目を開けた。
「どうだ?」
「瞳の色が……変わった」
カミュスの瞳の色が赤から紫に変化している。
「見えるな」
彼は目の前で手の指を折ったり伸ばしたりして、視界を確かめている。
「私が夢から覚めた時に、君がどのような状態になるのかが気がかりだが。。寝てしまうとしても目は借りたままになるだろう。私の夢に入り込んでいる状態なので、私が起きている時には、多分回復のために寝てしまうのではないかと思う」
「カミュスの姿が薄くなっているような……」
「目が覚めそうだな。続きはまた次に会った時に」
徐々にカミュスの姿が薄くなる。
「まだ聞きたいことがたくさんあるのに」
「すぐ会える」
カミュスが口の端を上げ、私の頭を撫でた。
カミュスの姿が消えると同時に、私の瞼も重くなり、意識がぷつりと切れた。