表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目が覚めたら夢の中  作者: 説那


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/49

回想 彼の告白1

「テラスティーネ様。カミュスヤーナ様がいらしていますが」

「今、まいります」

 私は鏡で自分の様子を見直しました。

 あの頃はやせていた頬もふっくらとし、体形も年相応に戻っています。

 9歳になった私は、少しはカミュスヤーナ様に並び立てるような容姿に、なれているのでしょうか。


 カミュスヤーナ様をお迎えするために、部屋を出ます。

「カミュスヤーナ様は、本当に毎日のようにテラスティーネ様の様子を伺いにいらっしゃいますね」

「……嬉しいです」

 侍女の言葉に、私は笑みを浮かべて答えます。


 初めてお会いした時の私のやつれ具合が、カミュスヤーナ様の御心を痛めたそうで、私の様子を毎日のように見に来てくださり、そのまま食事やお茶をご一緒することが多いのです。もう、あれから3年もたっているのですから、その気遣いに恐れ多くなります。

 院でのお勉強など、お忙しい身で、ございましょうに。


 アルスカイン様は一つ違いということもあって、院でお話をする機会が多く、帰宅してからも顔を合わせることはあります。しかし、カミュスヤーナ様ほど、自宅で一緒にお時間を過ごすことはありません。


「テラスティーネ」

 部屋に入った私を見て、カミュスヤーナ様のお顔がほころびました。

 いつもじっと見つめてしまうほど、カミュスヤーナ様のかんばせは美しいのです。ぶしつけかもしれませんが。


「ああ、今日も体調はいいようだね」

 カミュスヤーナ様は私より背が高いので、隣に立つと、私が仰ぎ見る形になってしまいます。

 そのため、カミュスヤーナ様は私に話しかけるときは、私の首が疲れてしまわないよう、私の前に片膝をついてくださいます。


「あの……。カミュスヤーナ様。毎日私の様子を見に来て下さるのは大変なのではないですか。私は大丈夫ですから、こんなに頻繁でなくてもいいのですよ」

「私がテラスティーネに会いたいから来ているのだ。そんな気を使わなくていい」


 柔らかい笑みを浮かべられて、カミュスヤーナ様は私の頬を撫でました。

 カミュスヤーナ様のお顔が近くて、私は撫でられている頬が赤くなるのを感じます。

「今日は草花の図鑑を持ってきた。時間があるときに読むといい」

「いつもありがとうございます」


 私のところにいらっしゃる時には、花や本、お菓子などをお持ちくださいます。

 私はいつもいただく行為に、どのようにお返しをすればいいのか……困ってしまうのです。


「テラスティーネ。次の日曜日は空いているかい?」

「特に用事はございませんが」

「この近くにフィラネモの丘があるのだ。今が見ごろだという。久しぶりに外に出ないか?」

「いいのですか?」


 フィラネモは青い小花をたくさん咲かせる花で、春に丘全体を覆うように咲きます。遠くから見ると、青一色の丘になっているのでしょう。

 外には、ほとんど出ずに過ごしていたので、見るのは初めてです。


「はい。嬉しいです。楽しみにしております」

 カミュスヤーナ様が優しいまなざしで、私をご覧になりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ