十.五夜 病院に潜む死神様 (語り終了後)
「その日を境に愛森さんから何も言われる事はありませんでした。ですが、その1週間後愛森さんの容態が悪くなりそのまま息を引き取ったそうです。もしかしたら愛森さんもまた、死神に命を攫われたのかもしれません」
そう言って美留町さんは、揺らめく炎にそっと息を吹き掛けた。炎は煙を漂わせながら儚げに消えていった。
そして再び部屋が、闇へと一段暗くなっていく。この空間は元から、明るいわけでは無かったがより一層不気味に感じる。
蝋燭もあと3本。残りの俺と幸気ちゃんの話が終えればこの行事は終わりになる。最後の1本の蝋燭は絶対消してはいけないから。
「中々不気味な話でしたね。その‥‥夏菜子さんは今でもその病院に働いてるのですか?」
恋仲さんの質問に、再び純麗くんは美留町に耳打ちをした。
「‥‥‥」
「‥うんうん、‥‥成る程」
やっぱり、何かぼそぼそ聞こえるけれど何を言ってるか分からないな〜。
俺が2人をじっと見つめる。すると、美留町さんが首を縦に振り頷く素振りをした。
「隠くんの話によれば、あれから不思議な体験は起きなかったみたいです。ですが、霊安室に行くのに物凄く恐怖を覚えてしまったそうで‥‥ 」
彼女の言葉に、隣に座る純麗くんも静かに頷いた。
「そりゃあ〜、そうでしょ。霊安室とかむちゃくちゃヤバい雰囲気ダダ漏れじゃん。てか、何でその女性はその部屋に居たんスかね〜。よりによって病院の夜とか怖くて無理なのに」
「あー、あれじゃね? ちゃんと亡くなったか確認しに行くためとか?」
「雛さんが言っていた"いつものこと"とは、それが関係してそうですよね〜♪ もしかして、今まで亡くなった人にもそうやっていたのでしょうか?」
「まぁ、それは怖いわ‥‥。心待ちゃん、どうしましょう 」
「別にどうしようって、何もないでしょう‥‥って、抱きつかないでと言ってるじゃないですか‥!」
「きゃん♡心待ちゃんったら冷たいわ〜!」
「暑苦しいんですよ! 雪女の茉凜さんに言うもの変ですけど!」
「ふむふむ‥、死神‥か〜」
死神って本当にいるのかな。これまで妖怪や奇人の人達とは関わってきたけれど死神の様な"神様系''は見たことがない。この話が本当なら死神は居るかもしれないし、寧ろ会いたい。
「死神などの神様って本当に居るのかな。俺的は、物凄く気になるし会いたいかも」
「神様は見てみたいけれど、死神とかは怖いな‥‥」
「やはり、妖怪でも怖いものあるんですね。聞いた時は、何を言ってるんでしょうって笑い堪えてました」
「妖怪でも怖いものあるに決まってんだろ〜」
「は?そうなのか?」
「お黙りっスよ! 絲目くん!」
♫♫♫
それから、純麗くんの番も終わり残りのは俺と幸気ちゃんだけになった。
「じゃあ、次は僕の番だね!お前らビビって逃げないでよ〜!」
幸気ちゃんは、自信満々な顔をして俺の肩の上で飛び跳ねた。ふわふわな真っ白な毛が当たってくすぐったい。それに、彼の話が終わったらとうとう俺の番になる。一応話す内容は決まってるが、ちゃんと語ること出来るだろうか。
手に汗が滲み出て、今自分は緊張しているのだと分かった。
「まぁ‥‥幸気ちゃんの話期待してるっスよ〜ww 」
「お前、今馬鹿にしただろ〜!! てか、この話、お前らのとは少し違うもんね〜!これは、僕の身に実際に起きた話だから!!ノンフィクションを舐めないでよね〜?」
「実話ですか?」
「え?!本物なの?!」
え?!うそでしょ〜!!まさか本当に起きた話を聞くことができるの!? 何それ何それ!
「ふふん、僕が話すとびっきりの話、皆期待しててよ〜?」
そう言って幸気ちゃんは、一時的に人型に変身した。やっぱり、毛玉バージョンの方も全身が白いから何度も見ても肌が色白いな。
「妖怪が体験した怖い話は珍しいね」
「ふふん、怪談って人間が主人公なのが多いけれど妖怪が主人公なのも良いでしょう〜?」
「へぇ〜‥‥、まぁ、妖怪と人間が共存してるなら有ってもおかしくないか〜」
鈴の言葉に、幸気ちゃんは「うんうん」と縦に頷く。
「じゃあ、今から話すよ〜?」
幸気ちゃんは皆の顔を見て一つ深呼吸、そして静かに口を開いた。
—これはね、2年前に僕が体験した話なんだけど‥‥。
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