回想 強奪2
「そなたは魔力の色が私に近しいから、私の魅了は効かないであろう。抵抗してくれた方が私としても面白い」
特にその色と瞳、そして魂の美しさが欲しい。
エンダーンが続けて語る。
私が瞬きする間に、目の前に立った青年は、私の両目に左手をかぶせるようにあてた。
燃えるような痛みが瞳を中心に広がる。
「くっ……」
左手を払いのけたいが、身体が動かない。背中が壁に押し当てられ、前から青年の右手が私の側頭部に添えられる。
何も見えない。両目が熱い。
この後、私は何をされるのか。
自分の唇に何か柔らかいものが当たった。
そこから何かが引き出されるような感覚を覚える。
「うぅっ」
この身体から引きずり出されるような感覚。吐き気がする。身体を引き離したいのに、力が入らない。相変わらず両目は激しく痛む。
青年の身体が離れ、両手は目と後頭部より外され、両肩に当てられた後、壁にさらに身体を押し付けられる。
「残念だけど、魂が吸い出せないな。でも、いい表情だ」
目を覆っていた手が外されたのに、視界はぼんやりとしており、ほとんど見えない。しかもとてもまぶしい。
私は瞼を閉じ、とっさに魔力感知を発動させた。視界がクリアになっていく。
エンダーンは私の目の前に立っていた。荒い息をつき、その金色の瞳に恍惚とした色がある。
瞼を開いていないとはいえ、多分私の方も同じような状態なのだろう。
羞恥心から顔に熱が集まる。
「魂は無理だったが、色はもらったよ。それで、私と一緒に来るだろう?」
「はぁ……断る。」
声がかすれる。
エンダーンは嬉しそうに、くつくつと笑った。
「まぁ、今日は初めてだし。次の機会にしよう」
エンダーンが付けていたマントを翻す。次の瞬間には彼の姿はかき消えていた。
私は壁に寄りかかって、身体を床に沈ませる。身体に力が入らない。意識が揺らぐ。
周りが暗転した。




