五夜 自己紹介
「中に入ったら、あの蝋燭達を囲むように輪になって座ってください」
「あ、その蝋燭倒さないように気をつけてくださーい」と源先生からの補足を聞き、俺達は指示通りに蝋燭から少し距離を置きながら座り込んだ。
目の前にある、蝋燭の炎は消える事を知らないまま赤く燃え上がっていた。この光のおかげで、他の生徒達の顔を見ることができた。
それから、皆の用意が終わったのを確認した源先生も俺達の所へ向かい座り込む。
「それでは、改めてまして皆さん!ここ暮六高等学校のご入学おめでとうございます。先程教室でも軽く自己紹介したけれど、念のためもう一度。僕の名前は源暁です!僕は、新任なため担任を持つのが君達が1番最初のクラスなんです!不安も結構ありますけど、君達がより良い学校生活を送れるよう僕も日々生徒達に寄り添えるように頑張ります!よろしくお願いします」
意気込んだ挨拶をした後、軽く一礼をする。それを見て、俺達は源先生に向けた拍手を送った。
やっぱ教室でも思った通り、この先生はやる気のある方だ。
「では、何か僕に質問とかあったら是非是非どうぞ〜!できる範囲答えていきますよ!」
「はいはーい!先生の年齢は何歳なの〜?」
鬼の角をした少年が、手を上げながらつらつら言葉を並べた。
「年齢は‥‥24歳ですね」
「じゃあ、出身地は〜?」
「出身地は京都です。皆は去年修学旅行で京都と奈良の観光しましたか?」
「はい!しました〜!!八つ橋美味しかった!」
「私京都出身なので、修学旅行は東北に行きました〜♪」
「八つ橋!!美味しいですよね〜!最近ではお土産用に色んな味の八つ橋がセットで販売されてますよね。東北ですか‥、やっぱり住んでいる地方によって行くところが違うんですね。では、後は‥」
「はい!先生は今ご結婚されているんですか?」
「結婚‥!考えた事ありませんでした‥。やはり人の恋事情って気になりますよね。僕は恥ずかしながらまだ、そう言った人は居ないですね。逆に貴方の話を聞いてみたいです!」
「あら、私ですか?‥‥ふふ、まだまだこれからです♡」
「成る程、素敵な人と出会える事僕も応援してます!」
他にも、皆は先生に対して気になった事どんどん質問していった。
好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味や学生時代何やっていたかなど。種類は様々だった。
「先生はどうして、怪談師じゃなくて教師になりたいと思ったの〜?」
あ、それは確かに気になる。きっと、怪談師よりも教師の仕事がより魅力的だと感じた理由が何かあるはず。
「あ〜、それ前に友人にも言われましたね。怪談師の方が良いんじゃないかって。実を言うと、僕もここの卒業生なんですよね」
へぇ〜そうだったんだ。
「実は家庭の事情で、一度怪談師の道を諦めて、九州に移住したんです。初め九州の大学に合格したのでそこで勉強をして普通にサラリーマンになろうかと思ってました」
九州か‥‥。結構ここから離れているし、源先生も大変な人生送ってきたんだな。
「けれどとある人に出会ったことがきっかけで、教師になろうと決めました!実際に学校に行って教育実習をして辛かったこともあったけど、僕にとっては刺激的な日々でした。勿論、妖怪学校や人間の学校色んな所見学してきましたよ!それで、教員免許も取得して異動先が偶然にもここだったんです。あの方には色々僕を助けてくださって本当に感謝しています。あ、因みにその人とたまに連絡を取り合うくらいの仲にはなりましたね!今でも連絡してますよ」
そう彼が話終えると、
「成る程‥‥、先生も大変だったんですね」
「九州か〜、遠いな〜」
「明るく振る舞う先生の裏では、苦労した人生を送ってきたんですね。すごいです〜♪」
「あはは、暮六高等学校は怪談に特化しているので怪談師を目指す人が進学することが多いですが、途中で夢が変わったって人も少なくないです。別におかしい事ではありません。皆も進路について何か困ったことがあったら遠慮なく教えてくださいね」
そして、生徒1人1人の顔を見て優しく微笑んだ。