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逢魔ヶ高校生  作者: 囀
第1章 入学怪談会編
36/43

十五夜 宵の紅い月 2

(No side)


「皆さん、大丈夫ですか! ‥‥‥!」 


 暁は思い切り襖を切り開き、部屋中に精一杯の声を張り上げた。しかし、その光景を見た彼らは思わず目を見開いた。そこには、綺麗に敷き詰められた畳が無惨にもぐしゃぐしゃに破られており、壁一面にナニカが描いた引っ掻き傷。


「お嬢様! 皆様!」


「これは‥‥一体‥」


「!! 源先生‥‥!」


 部屋の隅っこで蹲っていた顔に擦り傷を負った少女-氷見谷(ひみや) 茉凜(まりん)が外の光を見つけて悲痛な声を叫ぶ。彼女の周りには、同じ様に傷を負った暁の生徒達が避難していた。


「皆様、大丈夫ですか!」


「これが大丈夫に見えるとでも!?」


 今にも泣き出しそうに、涙を浮かべる可愛らしい少年-白玉(しらたま) 幸気(ゆげ)が大声をあげる。彼の白雪色の腕からは切り傷、その傷口から血が今にも白い肌に垂れそうだった。


「良かった‥、重症の怪我をしてなくて‥。すみません、俺が鈍い所為で皆さんに怪我を合わせてしまいました。本当、自分が情けない」


「‥‥先生、私達の事は平気ですから、そんな事より‥‥春夏冬(あきなし)くんが!!!」 


 肩を負傷しながら呟く眼鏡っ子-恋仲(こいなか) 心待(こまち)は震えながら指を指す。その方向を、暁と霜が見つめると‥‥。


「春夏冬様!!」


「!!!」

 

 何とそこには、酷く色白の肌を見せ膝あたりまで伸びた青い髪を靡かせた見知らぬ女性が椛に襲い掛かろうとしていた。


 女は、椛の両頬を掴み彼を酷く睨みつけていた。長い髪で良く見えないが、この世の者とは思えない視線を彼は浴びていると言うことが暁には分かった。


「あ、源先生‥俺‥」


 目の前の女性に呆気に取られていた椛が、霜と暁の姿に気づき目玉だけを動かして助けを求めた。彼の瞳は、一粒の涙を零すことなく酷く怯えていた。



(あぁ‥やっぱり‥!! 未だに祓われていなかったのか!)



「春夏冬くん!!!!」




♫♫♫

(椛sideに戻ります!)


 今から数分前。



「最後の蝋燭の火が消えてる‥‥」


 誰かがそう言った途端、辺りは暗闇に包まれていった。その展開に、周りの皆が落ち着いていられる訳もなく焦る様な声が彼方此方に聞こえてくる。


「椛、居る?」


「うん、俺はここにいるよ」


「良かったぁ‥‥。居なくなってたら心臓止まるもん」


 大丈夫大丈夫、俺は居なくならないから。


 寂しそうな鈴の声に俺は、そう思いながら暗く見えない彼の肩を慎重にさする。すると突然、パッとひとつの明かりがついた。


「!? ほ、炎‥‥」


 俺が驚き声を上げながら、明かりの方を見てみると紺太郎くんの手から真っ赤に燃える炎が現れていた。彼は、自身から燃え出すそれを見て安堵の表情を見せる。

 

「はぁ‥‥、あっぶなかったッスね‥。俺が火を操れて良かったっス」


「紺太郎くん? 手から炎が‥‥!!」


「うぉ、稲荷神お前急にあぶねーもん出すなよ! ってその炎‥‥」


「成る程、火の妖術を使えるのか。稲荷神」


「オレの家系が火を扱うんで。てか、絲目くんアンタだってこんな簡単な事出来るでしょ。今から全部の蝋燭に灯すんで手伝ってくださいッス」 


「‥‥そうだな。つか、12本なら1人でも出来るだろ」


「ズベコベ言ったらダメっス!」


 2人が何やらガミガミ言い合いながら、蝋燭の棒に次々と炎を照らし始める。その度に、真っ赤な光が部屋中に渡り明るくなっていった。



「て言うか、これ大丈夫なの?!」



「幸気ちゃん、何か不満事でもあるの?」



「不満も何も、僕達最後の一本消しちゃったんだよ?! これから変なこと起きるかもしれないのにお前らナニ平然と蝋燭に火を灯してるの〜?! 正気の沙汰じゃない!」


「まぁまぁ、落ち着いて。幸気ちゃん、大丈夫よ!」


 氷見谷さんの楽観的な態度に「んな訳あるか!」と全く納得していない反応に対して、森咲さんは紺太郎くん達が出す炎に興味津々になっていた。


「うふふ〜♪ 紺太郎くんこの青い炎も貴方が作り上げたものですか〜? とても、綺麗ですね〜♪」


「ん? 俺青い炎は出してないっスよ? 正真正銘真っ赤っスから」


「あれれ、上にも炎が揺らめいてるのでてっきり。私の勘違いでしたね〜♪」


 「うっかりです〜♪」と愉快そうに笑う森咲さんに他の人達が不思議そうな顔をし始めた。


「‥‥上ぇ?」



 影京くんが呟きながら天井を見上げると、何個もの青い炎らしき物体が浮遊していた。



「ってこれ、青い炎じゃなくて人魂(ひとだま)っス!」



「人魂?! わぁ‥これが‥‥!」


「椛の目が‥光ってる(さっきまでの青ざめた顔は何処に?!)」



「ふむふむ成る程〜私人魂は初めて見ました〜♪ とても綺麗ですね〜」


「綺麗‥? さては森咲さん、感覚鈍ってる?」



「でも‥‥、人魂なんてどうしてあるのでしょうか」



 恋仲さんが、腕を組みながらぶつぶつと呟いた。その時だった。


カタカタカタカタカタカタ



「きゃぁ!」



「な、何何々なになになに!!」


 

 壁に飾られていた掛け軸や、小物が一斉に揺れ始める。その大きな音に周りが再びざわめき出した。


カタカタカタカタカタカタ


「‥おい、何か変な気配がするぞ」


 絲目くんの目が鋭くなる。それは美留町さんにも分かった様で俺達に指示をした。


「皆さん、落ち着いてください!」


 美留町さんのしっかりした声が響き渡る。が、彼女が発し終えた後、誰も声を出してないのに奇妙な唸り声がこの和室から聞こえてきた。


「アァァァ‥‥」



「ぎぇ、何か変な声聞こえたんだけど!!」



 その声は次第に音量が増してゆく。最初は、蚊の鳴くような声。そこから徐々に音が大きくなっていく様に唸り声が響き渡る。それと同時に天井に大きな闇の渦があることひ気がついた。



「何‥‥、あれ」


 その塒を巻いたように出来上がってゆくそれはどんどん広がっていく。



「アァァァ‥アァァァ」



「ワ‥‥シ‥スル‥ナ」



「ワ‥タ‥シノ‥‥マヲ‥スルナ」




「ワタシノ『ジャマ』ヲスルナァァァ!!」



 最後に盛大な叫び声が聞こえた瞬間に闇の渦巻からナニカが飛び出してきた。それは、女の人だった。いや、正しく言えば女の人の怪異だった。


 色白の死人の様な肌に全身青の着物を羽織ったお世辞にも"綺麗"だと言えない。その長く伸びた青い髪で顔が見えない所が"不気味"と言う印象を与える。



「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」



「うわぁぁぁぁあ!?」



 周りも、予想外な展開にパニック状態。叫び声が鳴り止まない。



「‥‥!」



「怪異です‥! 皆さん、下がってください!!」



 そう皆の前に立ちはだかり、何処から取り出したのだろうか数枚のお札ふだを手に何かを唱え出す。



      『(りん)村雨(むらさめ)の乱』



 その途端、大粒の雨の様な針が一斉に女性の怪異に降り襲う。その攻撃により、和室の壁が壊されていく。


「うわぁ‥?!」


 俺は勢いよく吹っ飛び、地面に叩きつけられる。同時に、懐にしまっていた『本』が飛び出して転がり落ちた。そして本が転がるのを止まった時、偶然にもとあるページが開いた。


「俺が話した怪談‥‥」


 本の中身に、自分が語った話が『青薔薇の秘密』と言う題名で綴られていることに気づき俺は急いで立ち上がった。パタンと開いた本を閉じ、転んでしまった拍子で付着した埃を払う。


「それにしても、この本‥」


 俺がそれについて呟こうとした時、


「椛っ!! 後ろ!」


 向こうのほうから人型に変わった幸気ちゃんの姿が俺を見て叫んでいた。本に気を取られていたせいで、すっかり忘れていた。


「!!」


 ま、まずい!! 俺の所に向かってる!!


 急いで逃げようと足を動かすが、彼女怪異の速さに人間の俺が付いていける訳もなく気がつけば彼女は俺の目の前まで来ていた。そして、細長い腕を俺に向かって伸ばし捕まえようともしてくる。


 俺は、反射的に目を瞑ることも腰が抜けて地面に落ちることもなく只々彼女が近づいてくる姿を見つめる事しか出来なかった。


 あ‥。


 彼女との距離があと5センチ程度の所で、鈴が横から素早く蹴り上げた。ガンっ!と鈍い音と共にとてつもない力で女の怪異は吹っ飛んでいく。


 どうやら、俺が襲われそうになってるのに気が付き全速力で向かったらしい。ごろごろと遠くに転がる彼女を鈴は冷たい眼差しで見つめていた。そして吐き台詞を一つ、


「椛に触るな」


と発する鈴は、まるでテレビに出てくるヒーローの様だと感心してしまった。



「す、鈴‥!!」



 俺が声をかければ、先程まで凛々しい顔をしていた鈴は突然顔色を変えて此方へ向かってくる。ガシッと俺より成長した手で俺の肩を掴み、今にも泣きそうな声で「椛!」と俺の名前を呼んだ。



「! 椛、大丈夫?! 平気?! アイツに何処か怪我させられた?!」



 あ、いつもの鈴だ。いつものあの優しい顔をした鈴に戻っている。



「大丈夫だよ。鈴が守ってくれたから怪我一つしてない!」



 ニコッリ満面の笑みで鈴に答えれば、とても安堵した様な顔を見せた。



「で、でも椛は絶対俺の側から離れちゃダメだよ!!! 椛は俺が守るから!」



「鈴その言葉は何だか告白みたいだね」



「何言ってるの? もしかして脳に何か細工された?!」



「解せぬ」



 別にそんなつもりで言ったわけではないのに。


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