表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目が覚めたら夢の中  作者: 説那


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/49

第三夜

「カミュス!」

 近くで私を呼ぶ声がする。

 目を開けると、目の前に涙をたたえた青い瞳があった。水色の髪が私の顔に落ちてくる。

 白い床の上にあおむけに寝ている私を、少女がのぞき込んでいるようだ。

 珍しく少女の方が先に目覚めたらしい。

 過去の記憶に引きずられたせいで、頭が痛いが、なんとか表情を取り繕った。


「テラ?どうした。そんな泣きそうな顔をして」

「貴方がうなされていたから。心配で」

 私は愛しい少女を安心させるように笑いかける。

「心配してくれて、感謝する」

 テラはその顔をゆがめた。私の額に手をやり、前髪を優しくなでてくれる。

「当然だわ」

「……話の続きだな」

 前髪に置かれた手を取って、私はその場に上半身を起こす。


 テラの様子を観察する。また身長が伸びている。今は9歳くらいだろうか。

 服は白のワンピース姿に戻っていた。

 私の夢の中だからなのか、テラには何か物を出したり、服を変えたりといったことはできないようだ。できたとしても、あえてする必要もないのかもしれないが。


「私の身体を取り戻さなくてはならないのでしょう?でも、どうやって?」

「魔王は君の身体で、アメリアという自動人形を作っている。アメリアから君の身体を取り戻す」

「でも……」

「アメリアから意識を引きはがせばいい」

「その方法は?」

「実際に行ってみないとうまくいくかはわからないが、大丈夫だろう」


 私が奴にされたように、意識を引きずりだせばいいのだ。その方法まで、彼女に話す必要はない。


「魔王とアメリアを一時的にでも引き離しておかないといけない。2人を同時に相手するのは、私でも手に余る。……アメリアには、まだ自我のようなものがある。何か興味の引くものでおびき寄せるか」

「魔王とアメリアの仲はカミュスから見てどんなだった?」

「アメリアは、魔王に身体や視力を貸すほど隷属しているが、自分の意志で動いているように見えた。命令は聞くが、自分の意見を持ち、それに伴っても行動できる。人形の範疇は超える」


 テラは少し考えこんだ後、さらに問いかけてくる。

「その人が興味を引くことってなに?」

「多分、魔王を喜ばせることができること」

「それは、あなたじゃないの?」

 そう。魔王が欲しがっているのは私自身。ただすんなり手に入れるのはつまらない。抗って抗ってその上で手に入れたい。そう思っているはず。


「交換条件を申し出るか」

「交換条件?」

「私自身と君の身体だ」

「でもそれではカミュスが……」

「領政はアルスカインに引き継ぐし、摂政役は今、私についている摂政役をそのまま残留させればいい。君が身体を取り戻したら、意識を戻すまでは私が行うし、あわせて魔力も奪われた分を移してやろう。そうすれば婚姻もできる。私がここにいれば、また魔王からの干渉を受けることを鑑みると、それが一番いい方法だと考えられる」

 私の言葉を聞いて、テラは一瞬ハッとしたような顔になった。

 それを見ながら、今の年齢ぐらいのテラに、自分が告白したことが頭をよぎった。


 あの頃の自分は何も分かっておらず、なんと安直だったことか。

 異分子である私は、君の側にいる資格がない。

 それにこのまま側にいると、私は君をまた傷つけてしまうだろう。


「でもっ!」

 横に座り込んでいた少女は、私の方に身を乗り出す。

 青い瞳には涙がにじみ、白い手が私の袖口を握った。

「カミュスがいなくなっちゃう」

 そんな顔をしないでほしい。折角の決意が鈍ってしまう。

 自分の膝の上で、肩を震わせて泣く少女を抱えて、私は彼女に気づかれないように息を吐く。


「大丈夫だ。今はここにいる」

 君の身体を取り戻す、その日までは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ