十一.五夜 夢 (語り終了後)
最後の一言を終え、幸気ちゃんは蝋燭の炎に顔を近づけ息を吹きかけた。幸気ちゃんは火を消した後、しれっとした顔を見せていた。先程の怖い体験を自ら話したはずなのに、平気そうな表情だ。
「‥‥まぁ‥‥」
「‥‥夢と現実の区別が分からなくなる話ですね‥‥ 」
これは流石に周りも同情の目を見せた。俺も、あんなに元気な彼がこんな怖い目に遭っていたなんて知る由もなかった。
幸気ちゃんの話、背筋がゾォってしたけれど中々興味深い内容だったな。
しかし、クラスメイトの哀れみの視線なんか気にせず幸気ちゃんは言う。
「はーい、これで僕の話はおしまーい」
「おしまーい‥‥じゃねーだろ!! 何だよその恐ろしい話は!!」
「言ったでしょー? これは、僕の体験談だって。分からなかった?」
そう言って「はぁ」とため息を吐く幸気ちゃん。しかし、動揺して声を荒げる影京くんは更にヒートアップしていった。
「いやいやいや!! 実話とか洒落になんねーからな!? てか、何でお前はそんなに平然としてるわけ?!」
「別にもう気にしてない。あの時はまじで死ぬかもしれないって思ったけれど、今思い返せば笑い話みたいなものじゃん? 」
「笑い話って‥‥アンタも恐ろしいっスね‥‥ 」
「まぁ、椛よりマシだけれどね」
「え? 幸気ちゃん?」
あれ、幸気ちゃん?今さっき俺の名前呼んだ? 気の所為??
幸気ちゃんの方に視線を沢山送るも彼は俺を見なかった。すると美留町さんは幸気ちゃんに声をかけ、
「あの後、その女性とは一体どうなりましたか?」
「まさか、今でも会ってるの‥?」
彼女の言葉に、鈴は顔面蒼白になった。それは、鈴だけではなく周りの皆も気になっていた。もしかしたら、幸気ちゃんに対して何かとんでもないことをしているのかもしれない。嫌がらせや、怪しい動きをしているのかも‥‥、不安が過ぎるばかり。
「もし、何かされているのなら‥早めに対処した方が良いかと‥」
「あー‥、その心配は必要ないよ。だって、あの後兄さんそいつと別れたし」
「別れてくれて本当、良かったー」と付け足し薄笑いをする幸気ちゃん。その言葉に、周りもほっと安堵の様子。よかった、何も起きてなくて。俺は胸を撫で下ろした。
「てか、何が理由で別れたの?」
「詳しくは知らないけれど、価値観のすれ違いでいざこざが起きたらしいよー。ま、そんなの知らなかったし、あの女とも会いたくなかったから」
「でも、それだと幸気ちゃんのことまたストーキングするのではないのでしょうか〜?」
「あー、それね。僕この話母さんや父さんに伝えてあったから彼女が家を出る際、金輪際僕達の家族に近づくなって言ったっぽい。それを聞いて多分理解して反論しそうな顔をしてた。でも、近づいたら通報するって釘刺したみたいだから。それ以来何もないよ〜」
「それなら、良かったわね〜!」
「ですけれど、いつ何が起きるか分からないので油断はダメですよ」
「分かってるって。それ以来、1人で帰らないようにしているし迎えに来てくれたこともあるから。美留町さんは細かいねー」
「いや、何かあってからじゃ遅いから言ってるんです」
「良かった〜! 幸気ちゃんに何もなくて!! 少しドキドキしちゃったよ〜。でも、人間が妖怪を好きになるなんてきっとその女性も妖怪の魅力が分かる人なんだろうな〜!!」
「もしかしたら、妖怪とか大好きだったりして‥‥?」目をキラキラ光らせる俺を見て幸気ちゃんは更に深いため息を吐く。勿論、その動作に俺が気づくことは無かった。
「はぁ‥‥。てか、僕より椛の事を心配した方がいいと思うけど。こいつ色々話を聞けばあらゆるオカルトに手を出してるみたいだし」
「まあ、それは別の意味で不安ですけど‥‥」
「俺が椛と会ったときには既にそうだったし、今更止められないって分かってるからもう諦めてる‥‥」
「本当、あいつ何者なのー? 椛の親の顔が見てみたいわ」
幸気ちゃんは、そう言って訝しみ再度またため息を零した。
♫♫♫
「白玉さんの話も終わりましたし、最後は春夏冬くん、貴方の番ですよ」
美留町さんの言葉に、俺は自分の世界から引きずり戻された。蝋燭は、残り2本となり気がつけばもう俺の番まで来ていた。
いけないいけない、自分の世界に浸りまくっていた‥‥!失敗失敗、次は俺の番なのに。
自分の頬をぱんっと両手で叩き意識を覚まさせる。
それにしても、皆が話してくれた10話の怪談はどれも、怖くて面白い話だった。幽霊などの妖関連の話も有れば俺と同じ人間が黒幕の話も存在していた。
やっぱり世の中って、色んな妖怪や人間がいるものだ。一体何が起こっても仕方がない時代になってしまったから、そう余計に感じてしまう。
幽霊だって存在するからな‥。摩訶不思議な事が化学で証明する事も出来なくなったし。まぁ、俺は元から幽霊とか宇宙人とか居るって信じてたからすごく嬉しかったんだよね。
そう思いながら、手元にある本を見つめた。
先程幸気ちゃんが語った話も無事に収まっていたし一安心。後は、俺が話すのみだ。
「椛くんの話、とてもワクワクしますね〜♪」
「オカルト好きならそれなりに怖いんでしょー? これでショボかったら許さないからね」
「うーん、色々考えたんだけれど俺が好きな話にしようかな」
まぁ、どの話も好きだけど!!
「っげ、1番怖い話じゃなくて1番好きな話か‥‥」
「それはそれで余計に恐ろしいっスね‥」
「じゃあ、話すよ‥? 皆大丈夫‥?」
俺がそう言って皆を見つめる。周りは一斉に俺へと視線を向けた。コクンと頷く者も居た。
その反応に安心した俺は、再び口を開いた。
—これは、俺の中学校で流行った話。
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