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逢魔ヶ高校生  作者: 囀
第1章 入学怪談会編
35/43

十五夜 宵の紅い月(No side)




「あれ〜、化け提灯今日は一段と派手な格好してんじゃん」


 ショコラは、彼-(ともしび) ヒスケを見つけては揶揄い出す。


 いつもは、真っ赤でしわくちゃなおべべを身に纏ったような肌に化け物と思わせるかのような(妖怪ですが)ぎょろぎょろ目玉。

 コンパクトかつちんちくりんなサイズで、思わず踏み潰したくなる、そんな残酷な衝動にショコラはいつも駆られていた。


 しかし蓋を開けてみれば、寝癖ひとつない月の様な髪に、光沢混じりの柘榴石みたいな瞳。鼻も高く、スタイルも抜群な羨まれそうな体型だ。おまけにじじ臭い声の欠片も無くなりまだまだ若々しい凛としたものになった。


 初めてショコラが見た時、「あんた誰?」の何十歳もの先輩教師に敬語も不使用な失礼極まりない言葉をかけてしまった事を今では笑い話の一環として取り上げられているのだ。


 そんな見た目はイケメン男性、中身は年老いたおっさん妖怪のヒスケは暁やショコラの声に耳をピクリと震わせる。賑わう彼等の方に視線を移しては、「はぁ‥‥」とでっかい溜息を吐いた。


「全く、お前さんらは相変わらず元気じゃな。もう少しは、年老いを労ることが出来ないのか?」


「いやいや〜、ひーちゃん先生がその姿だと同い年だと感じちゃって。うっかりうっかり〜」


 「あはは〜」 能天気な笑い方をしながら呟くライヒェを見て、こやつは"礼儀正しさ"の"れ"の字もないな、更にヒスケは頭を抱えた。


「その燈先生あなたの姿見てると、"年寄り"の概念がさっぱり消えてしまうのは僕でも分かるよ」


「でしょでしょ〜! やっぱり柯楓せんせーも言うんだからしょーがない!」


「ライヒェ」


 全く反省しない、いや寧ろより楽観的な態度になっている彼に対しヒスケの綺麗な額から青筋が立とうとしていた。そこにすかさず、冷泉が宥める。


「落ち着いてください燈先生。ライヒェは、今後きっちりと指導しておきますので」


「‥‥まぁ、お前さんが言うのならいい」


(良し、何とか落ち着いてくれた)


 ヒスケは、怒り出すと学校を破壊する恐れがあるのだ。しかし、性格も若人の考えとは異なり年寄りの思考に変わっている。おまけに、年齢も100歳以上の差がある。違う時代を生きてきた訳だから、接し方が難しい。

 

 知識が豊富な面も有れば、今時の考えに反論する所もあるため揉め事が起きるのも当たり前なのだ。


(全く‥、余計な仕事を増やしやがって)


 冷泉は、ライヒェに対して恨みの念を持ち、静かに彼を睨みつける。がしかし、そんな事も知らずに後輩の暁に構いまくるライヒェは非常に幸せ者なのだった。


♫♫♫


 やがて、モニターの向こう側で各クラスが身動きしだした。どうやら、無事に行事が終了したみたいだ。皆、緊張した空間から解き放たれたのか表情も柔らかくなっているように感じる。蝋燭の灯りが少なくてもよく分かる。


「おっ、私のクラス終わったからちょっと迎えに行ってくるわ」


 グラスに入っていた飲み物(血液)を飲み干し、ショコラは担任する1年 異地(いち)組の所へと向かっていった。


「じゃあー、オレの方も終わったっぽいんで行きますねー。あとは、新入りのクラスだけですね〜!」


 そう言って、ライヒェも1年 ()組の方へとこの部屋から去っていった。


「さて、僕らは霊組が終わるのを待とうかな」


「すみません、ありがとうございます」


「いいや、良いんだよ。僕も1年の副主任として役に立たなくては! 何より冷泉も主任だから、分からない事があったら遠慮なく言って」


 柯楓は、自身の細い腕を上げてガッツポーズを見せる。その姿に先輩に対する頼もしさを感じた。


「ふふふ、暁くんのクラスの皆どう?」


「はい、皆さんとても素直な方達です。人柄も良く僕自身も見習わなければいけない所も有りましたね」


「その素直さが時に、事件を巻き起こす種になるがな」


「こらこら、冷泉。あまり新任をいじめる様な事言わないの。暁くん、もし冷泉達に変な事言われたら直ぐに言うんだよ?」


「はい! 分かりました!」


「おい黒鳥ふざけるな」


♫♫♫

 暁はそれから、先輩教師達と他愛のない話をしながら生徒達が終わるのを待っていた。

 途中、再び隅っこでメモ用紙に何かを書き並べる霜に彼が声をかければ、渋々暁の隣に向かい椅子に腰掛け話の話題に参加する。


 それから、暁が画面の向こうの彼等が気になり顔を近づけると、


ブツっ


電源の切れる音と共に彼が見ていた画面が真っ黒に変わっていった。


「‥あれ?! 消えた?」


「電波の回線が悪いのかな?」


「いや、そんな筈ないだろう。他の所は使えるぞ」


「うーん‥‥。壊れちゃった? このモニターも古くなって来たからねぇ」


 「今度買い直しに行こうかなぁ」と柯楓がブツブツ呟きながらモニターを眺めていると、暁の隣に座っていた霜が難しそうな顔をしながらスマホを見つめていた。


「霜くんどうしましたか?」


「‥‥源様。実は先程から、不在着信が十件以上も来てまして‥‥」


 そう言って、不気味そうな顔を浮かべながら自身のスマホ画面を見せる。


「着信相手の名前、文字化けしてるな」 


「それに先程からお嬢様に連絡をしているのですが、一向に繋がらなくて‥‥」


「怪異? ‥‥何か、向こうであったのかな」 


「まさかそんな筈」


「いや、ある」


 今まで黙っていたヒスケが重い口を開いてそう言った。暁もそれに驚き声を漏らす。


「! ヒスケ先生‥?」


「こんな妖だらけの空間など異変が無いのが珍しい事なんだ。お前さんもそれは重々理解している筈、同じ校舎で学んだ者なら当然。特に、お前さんならな」


 ヒスケの言葉に暁は「う‥」と黙ってしまう。確かに、彼の言う事は一理ある。此処は、妖と人間が唯一共学できる場所。そして、妖は力を持たない人間を狙っては襲い殺める事も。


 暁のクラスでも、たった1人だけ妖力を持たない、ごく普通の人間の男子生徒がいる。祓い屋の様な妖との関連性がある者は此処に入学する事があるが、彼の様に妖怪との接点を持たないと言う事は極めて珍しい。


 彼は、此処に居る妖怪が大好きだと言ってくれた。実を言えば、暁自身も妖怪と人間が共存できる世界を作れたら良いと考えていた。だからその言葉を聞いた時、暁は本当に嬉しかった。


 しかしそんな彼を、彼が大好きな妖怪が傷つけてしまったら‥‥。



「‥‥僕、皆さんが心配なので少し様子を見に行きます!」


「私もご一緒します。お嬢様がご無事なのか確かめにいかなくては!」


「ありがとうございます、霜くん! では、行きましょう!」


♫♫♫


「皆さん、僕です! 只今戻りました!」


 暁は、霊組の生徒達の居る部屋の襖へと手を掛けた。が、しかし‥‥。


「‥‥な、何で開かないんですか?!」


 扉にどれだけ力を入れてもびくともしなかった。しかも、向こうから力を加えている訳ではなくナニカの力が働いてると言う事は瞬時に理解できた。


(どうしてこんなに何重もの結界が張られているの? ‥‥しかも、とても強い妖力が込められてる。こんなの一体何処で‥‥)


 そこまで考えた途端、暁は一つの原因が彼の中に思い浮かび思わず顔面蒼白になった。

 

「まさか!!! ‥‥そんなはず」


「源様! どうしましたか?」


「‥‥‥霜くん。少し危ないので、離れて貰えませんか?」


「‥? はい」


 暁の真剣な声と表情に、ただならぬ雰囲気を感じた霜は彼の言う事に従った。


(こうなったら、強行突破するしか‥)


 暁は徐ろにブレザーの裏ポケットから数枚のお札ふだを取り出した。生徒の皆を助けるにはこれしか無い。


(しっかりしなきゃ‥‥! 大切な生徒があの中に居るんだ! もたもたしている場合では無い。しっかりしろ、源暁自分!!)


 頬をパチンと思い切り叩きぼんやりとしていた意識を覚まさせる。暁は、結界だらけの襖に一枚のお札を貼り付けた。


「*****‥‥」


 そして、慎重に行う為彼は目を瞑る。お札に妖術まじないをかけるための呪文をつらつら並べていった。彼の口から出る言霊が、この闇の空間とマッチして彼の周りを黒い煙が囲う様に廻った。


 

 




       『(あかね)(こく)






 暁がそう叫んだその瞬間、今まで闇夜の世界が広まり続けていた空間が妖美な赤色に染め上げていった。霜が瞬きする束の間、赤の空に作り替えられてしまった。


 しかし血みどろの錆びた赤ではなく、透き通った茜空。怪しくも美しい、妖怪の神様が描いた絵の様な仕上がり。そして、その上空には、


「‥‥紅い月」


凛と澄ました月が綺麗な赤を見に纏い霜と暁を見下ろしていた。あまりの美しさに空間に霜は思わず、「あ‥」と息を呑んだ。そして、霜の頭から自身が大学生の時に広まっていたある噂を思い出した。


(前に、自分より年下の祓い屋少年が数多の強い妖怪を退治したという噂が祓い屋業界の中で話題になっていた)


 それは、霜が従者として働いてる美留町屋敷でも話は盛り上がっていたのを鮮明に覚えている。自分よりも幼くそして若い方がそんな桁外れの実力を持っているのはとても尊敬する。


 そんな噂が立たない中、大人も子供も関係なく皆は少年を"怪異殺しの達人"と称賛していた。


(確か彼が使う妖術の中でも一際目立っていたのが、紅い月が満ちていた夜の世界。彼岸花が咲き誇った美麗の雰囲気が漂う)


 そう、今瞳に映されているこの世界のように。

 

「成る程‥」


 赤い霧が纏う中、霜は細く呟き口を三日月に弧を描いた。


 彼は、有名になったきっかけで多くの人々から信頼と信用の眼差しを受けていた。

 事件が解決すればまた事件の依頼、そんな多忙な日常を過ごしていた。あまりにも、忙しい毎日を送っているせいで彼を一目見たいと思う者達が行っても直ぐに姿を消してしまうのだった。

 そして、最近では九州の長期出張から帰省したという噂も耳にした。


(初めて担任の名前を聞いた時、同姓同名の方かと信じていませんでしたが‥これでやっと確信しました)



(やはり貴方だったのですね、源暁様。いや‥‥)




—————最恐の祓い屋!!!!!




 












この作品は以前から伝えてる通り、カクヨムと重複投稿してます。

カクヨムの方が先行投稿してるので、もしこの話の続きが気になった方はカクヨムでも是非是非!


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