表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逢魔ヶ高校生  作者: 囀
第1章 入学怪談会編
7/43

五夜 自己紹介 2

 源先生の自己紹介が終わり、次はいよいよ待ちに待った俺達の番になった。


「それじゃあ、僕の隣えーっと、美留町(びるまち)さんから時計回りに自己紹介してもらいましょう!」


 1年霊組生徒のトップバッターは、教室で視線を浴びられていたあの少女だった。美留町さんは源先生に呼ばれたあと「はい」と落ち着いた顔をして口を開く。



「分かりました。私の名前は、美留町(びるまち) 雨音(あのん)です。先祖代々私の家系は祓い屋をやっています。そして、こちらは(そう)。私の従者です」


 美留町さんが、隣にいた霜さんと呼ばれた方に手を向ければ彼は一礼をする。


「はい、黒脛(くろはばき) (そう)と申します。この度は、雨音お嬢様、そして皆様のご入学を大変嬉しく思います。(わたくし)は、雨音お嬢様の執事・護衛としてこの学校に特別加入しました。生徒ではありませんが、彼女と共にこの学校の一員として様々なこと学んで成長していきたい思います」


 礼儀正しい自己紹介と共にまた一礼をした。そのあと隣にいた少女に「どうぞ」と親切に合図をする。鮮やかな緑が染まったふわふわな髪の毛。瞳も自然豊かな黄緑色で、くりくりしていた。


「はぁい♪私の名前は、森咲(もりさき) 若葉(わかば)。木霊一族の長女で〜す♪みんなと仲良くなれたら私もみんなもhappyです〜!宜しくお願いします♪」


 口調ものほほんとしていて彼女に合っていた。

 

 木霊の一族か‥‥。確かに特徴がほぼ緑系だし納得がいく。


「お、じゃあ次は俺っスね!俺の名前は稲荷神(いなりがみ) 紺太郎(こんたろう)っス。見てわかる通り俺は妖狐の一族っスよ〜。よろしくお願いしますっス!」


 次に紹介したのは、狐の顔をした面布を付けた紺太郎くん。こんがりと焼かれた狐色の髪の毛、毛並みの良さそうな尻尾と耳。楽観的で話しやすそうな方だと思った。けれど、面布で隠された素顔は一体どんなのか少しミステリアスな一面もあるな。


「どーも!俺の名前は赤鬼(あかき) 影京(かげちか)。鬼の一族赤鬼家の長男で、弟が4人妹が3人いまーす!皆さんどーぞ仲良くしましょう〜!」


 紺太郎くんの次は、鬼一族の影京くんだった。鬼特有の角が2本。教室でも思ったけど、2本の角が生えた鬼は見たことがなかったから凄くワクワクした。

へぇ、兄弟沢山いるんだ〜。家で、わいわい騒いで賑やかなんだろう。


 そして、次に紹介するのは教室で1人黙々と本を読んでいた高身長の少年だった。


「‥‥俺は、絲目(いとめ) 結羅(ゆら)。よろしく」



「っえ?それだけっスか?!短ッ!」



「もうちょっとなんか喋れよ〜な?な?家族構成とか、好きな食べ物とか!あ!趣味とかでもいいな〜!」


 たったの数秒で事を終わらせたことが、物足りなさを感じたのか彼の隣で色々突っ込んでくる2人。影京くんは、そんな彼に肩を組み始めた。


「‥‥‥(うぜぇな、寄りかかってくるなよ)」


 結羅くんは嫌そうな顔をしていて、軽くあしらうもしぶとくくっついて来た。そして、突き放すと言う事を諦めた。


「絲目さん、絲目家の次期当主が自己紹介すらもしっかり出来ないなんて絲目家の名が泣きますよ?いいんですか?」



「あ、そう言えば絲目さんって絲目財閥の息子さんでしたよね!土蜘蛛一族の‥‥」



「え、はぁ?!アンタ御曹司だったんスか!まじで言ってんの?」



「おいおいおい、ここの奴ら金持ち多すぎじゃね〜羨ましすぎるだろ」



「何と!あなたもrichな人だったのですね〜♪すばらしい〜」



「‥‥‥。(お前ら余計な事言うな)」



 紺太郎くん、影京くん、そして森咲さんの言葉責めにより眉間に皺を寄せ困り顔をし、結羅くんは美留町さん達をきつく睨みつけた。

 しかし、美留町さんは変わらず澄ました顔する。


「あまり、ふざけた態度は絲目家として相応しくないと感じたのでそう言っただけです。ま、貴方がそれで良いのなら良いんですけど。自己紹介のろくに出来ないというレッテル貼られるのまっしぐらですが」

 

 そう言って美留町さんは冷笑した。


「っは、それは草が生えるな!!あはははは!!!」


「‥!」


♫♫♫



「!!うお、何だこれ!!う、動けねぇ‥‥」


「‥‥‥」

 

 一瞬の出来事だった。小馬鹿に笑う、いや盛大に笑っていた影京くんにキレた結羅くんは右手から蜘蛛特有の白い糸を出しあっという間に彼をぐるぐる巻にした。

 そして案の定、影京くんは身動きが取れず後ろでジタバタもがいていた。結羅くんは隣で起こっている状況を完全に無視している。


「あらあら」


 それを見ていた源先生はやめろと注意するわけではなくただ驚いていた。


「おやおや、流石絲目財閥の息子さんです。戦闘体制も優れていますね」


「いいえ、むしゃくしゃしたのですよ。彼は」


 霜さんの言葉に美留町さんも軽く鼻で笑った。 


「うわ‥、瞬きせずにやられちゃったよ」


 俺の隣で、あり得ないような目で見て呟く鈴。肩に乗っていた幸気ちゃんも、


「流石土蜘蛛一属‥‥」


とやれやれ状態だった。一方俺は、目を輝かせながら彼を見ていた。


「すごい‥‥、糸が一瞬で出てかっこよかった‥‥」



「(いや‥‥、やばかったっスね。これがお偉いさんの実力)」



 他の人達も凄いと彼を見つめ話している中、当の本人は「はぁ」と1つ深呼吸をして月のように輝く黄色の目をギラリと光らせた。そして、一瞬目つきを鋭く俺達を見た後、


「初めまして皆さん。ぼくの名前は絲目 結羅です。先程は、お見苦しい所を見てしまい申し訳ありません。先生が仰ったように僕は絲目財閥の絲目家53代目の次期当主になる者です。まだまだ僕も未熟者で足りない所があります、ですが皆さんと共に成長できたら僕も嬉しいです。よろしくお願いします」


 まるで人が変わったかなように優しい表情で自分の事を説明する結羅くん。さっきまでの、冷たい表情はいずこへ。


 いやでも"俺"の時が本来の彼で、"僕''の方は違うのかも。


 不思議に思いながら彼を見つめていると、今度は美留町さんと何かを話している様子だった。



「ふふ、やれば出来るではないですか。流石ですよ絲目さん」



「お前がそう言ったんだろ。美留町」


「あれ?そうでしたか?私は、"別に構わないと"言っただけで、"やれ"何て一言も言ってませんよ?」


「相変わらず、上から目線の性格が今でも続いてるようで何よりだ。執事さんも大変ですね、こんな赤ん坊の面倒を見るの」



「なっ‥‥‥!貴方今何を言いましたか!?」



 な、なんか話し合っているより‥と言うより仲が良いのか?あれ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ